聖餐 みんなのレビュー
- 石原慎太郎 (著)
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紙の本聖餐
2007/01/12 10:07
完璧な逸脱、完全な冒涜
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちかげ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この物語で主人公のふたりは、あるいは復讐のため、あるいは完璧なる芸術のために、一本のヴィデオを制作します。そのヴィデオのなかで、人は犯され、殺され、家畜のように臓腑を引き出されます。それはまさに「完璧な逸脱、完全な冒涜」といえるかもしれません。
こういう芸術論を描いたものとしては、芥川龍之介の「地獄変」が代表的なものだと思うのですが、はたしてこの「聖餐」が地獄変ほどの成功をおさめているでしょうか。地獄変では、芸術家の性と悲哀が迫真の筆致で描かれています。それに対してこの聖餐では、単に公序良俗に反する描写が生々しく描かれているだけのように思います。ぼくは決して残酷な描写、生々しい描写を否定しているわけではありません。それを描く必要があるのであれば、それは描くべきだと思います。でも、残念ながらぼくにはこの作品におけるそのような必要性を読みとることができませんでした。確かにこの作品の描写には素晴らしいものがあります。血の吹き飛ぶ様子や、臓腑の蠕動する様子などは、筆者の技量を見事に表していると思います。ただ、ぼくにはその描写も、ただ単に筆者の技量を示すためだけに描かれたもののように思えてならないのです。筆者の技量を示すためであれば、もっとほかに方法はあると思います。本質的に残酷無慈悲な人間というのがこの世にいるのでしょうか? やはり残酷さの裏側にはそれなりの哀しさのようなものが存在するのではないでしょうか。そういう側面を克明に描くことで、作者の類いまれな技量を示して欲しい作品だったように思います。
ちなみに、この作品に「聖餐」というタイトルをつけることこそ、「完璧な逸脱、完全な冒涜」といえるかもしれません。そういう点においてのみ、この作品は成功しているといえるのではないでしょうか。
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