やなせたかし先生のしっぽ ～やなせ夫妻のとっておき話～ 新着

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やなせ先生と小夏さんの夫婦関係:
著者はやなせ先生から夕食後や休日に個人的な話を一人で聞く機会が多くあった。
小夏さんは小柄で細身、普段は気取らないラフな格好を好んだ。「奥さんは小柄でほっそりタイプ。普段は気取らないラフな装いが常だった」（p.11）。
小夏さんは茶道で着物姿を見慣れていたが、普段の姿は異なっていた。
やなせ先生は、奥さんのように自分の考えを持った女性が好きだったのではないか、と著者は推測している（p.29）。
奥さんは働き始めて半年ほどで体調を崩し始めた。
やなせ先生は奥さんの心臓の検査に立ち会い、奥さんをとても大切に思っていたことがうかがえる（p.23）。
奥さんが亡くなった後、やなせ先生は奥さんの不在によって生活が不便になることを避けるため、日常のことに目を向けざるを得なかった（p.40）。
「チャコちゃん（奥さん）が亡くなって以降、チャコちゃんはくっついて離れなかった。そう思っていた矢先の出来事だった。…私の後をついてきてくれたチャコちゃん。チャコちゃんは私の後を追ってしまった。悲しみがさらに深いものにした。」（p.42）奥さんを慕っていた飼い犬（チャコちゃん）も奥さんの死後間もなく亡くなり、やなせ先生の悲しみを深くした。
やなせ先生は、奥さんが亡くなってから始めた新しい習慣として、足の指回しをしていた。「これがきっかけで「足やって」と、一日3回足の指回しをするようになった。」（p.43）。
やなせ先生の生い立ちと家族:
やなせ先生の生まれ故郷は高知県香美郡在所村（現 香美市香北町）朴ノ木。幼い頃の記憶として、霧の中での出来事を挙げている。「この記憶は先生が3歳の頃のことだ。…これが先生の最初の記憶ではないか」（p.45）。
父親が早くに亡くなり、母親は再婚。やなせ先生は一時、高知市のごめん町の伯父宅に預けられた（p.31）。戸籍上は一人になったと自伝にある。
ごめん町の伯父宅での生活について言及されており、「ごめんの親父は（先生の）お袋にちゃんと下宿代を払ってくれていた。オレはお袋のところだから、自分の家みたいで良かった」（p.71）と述べている。
やなせ先生は、幼少期の家出をした際に、ごめんの伯母さん（実の母親の再婚相手の母親）から慰められた（p.31）。
母親（登喜子さん）は認知症を患っていたが、奥さんは最期まで自分で面倒を見ようとしていた（p.33-34）。
弟の千尋さんが戦争で戦死したことが、先生にとって大きな影響を与えている。「弟の戦死」（目次 p.4）
仕事と創作活動:
やなせ先生は東京高等工芸学校を卒業後、東京田辺製薬に就職した（p.76）。
東京田辺製薬では宣伝部でデザイナーとして働き、「エビオス」の絵を描く仕事などをしていた（p.76-77）。
終戦後、高知新聞社に転職し、記者兼編集者として働いた（p.84-85）。ここで奥さんと出会っている。
三越百貨店の宣伝部員募集に応募し、採用された（p.88）。ここでは包装紙やショーウィンドウの展示、劇場のポスター制作などに携わった。「三越百貨店でのクリスマス用の包装紙を作ろうということになり、その頃、前衛画家として超有名な猪熊弦一���先生に頼むことになった。」（p.89）。
「動く絵」という言葉にこだわりがあり、アニメーションへの関心を示唆している。「やなせ先生以外に「動く絵」という言葉を聞いたのはEテレの『浦沢直樹の漫勉』だった。」（p.95）。
漫画ニュース（テレビ番組）の制作に携わった経験がある。「『漫画ニュース』というテレビ番組をご存じだろうか。…先生から、「黒い紙とハサミを借りてきて」と言われた。」（p.102）。
「アンパンマン」は児童誌『キンダーおはなしえほん』で連載が始まったが、当初はなかなか売れなかった（p.106）。
やなせ先生は、子供たちのエネルギーが強大であるため、それに負けないように全力投球する必要があると語っている。「子供が持つエネルギーは巨大で強力だから、それに負けてしまう。持っている力を出し尽くさなくてはダメなのだ。だからクタクタになる」（p.107）。
「まんが甲子園」に毎年参加し、高校生たちの作品を見るのを楽しみにしていた。「「まんが甲子園は毎年楽しみにしているの」と奥さんからも聞いていた。」（p.120）。
「アンパンマンミュージアム」が各地に建設され、オープニングセレモニーやイベントに積極的に参加した（p.122, p.124）。
病気と闘病生活:
心臓の病気を患い、手術を経験した（p.174）。手術後もキャンバスに絵を描くことに励んでいた。「この心臓の手術前から、先生はアンパンマンミュージアムのギャラリーに展示するため、30号から50号のキャンバスに絵を一生懸命描いていた。」（p.174）。
腸閉塞や胆石の手術も経験している（p.178）。
腎盂がん、膀胱がんを患い、繰り返し手術を受けていた（p.180, p.202）。
「良性であろうと悪性であろうと、現在はある程度の大きさになると手術する」（p.185）と述べ、早期の治療を重視していた。
闘病中も仕事への意欲は衰えず、「病室で仕事しないと退屈だなぁ」（p.188）と語るなど、創作活動を続けていた。
睡眠時間をコントロールする努力をしていた。「この時の先生の睡眠コントロールは「上手いなぁ」と感心した。」（p.203）。「毎日工夫しながら上手に眠り方をコントロールしていた。」（p.205）。
「星屑同窓会」での転倒を「柔道の受け身の型」と表現するなど、ユーモアを交えつつ自身の状況を受け止めていた（p.206-207）。
人生観と思想:
「金の儲けはできない。バブルの頃、赤坂の土地を一億で買わないか…その時、借金してでもこの土地を買っておけば、その後すごく値上がりして大金持ちになれたのだけれど、オレはそれができなかった。」（p.13）のように、金儲けには関心が薄かった。
「どんな国でも貧しい時代は、散歩が娯楽になるんだよ。」（p.69）と述べ、経済状況に関わらず楽しめることを見出す大切さを語っている。
人との関わり方について、「一人で聞いた話は信用できない」（p.5）と述べ、多角的な視点の重要性を示唆している。
「絶対そんなことはしない」（p.210）と自身で思っていたことが、他者からの意見や評価によって揺らぐ経験をした。「そして人の噂話には絶対惑わされないと思っていた自分だったが、惑わされていたことに気づかされた。」（p.210）。
「自分のやりたいことと、他人に求められることとのバランス」を意識してい���（p.170）。
「不安安定狭心症」や病気との闘いの中でも、決して弱音を吐かなかった。「「不安安定狭心症」、そして「腎孟ガン」の日記。やなせ先生は、いつも夕食後や休日に話し始めるから、聞くのは私一人だけだった。」（p.172, p.177）。
東日本大震災後、被災地支援に積極的に関わった（p.214-215）。被災地を選ぶ理由として、自身の体調と交通手段を考慮し、他者に迷惑をかけないことを挙げていた（p.215）。
「町の人には、最初は大勢のお客さんが来てくださったので、駐車場やトイレが足りなかったり」と、ごめん・やなせワールド（アンパンマンミュージアム）開館当初の混乱を語っている（p.126）。