自由からの逃走 みんなのレビュー
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紙の本自由からの逃走
2016/01/23 16:49
赤裸々な証券マンの実態
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トッティ - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台は90年代末のITバブル期の中堅証券会社。ネットによるトレードが一般的になる直前の根性営業の日々を過ごす若き証券マンの日々の物語である。
これは、元証券会社に務めていた著者の実体験に基づくので史料としても貴重だろう
上司のイビリ、くだらない説教をする中堅社員、ストレスで飲み屋に入り浸る先輩社員、それに付き合わされる主人公ら若手。そしてイビられて不遇の死を遂げる同僚・・・
働く意味も価値も見いだせず、顧客を食い物にして利益を上げる営業の日々。
主人公は、政治学者の夢破れ、入った証券の世界に翻弄される。
若者を使い捨てにする現在のブラック企業の原型のようなものがここにある。
だが主人公は、そんな中でも人間の尊厳に目を向ける。弱いもの、虐げられているもの、悲鳴を上げることもできないが、静かに抵抗するものへの眼差しがある。ところが、彼は自分が被害者にならないために、加害者のほうに回ってしまうのだ。
タイトルの「自由からの逃走」は、いわずと知れたエーリッヒ・フロムの本のタイトルだ。極めて民主的だったワイマール憲法下でナチスが誕生した原因となる人間心理を暴き出した名著だが、この物語は主人公が、その個人的体現ともいうべきルサンチマンが至る所にちりばめられている。
古くて新しい問題を90年代後半という過ぎ去った過去の舞台を借りて、現在の問題として蘇らせる。
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