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みんなのレビュー26件

みんなの評価4.1

評価内訳

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2 件中 1 件~ 2 件を表示

負の遺産を受け継ぐ者たち

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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

隻である枸雅紫音の迦喪建角を奪い、弟である日向桐生を助けるために戦う決意をした枸雅匡平は、史場日々乃を安全な場所に下ろすと、天照素に擬態した常絶から桐生を取り戻すために突っ込んでいく。玖吼理を操る枸雅詩緒の援護も受けつつ、弟妹の前で兄の面目を保つ匡平だったが、彼の知らないところでも事態は進行していたのだ。
 日向佐兵衛と綾女に対する決着、策動する枸雅蒼也、お社に乗り込んできた枸雅阿幾、そして、明らかになる案山子の本来の目的。古来より引き継がれてきた怨念は、積み重なった歴史の果てに、二人の幼馴染の対決を望むのか?

 山奥の村でひっそりと積み上げられてきた案山子を介した人工的な進化よりも、人類の総体による科学技術の発展速度の方が遙かに早かったという、ある意味では当たり前の結果ではあるのだが、野望を抱く人間があと200年くらい早く出ていれば、また違う結果を生んだ可能性もなくはないな。負の遺産の処理は、いつでもその恩恵を受けた以外の人間がしなければならない。
 てっきり、本巻で最終刊だと思っていたのだが、作者にそういう意図がなかったことは、本体表紙で言い分けされているとおり。どうも阿幾には、ハッピーエンドは訪れそうにないな。

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飛び越えられるだけの力

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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る

当主の枸雅清方や伯父の枸雅将征が、天照素に取り込まれた日向桐生ごと、日向佐兵衛や綾女を闇に葬り去ろうと画策していることを知り、枸雅匡平は弟である桐生を助けるために抵抗するのだが、弥隈利の隻である枸雅蒼也により、史場日々乃ごと捕まってしまう。
 隙を突いて日々乃だけは逃がすことに成功したものの、匡平自身はかつて枸雅阿幾が軟禁されていた座敷牢に閉じ込められてしまった。

 綾女により撃たれて重傷を負った日向勾司朗は、怪我を押して、約束を守るために宇輪砲と共に戦場に行く。それを見送る日向まひるは、きいちゃんに子どもが出来たことを知り、失った禍津妃の代わりに武未禍槌を駆って戦場に向かうことを決意するのだった。
 一方、天照素に対して迦喪建角で哨戒任務に当たっていた枸雅紫音は、その武装の少なさゆえに攻めあぐねていた。しかし、玖吼理と共にやってきた枸雅詩緒、火官土の日向暁、そして弥隈利と枸雅蒼也の参戦で、何とか戦況を維持することに成功する。

 その頃、杣木靄子の許には、弱った暗密刀を抱えて阿幾が転がり込んでいた。

 靄子のいじましさはいったい何なんだろうね。それでいて、責任を負った大人としての一線は守るわけだ。背負うものがあると中々自由には生きられないんだ。それに対して、そういうしがらみの一切を無視できるほどの圧倒的な才能を持った匡平は、ついにそれは自覚的に使う決意をする。
 これは一種、中世から近代へ、家から個人への変化を生んだ意識革命をなぞっているようなものなのかも知れない。

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