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なんと言っても日本が第二次大戦後のドイツのように東西に分離してしまうという発想のすごさに驚異を感じてしまいました。そして首都が大阪になってしまう物凄さ東京はどうなるのだ。東日本が貧民が多いなんて嫌ですよね。革命を起こすMASAKADOの驚異が良く描かれていました。息もつかさぬ展開に読む手が止まらりません。もう一気読み間違いなしの大傑作、驚異の発想の展開、一条の先行きが知りたくて続編を望みます。あなたも読んでこの驚異を堪能して下さい。
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第二次大戦の最後、ソ連が日本に侵入。天皇陛下を京都に逃して天皇家滅亡を防いだ日本。
東日本と西日本に分断。ソ連が崩壊。東日本は資本主義になるが西日本との格差拡大。東大をでても差別され就職できず時給のいい肉体労働者になる。自衛隊に就職すればまともな暮らしができるが差別は残る。父が自衛隊勤務だった東日本の辺見と西日本の一条。28才になり友情は続く。
一条がテロ組織MASAKADOに誘われる。穏健派との会合。その時にふれた鍋蓋に一条の指紋がつく。爆弾テロで鍋蓋蓋が使用。一条はテロリストの疑い。組織に加入させられ整形手術をうける
内ゲバに巻き込まれる。スパイとみなされたメンバーは殺された。一条が誘われたのは大学でバイオな研究をしていたから。人間から闘争本能をなくす薬品を開発して水源から流す計画を打ち明けられる。組織から逃げる。辺見は自衛隊の特殊任務として一条を追う。公安とも協力。
テレビカメラに一条が写ってしまうことにより潜伏していたホテルがばらてしまう。組織のメンバーが横須賀に逃してくれる。
横須賀では12才の少女が米兵の犯され、住民の怒りで暴動が起きる寸前。その暴動で一条は辺見を見つけて電話。アメリカに亡命しない、逃げる。辺見は組織から守る。電話が切れる
一条はインドネシアににげたらしいと辺見は上司から教えられる
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うーん、広げるだけ広げて、まとめられなくなってしまった感がすごい。マサカドがどうなるのか、一条がどうなったのか、独立の行方は色々と回収してない…
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うむむむむ。色々考えるきっかけにはなったし、敗戦をきっかけに東西が分かれ、その後統一という設定はなかなかユニークで面白かった。しかも、大阪が実質的な首都になっている(=実質の東京)のが関西人としてはおもしろかったけど、主人公が意図的にテロリストにされ、整形して逃げ回ったのち、最終結末も意外性がなく、うーーんという感じ…関西出身→上京→Uターンで関西にという身の上のわたしとしては、関西弁・標準語を使い分けることは容易だが、それでステータスが決まるのも現実的に考えられやすいもので、生粋の関西人である両親と祖父母に関西弁で喋り!と毎日言われる身としてはかなーりタイムリーな話題で面白かった気もする。
p.378 を立てたくない、と男は言った。みんなが腹を立てなければ、喧嘩も戦争もない、と。
まったくそのとおりだ。ひとりひとりがこらえれば、この世から諍いは消える。争わず、互いを尊重した人々が生きる世界。それは誰もが望む世界ではないのか。
現実は、そうなっていない。人々が怒りを抑えられないからだ。怒りをコントロールするのは難しい。
怒らないでいる方が楽しいとわかっていても、腹が立つときは立つ。人間は自分の感情すら、意のままにならないのだ。それが、感情というものだ。
もし、腹を立てずに生きる方法があったら。そんな発想の下に動いているのが、聖子たちMASAKADO)の穏健派ではないか。人間から闘争本能を消し去れば、他者と争わなくなる。他者と争わないのは、腹を立てないからだ。ならば、聖子たちが目指す世界は人々が望む理想の世界なのか。聖子たちに背を向けるのは、理想の実現を妨げる行為なのか。
いや、そんなことはないはずだ。腹を立てたくない人が、自ら闘争本能を捨て去るならいい。だが聖子たちは、日本人全員から強制的に闘争本能を奪い取ろうとしている。目指すところが正しくても、手段が間違っていたら受け入れられない。一度はそう結論したではないか。男の言葉でまた考え込んでしまう自分は、迷いが捨てられずにいるのだと自覚した。
p.419 「何が言いたいかというと、余裕がないんですよ。他人のことを考えている余裕がないんです。自分のことだけで精一杯なんです。開き直るようですが、それはぼくが悪いからだとは思いません。社会のシステムが、どこかおかしいんですよ。資本主義には、何か問題があったんでしょう。でも、社会システムを変える権力を持っている人は、特に困っていない。だから変える気がない。持てる者と持たざる者が二分され、一度持たざる者になると持てる者になる方法がない。努力ではどうにもならないんです。
何が不幸かもわからず、他の人よりはましって考えて満足してる。そんな状態ですから、無関心だと怒らないで欲しいです。五藤さんからしたら、言い訳にしか聞こえないかもしれませんけど・・・・・・・」
勢い込んで話したが、最後は声のトーンが自然と落ちてしまった。どう言おうとも、当事者にとっては言い訳でしかないのではと考えたからだ。
「いや、わかるよ」
しかし五藤は、目に宿った険を引っ込めた。一条を責めても仕方ないと考えてくれたのかもしれない。
日本人の無関心は腹立た���いだろうが、だからといって怒りを向ける先にはして欲しくない。怒りをぶつけるべきは格差を容認する社会システムだと、一条は気づいた。
「この店は昔は庶民向けだったんだが、いつの間にか高級レストランになっちまった。あんたがここでの食事を贅沢だと考えるのは、よくわかるよ。おれだって、上級の部類じゃない。日々の暮らしでヒーヒー言ってる、ばりばりの庶民さ。この店は、米兵が来るから成り立ってるんだよ。基地に文句言ってるくせに、客として来てくれないと稼げない。自分で矛盾には気づいてるさ。だからよけいに腹が立つんだ」
p.420 五際は手許に視線を落とした。まるでグラスに話しかけるように、納々と続ける。
「昔はロシア料理屋だったって言ったろ。その頃はソ連人を相手に商売をしていたのさ。でも、ソ連が撤退してどうにもならなくなった。ロシア料理屋の看板は下げて、どこ料理ってわけでもない洋食屋になったわけだ。アメリカ料理にしなかったのは、親父の意地だったんだろうよ。それでも、メニューにステーキとハンバーガーは入れざるを得なかったんだけどな」
五藤の口調は自嘲気味だった。親子二代に亘る複雑な思いは、おそらく簡単には語り尽くせないのだろう。
「あんたの話を聞いててわかった。これは東日本対西日本とか、日本対アメリカとか、そういう問題じゃないんだな。金も権利も持ってる上級国民と、何も持ってない下層民の闘いなんだ。下層民のおれたちは、貧乏が当たり前だとずっと刷り込まれてきた。貧乏なのは自分が悪いと、子供の頃から教え込まれてきてたんだな。違うだろ、と今なら思うよ。毎日ちゃんと働いて、それで人間らしい生活が送れないなら、社会の方がおかしいんだ。米軍に頼らなきゃ生きられないのは、米軍が悪いわけじゃなかった。
そんな日本がおかしいんだな」
だからってレイプ犯は許せないが、と五藤は低い声でつけ加える。その点は、一条もまったく同感だった。
「なあ、話は戻るが、あんたは闘争本能を捨てたいのか?こんなおかしな社会システム、変えたいとは思わないのか。社会システムを変えるには、怒りが必要だろ。従順になって、それで不幸を幸福だと感じて生きていきたいわけか」
問われても、即答できなかった。関争本能を捨てるという発想には一理あると思ってしまったから、そう簡単には考えを転換できない。人と争わずに生きていきたいとは思う。しかしそれは、現状を追認することなのか。自分をごまかして生きることになるだけなのか。
「ああ、すまんすまん。議論を吹っかけるつもりはなかったんだ。ただ、あんたの話があまりに思いがけなかったんで、散らかった考えをまとめなくちゃならなかった。さっきも聞いたとおり、あんたにはあんたの事情があるよな。一方的に責めちゃいけないってわかってるのに、今は殺気立っててなぁ」ようやく五藤は、強張っていた顔に苦笑を浮かべた。厨房の方に顎をしゃくって、「あっちが自宅だ」と説明する。
「裏で繋がってるんで、あんたにはそっちに泊まってもらうよ。妻がいるが、子供はいない。妻はもう寝てるから、挨拶は明日でいい。取りあえず、移動しようか」
五藤はテーブルに両手をついて、立ち上がった。一条は「はい」と応じながらも、もう���し話を続けていたかったという未練も覚えた。
p.491 卒然と理解した。これは単に、米軍への反感が爆発したのではない。まして、お祭り騒ぎに便乗するような、無責任に騒動を大きくする人たちが煽っていることでもない。人々はずっと、耐えていたのだ。
理不尽な経済格差、ささやかな幸せすらも掴みづらくなった日常、明るい未来が描けなくなった社会。
人々は夢を見ることすら諦め、日々を生き抜くだけで精一杯になっていた。だが、人には感情がある。
機械と化して、自動的に生きることはできない。訴えようがない感情が溜まり、人々の心の中でくつぐつと煮詰められていた。それが今、噴き出そうとしているのだ。これは、生きていくためのエネルギーの発露なのだ。
もし、人が闘争本能を失っていたとしたら、どうだったろうか。どうしても、その仮定が頭から離れなかった。当然、人々はこうして歩いてはいなかったはずだ。怒りも覚えず、家や職場でおとなしく生活していただろう。その様を想像し、一条は初めて恐ろしさを感じた。従順な羊たちは、もはや人であることをやめた姿なのかもしれない。怒りを忘れたくない、と言った五藤の言葉が今ようやく理解できた。
もちろん、腹を立てながら生きたくはない。できることなら、毎日楽しく暮らしたい。しかし、それは現実の辛さに目を取って生きるという意味ではない。眼前に辛さがあるのに、あたかも何も見えないかのように生きるのは不気味だ。もはや開争本能ではなく、思考能力を捨てて生きていると思える。
あるべきときに怒る、買うべきときに関う。そんな人を、一条は香定できなかった。星力は決して認めないが、人が人であろうとする関いは必要ではないのか。この先に待っているのは単なる黒力の嵐か、それとも人であり続けるための関いか。是が非でも見届けたいと、一条は考えた。
p.502 鳥飼の問いかけに、辺見は少し考えた。一条との最後の会話を思い返す。あのときは意図が理解できなかったが、一条の覚悟を知ってぼんやりと見えてきたこともあった。
「一条は現代文明に疑いを持ったのかもしれません。人間は文明の進歩に追いついてない、とあいつは言うてました。環境破壊だけやなく、戦争やテロが起こることを指していたのでしょう。人間の闘争本能は必要ない、とも言いました。ただの推測に過ぎませんが、<MASAKADO)は人間の脳やホルモン分泌に働きかけるテロを計画していたのかもしれません。一条が大学で生化学を専攻していたことと考え合わせると、可能性はあると思います」「なるほど、いい推測や」
鳥飼は、今度は深く頷いた。辺見の考えを認めてくれたようだ。
自分で口にしておいて、事の重大さは後から認識した。もし(MASAKADO)が人間のホルモン分泌に直接働きかけるテロを計画していたなら、今は米軍がそのアイディアや技術を手にしたと見做すべきだ。米軍は間違いなく、軍事転用を試みるだろう。そんな技術が実用化されるのが、ずっと未来であることを願うだけだった。
いや、それは先送りされるべきことではなく、もしかしたら喫緊で必要な技術かもしれない。そう考え直し、意図的に思考を停止した。鳥飼の前でなく、ひとりになってじっくり検討してみたかった。
「下がってええ」
「はっ」
辺見が立ち上がって礼を返す間も惜しむように、鳥飼はスマートフォンを取り出してどこかに連絡をした。おそらく、緊急の対策会議が開かれるのだろう。米軍が情報を分け与えてくれない不均衡な関係である以上、日本独自の対策が必要だった。
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第二次大戦後、東日本はソ連に、西日本は米国に占領され、東西で別の国になってしまった日本。当然東と西では大きな経済格差が生じている。そして東西ドイツの統合をうけ、日本も統一を果たす。しかしそこは旧東日本国民が西側から見下され、差別を受ける状況を生み、東日本では独立を目指す組織が発生。治安当局はその組織の壊滅を目指している。
幼馴染みの二人、片や西日本出身の自衛隊治安維持部隊の辺見。片や東日本出身者のため大学で生化学を学ぶも運送業の派遣社員である一条。しかし一条は否応無く東日本独立運動テロ組織「MASAKADO」のメンバーとして辺見から追われる立場となってしまう。
実際日本もこのような状況になってしまった可能性も少からずあった訳で、荒唐無稽という感じではない。テロでは何も変わらないとはいう。実際1970年代に頻発した連続企業爆破事件などで世の中が変わることはなかった。
だからといって世の中を変えるにはどうすれば良い?ってなるとわからない。おそらくこの国では平和的に社会が変革する事はないように思う。日本では民主主義すらアメリカに送られたものだし・・・。アジアで唯一しばしば平和のうちに政権交代が起こる韓国は、アジアで唯一民主化運動で民主主義を勝ち取った国でもある。やはりそのような経験がないと駄目なのだろうか。
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紛争や格差のない社会を目指し
東日本独立を計る集団と
それを阻止しようとする警察、自衛隊。
あまりにも壮大なテーマに
ワクワクしながら読み始めたけれど
世界がどんどん小さくなり
いつのまにか
ひとりの男の逃亡劇になっていた。
そして
テロ組織、自衛隊特務連隊、在日米軍など
全て放り出したまま
どさくさに紛れて終わっていた…
今の日本に対する怒りや嘆きや不満を
ただぶちまけたいだけだったのか?
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第二次世界大戦での敗戦で、西の大日本国と東の日本人民共和国に分断された日本。ベルリンの壁の崩壊の半年後日本も統一された。
資本主義と社会主義、それによって生まれた経済格差は統一後も埋まることはなかった。
東日本は西日本にとって単なる労働力でしかなく、東日本人たちは自らを二等国民とみなし差別も甘んじて受ける時代が続いた。そして統一三十年を経て沸き起こった東日本の独立への戦い。その中心となるのがテロ組織「MASAKADO」。
テロ活動に巻き込まれた一人の男と、その親友の自衛官。
資本主義と社会主義。差別と格差。正義と悪。正しさの先に掲げる理想。
誰もが幸せに暮らせる世界などない。ユートピアなど存在しない。何を切り捨て、何を手に入れるのか。
分断された社会の、本当の統一とは。
あったかもしれない日本の姿に、お前ならどうする、と覚悟を迫られた。追われるかの如くむさぼり読んだ。
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第二次世界大戦後、東日本と西日本に分断されソ連とアメリカに統治された世界。その後、ソ連邦の崩壊、東西冷戦の終結に伴い再び統合された日本は、格差が固定化し、貧困が蔓延る旧共産主義国である東日本の独立を標榜するテロ組織が暗躍していた。
意図せずしてテロ組織に関わることになった一条と彼の幼馴染で自衛隊特務連隊に所属する辺見。立場をことにする二人の友情の行方は……
戦後日本が2国に分断されたら、という割とよくある設定のSF的手法によりながら、富裕層と貧困層の格差の固定、資本主義の行き詰まり、文明の発展と人間の進化、希望が失われた社会の行く末など、現代社会の諸問題を余すところなく描き切っているという点で現実的な物語になっている。
テロリストの目論見は少々無理筋な気もするが、人間の闘争心というものに焦点を当てた試みは面白い。
ミステリではないので、広げた風呂敷は畳まれないし、目に見える解決策も、読後のカタルシスもない。これは作者の問題提起で、「考えろ、考えることをやめるな!」という強いメッセージと受け取った。
「今日を生きるのに精一杯で、夢を持つことすら贅沢になってしまった日本人。文明を発展させ、地球を破壊してまで手に入れた生活がこれか。人間は愚かだ、と思う。」
ラストの3行が響いた。
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読了
第2次大戦後、東西に分割してしまった日本。
統合されそれから30年が経過した日本が舞台。
東側は経済的に衰退し、首都は大阪。
公用語は関西弁。そんな世界。
全部、現実とは違う創造の産物だけど、
妙なリアリティーを感じてしまって凹んだ。
この物語の東日本は近未来の日本みたいだなと。
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感想
発展と限界。同じ国の中に違う考えは同居しない。国は力を失う。国民は対立する。歴史で学んだことは他人事。我が身に降りかかるのか。
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第二次世界大戦後、東西に分割された日本という設定の歴史改変小説。すでに分断は解消されているが、首都は大阪に移り標準語が関西弁となっている。ソ連によって管理されていた東側の人達は再統合後も社会的地位は低く、それを不満としたテロ組織が暗躍していた。巻き込まれてテロ組織に身を置くことになった一条と、彼の親友で自衛隊特務連隊の辺見が、テロの闇に迫る。
貫井さんはSFの人ではないので、こちらの期待した方向での展開にはならず残念だった。というか、都合のよすぎる設定と詰めの甘さに読んでいて白けてしまった。ラストも尻切れトンボで、うーん……となる。
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壮大な舞台設定と大胆な歴史のIF解釈で、貫井作品で今までにない挑戦的な小説。民主主義と自由経済の閉塞感を描いているが、自分の中で貫井作品だからこそのハードルの高さがあるが、本作は貫井作品らしい文章の上手さは目立つが、ストーリと展開の物足りなさが最後まで残った。ここまでの長さは必要ないと思うし、幼馴染の二人の交錯が上手く描けていないように感じた。求めるレベルが高いため評価は辛め。。
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ぬっくんの新作です!
まず、設定が面白いので、いきなり引き込まれ、ぬっくんの読みやすい文でグイグイいきます。
面白かった〜〜!!
ただ、ラストまで読むと、
「えーーっ!続編があるの⁈」
と強く思う!(あるのか?)
意図せずテロ組織を関わってしまった、一条昇と、その行方を追うことになる幼馴染で自衛隊特務連隊に所属する逸見公佑。
この2人が、それぞれ、なかなかいい奴なだけに、もうちょっともうちょっと・・・・と思いながら・・・残りページが少なくなるにつれ、ええ〜〜どうやって終わるのよ?とハラハラしました。正直、期待した終わり方ではない。でもそれが、現実なのかなあ?
そういう意味でも、続編が読みたいわ!
とはいえ、いろいろと考えさせられる話で、リーダビリティ抜群。私は楽しめました。
なんにせよ、テロは最悪。でもって、どうやって仲間に引き込むか、というプロセスが怖い怖い。
そして格差社会。もしかしたらあったかもしれない日本、という設定だけど、やっぱり、今現在の日本にも通ずるところがある。いろんな場面で、自分が生きてきた時間を、いくつもの視点で思い出しながら読んでいました。
印象に残ったところ少し。
ーーーーー
昨日と同じように普通の人生が続くのだと、信じると表現する必要もなく無条件に思い込んでいた。(中略)実は誰もが、一歩間違えば日常を失う危険な状態に気づかずに生きているだけなのではないか。
運命を恨むのではなく、意義を見いだしたいと考えていた。
巡り合わせの悪さ、ただそれだけが一条の人生をねじ曲げたのだった。
人間の自由意志を踏みにじるような真似は、誰であろうと、どんな政治体制であろうと、許されない。
屈辱にまみれて死ぬくらいなら、屈辱に首まで浸かったまま生き続けてやる。
人間は自分の感情すら、意のままにならないのだ。それが、感情というものだ。
ーーーーー
ちょっと笑ったのが・・・
「賢い人って、ひとつのこと話してる間に連想が各方面にぱーんって広がるんよ。だから話が逸れちゃうんよねー。アホやからこんな喋り方してるんやなくて」
ってところ。私は全然賢くなくて、ただのお喋り女だけど、話してる間に連想がぱーんって飛ぶって感じがわかって、おかしかった〜〜笑
貫井さん(ぬっくんなんて呼んでごめんなさい)ぜひ、続編を書いてくださいませ。一条と辺見のその後が知りたいです〜!!
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ありえたかもしれないもうひとつの戦後。
第二次大戦後に分断され、再びひとつの国に統一された日本。だが東西の格差は埋まらず、東日本の独立を目指すテロ組織〈MASAKADO〉が暗躍する。
………
ありえたかもしれない日本ではなくて、今の日本だよね。東西に分けられなくても…… 途中から架空の世界とは思えなくなってくる。
こうやって書かないと、書けなくなっているのかとすら疑ってしまう世界観。
それにしても一条が巻き込まれる経緯が理不尽で、それだけでも、自らを「穏健派」とする〈MASAKADO〉の一派はおかしいと思う。
好書好日https://book.asahi.com/article/15268616?utm_source=newslette1015_asahi&utm_medium=email&spMailingID=8698838&spUserID=Mzg0ODczNzE1MTk4S0&spJobID=2200248912&spReportId=MjIwMDI0ODkxMgS2
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日本国が東日本と西日本に分断され、また統合され今のような日本国になった。「高い城の男」のアメリカが日本とドイツに分断統治されたような話。北朝鮮と韓国のような話。
この設定に高い興味を持って、買ってきた。
プロローグで一番興味深い分断の設定について。しかし6ページで終わり。
本編ではテロリストにされ逃走しながら日本国の本当の姿を考える日々。
衝撃的な設定では、その設定を超えられない。