虚貌 みんなのレビュー
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紙の本虚貌 上
2004/09/06 21:09
前作『栄光一途』が良すぎたかな、あまりに人間が薄汚すぎるもの。ハッピーエンドではなくても、救いはほしいと思うのは私だけ?
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
20年以上前に愛知県で起きた一家惨殺事件で、無実でありながら気の弱さからの仲間達の陰謀で主犯に祭上げられた荒は、無事に刑期を終えて出獄した。出所早々、刑期中に稼いだ金を少年たちに巻き上げられ途方に呉れた彼を助けたのは、人権擁護を主張する山田という男だった。昔の事件の主犯 時山はヤクザとなって大手を振るい、共犯の坂井田は薬中毒が進み荒んだ暮らしをしている。
事件当時未成年のため、事件で重要な役を果たしながら大した咎めも無かった湯本は、カメラマンとなって女にたかる生活を繰り返す。その湯本がヘアヌードのモデルにしたのが滝中朱音。彼女は芸能界で少しは騒がれた存在だけれど、所属事務所で他に有力な新人が現れ、最近では今一つぱっとしない。引退して故郷で過ごそうかと思っているときに、廻された仕事がグラビアのモデルだった。
父親の滝中守年は愛知県で警察官を務め、定年間近だが、癌に冒され抗がん剤で何とか生き延びている。その守年が勤務する管区で起きた殺人事件。証拠は、出所したばかりの荒の犯行を示すが、20年前の事件を知る滝中は納得しない。病を押して捜査に乗り出すが。
罪を犯すことに何ら痛痒を感じない人間を前に、我々は何をなすべきか、どうあるべきかを問う。この主題は小杉建治の諸作や、宮部みゆき『クロスファイア』『模倣犯』、高野和明『13階段』、久間十義『ロンリー・ハート』などで繰り返されているが、今回の呆然とする結末は私の理解を超える。
前作『栄光一途』には、爽やかな女性剣士が登場して単調な話を救ってくれたが、今回は一人として感情移入できる人物がおらず、不完全燃焼といった印象。
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