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ぬむもさんとんぽぬくん みんなのレビュー

  • 粟岳高弘
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みんなのレビュー2件

みんなの評価4.8

評価内訳

  • 星 5 (2件)
  • 星 4 (0件)
  • 星 3 (0件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
2 件中 1 件~ 2 件を表示

紙の本ぬむもさんとんぽぬくん

2017/06/09 17:39

真空からの贈り物

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:求道半 - この投稿者のレビュー一覧を見る

二足歩行する二頭身の異星人ぬむもさんとんぽぬくんの外形的な違いは、頭にアンテナのような突起があるか、単眼鏡のような物を掛けているか、であるが、んぽぬくんについては『いないときに来る列車』に収録された書下ろしの短編でその素性が少しだけ明かされており、本巻にもタイトルに偽り無く登場するものの、その活躍は二年前の断片的な出来事が過半を占め、ぬむもさんの地球での滞在記が本巻の大筋である。
 『いないときに来る列車』の大部分を占める「斥力構体シリーズ」の続編である『ぬむもさんとんぽぬくん』は完結していない架空の静岡の郷土史の一部であり、本巻では昭和から平成へと作中時間が経過しており、それに伴う少女の裸体表現に対する世間の風潮を反映して、スクール水着を着用する機会は十分に確保されてはいるものの、腰蓑姿は影を潜めている。
 年頃の女の子に対する性的な関心は、地球人だけの特質ではなく、本巻に登場する性別不明の宇宙人とも共通する自然律であり、彼らの地球滞在の目的を遂行する上で欠かせない財政的な基盤に資する宇宙規模での一大事業を興す動機ともなっているのだ。
 残念ながら本巻では、日本人の少年や成人男性は直接的には登場せず、複数の少女が様々な異性人と交流する様子が和気藹々と描写され、彼らが男の子の代役として、少女の羞恥心を刺激しつつ、微笑ましい日々を共に過ごす。彼らの存在は噂として周知されており、初対面であったとしても、旧友のような自然な応対から交際が始まる。
 通常の異星人と「彼等」と呼ばれる存在の区別が作中でなされているのが「斥力構体シリーズ」の真骨頂で、時間的、空間的な広がりが、凡百の異星人の来訪譚とは趣を異にする、独特の謎と訴求力を産み出し、ある状況下での、当事者ですら想定し得ない展開は、物語の根幹に関わる秘密の一端を覗かせ、読者を唸らせる。
 半官半民の組織なのかさえ明らかではない杉登機関と呼ばれる異星人との窓口機関や政府の関係者が、男子の件と同様に直接、読者に姿を見せることは無く話が進み、ぬむもさんの居候先の娘である吉川奈美に地球人代表の権限が託される、ある異常事態が本巻の山場である。    
 空を飛べる機械で自宅の周辺を散策したり、謎の生き物を採集したり、海辺まで遠出したりする、夏の日の出来事や、学校での部活動は、読者の郷愁を呼び起こし感傷に耽らせる役目を果たすだけの陳腐な情景ではなく、気の抜けたような絵柄からは想像し得ないサスペンスの舞台に変貌する性質のものである。
 繰り返し用いられるモチーフをマンネリの所産だと決め付けるのは早合点であり、他の作品との比較、類推から「斥力構体シリーズ」を、より深く理解する手立てを読者が自らの意思で放棄する事を意味し、賢明な態度とは言えない。同一の行為や状況が作中の時間経過で、その内実を変化させているのに気付けるか否かで、作品に対する愛着の度合いが変わるのだ。
 締め込み姿の少女は健在である。

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紙の本ぬむもさんとんぽぬくん 2

2019/09/06 23:47

一身上の都合

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:求道半 - この投稿者のレビュー一覧を見る

ぬむもさんは無職だ。ぬむもさんは地球で暮らす地球外生命体である。「ぬむもさんとんぽぬくん」の続編である「ぬむもさんとんぽぬくん2」では、ぬむもさんの身辺が騒がしい。その原因は、ぬむもさんが無職だからだ。
 ぬむもさんやんぽぬくん、また、他の地球外の種族の、人間の少女を対象とした性的な関心が、ぬむもさんを窮地に陥らせるのではない。数十年にわたる地球内外の生物間の覇権争いが、ぬむもさんにかけられた嫌疑の遠因である。
 本作では、前作よりも、少女の水着姿が見られる場面が少なく、セーラー服や普段着を着た少女の方が、多くの場面で見られる。だが、女子中学生がスクール水着を着用する機会の減少が、読後感に悪影響を与えない事に、愛読者は驚くであろう。
 作中で「彼等」と呼ばれる存在は、その呼称が複数形であるものの、前作では、複数形で呼ばれる意味が判然としなかった。しかし、本作では、その含意が明かされる。
 異星人が、人間の少女に執心する理由も、本編で説明される。
 本巻は続編であるから、前作や、作者の他の既刊を読まなければ、読者は話の流れが掴めず、面白いとは感じられないかもしれない。けれども、既刊は未読でも、前時代的な雰囲気や奇妙な生物、古い家電製品に興味があり、軍事的な物語にも関心のある読者であれば、本巻を読み終えたら、既刊も読まずにはいられないであろう。
 先に言及した水着に関する事柄よりも、本作において特徴的なのは、登場するキャラクターの数の多さである。また、発生する異常事態の数も多い。それらは既出のモチーフの転用と看做す読者もいるかもしれないが、改良と応用の成果である。
 んぽぬくんとぬむもさんは、それぞれ別の人間の少女と親密に交流する。居留地では、地球上で商売する同族や他種族の者がおり、異星人向けの別荘地も秘密裏に整備されている。
 ぬむもさんの危機に際しては、人間も異星人も、それぞれの思惑と立場を踏まえて、手を差し伸べる。
 んぽぬくんは無職ではない。
 ぬむもさんは生き延びられるであろうか。

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