関西弁で愉しむ漢詩 みんなのレビュー
- 桃白歩実 (著)
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紙の本関西弁で愉しむ漢詩
2005/03/26 17:52
漢詩がこれほど楽しいものだとは気づかなかった
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:安之助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
さぁ 帰ろか〜
イナカの田畑(でんぱた)は荒れ放題や
これは帰らなアカンやろ
心が自由ちゅう世界で
何をウダウダせなアカンねん
よく知られている漢詩の「帰去来辞」の冒頭部分である。
帰去来兮 [帰去来兮(かえりなんいざ)]
田園将蕪胡不帰 [田園将(まさ)に蕪(あ)れなんとす
胡(なん)ぞ帰らざる]
既自以心為形役 [既に自(みずか)ら心を以(もっ)て
形(からだ)の役(しもべ)と為す
例えばそれを、関西弁で意訳するとこうなる、というのが本書。
高校時代に疑問に感じていたのが、漢文を読み下しにするときに、どうして文語調でなくてはならないのかということ。普通の文章の場合には、白文を読み下しの方法自体を学ぶため、ということが第一義だったとしても、漢詩は“文芸作品”なのだから、鑑賞の観点も大事だと思う。そのためには、現代語訳でもよかったのではなかろうか。しかし、現実には授業時間が限られていたためそれができず、表面をなぞっただけだった。したがって、漢詩というと「堅苦しい」との印象しかなかった。
本書は現代語訳のみならず、関西弁での大胆な意訳である。例えば、「帰去来辞」には舟で帰る描写があるが、関西弁訳では「故郷に進む夜汽車」に置き換えている。当時の中国では遠くの故郷に帰るのには舟が常識だったが、少し前の日本でそれに相当するのは夜汽車である。正確な訳ではないだろうが、「そうか、そのような情景を詠っていたのか」と知ると、鑑賞も楽しくなる。。
著者の人物像はよく分からないが、中国文学(漢詩)を専門に研究している人ではなさそうだ。奥付に筆者のHPアドレスが載っているので覘いてみたら、本書の基になったのはそのHPの記載のようである。“素人”なのか。「好きこそものの上手なれ」−趣味が昂じて「関西弁漢詩」の発表の場として、著者自身がHPを立ち上げ、それがある程度まとまったところで、編集者の目に留まったのだと推定できる。
だから本書は、極端にいうと、第一歩は著者の“自己満足”の記録(HP)であった。ただ、自己満足というと誤解があるかもしれないけれど、それはいい意味での形容で、決して“自慰”に陥ってはいないし、HPはあくまでも本書の基であって、全体ではない。
著者は嗜好品では酒が好きと自己紹介している。好きな作家は“酒仙”といわれた李白だとか。ここらあたり、李白がきっかけで酒好きになったのか、あるいは酒が好きなので酒を詠った作品が多い李白が好きになったのか。そんなことは、どっちでもいいのかな。ともあれ、お酒を飲んでクダを巻くような雰囲気は、本当に関西弁はぴったりなんだから。
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