ファーストステップ みんなのレビュー

また一つ道の職業を知りました…

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投稿者：hamushi　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　京都の大学に通うモラトリアムな青年と、奈良の寺院を修復している宮大工の青年とが出会い、住む世界の違いにとまどいながらも、お互いの人生に影響を与え合っていく……というお話です。
　和泉作品というと、主人公が濃厚な情念の渦に落ちて追いつめられていくタイプのお話が多いように思っていたので、ふわふわとほの甘く、切ないながらもどこか淡い感じでお話が進むこの作品を読んで、いつもとずいぶん印象が違うなあと思いながら読了したところ、あとがきに、古い作品を加筆修正したものだとの説明があり、納得しました。
　このジャンルの作品には、ほんとうに多種多様な職業が登場しますが、宮大工が取り上げられたお話を読むのは本作が初めてでした。仕事の内容はそれほど詳しく出てこないのですが、昔ながらの徒弟制度に近いものを維持しながら後継を育てていく世界であることが描かれていて、興味を引かれました。巻末の参考文献に、主要参考文献として、「木に学べ　法隆寺・薬師寺の美」(西岡常一)や、「木のいのち木の心」のシリーズ(西岡常一・小川光夫・塩野米松)が列記されているのを見て、家族の書斎にそれらの本が並んでいることを思い出し、私も読んでみようと思いました。