紙の本
考古学とは
2018/09/05 19:40
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JFK - この投稿者のレビュー一覧を見る
考古学の進歩には、科学および技術の進歩がほぼ必然的に伴うものであることを改めて認識できた書物です。もちろん、人間の想像力が大切であることは言うまでもありませんが。
紙の本
グローバルなネットワークの崩壊
2021/11/01 16:00
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投稿者:mt - この投稿者のレビュー一覧を見る
後期青銅器文明の崩壊の謎に迫った一冊。「海の民」の襲撃や気候変動など様々に取り沙汰される崩壊の「原因」を検証しながら、著者なりの結論に至る展開は、非常にスリリング。はるか昔に緊密に絡み合った国際交易網を張り巡らせていた東地中海世界にとっては、何か一つが崩壊の決定打となったのではなく、むしろ複数の要因が連鎖反応を起こすことで、文明の修復機能を上回り、加速度的に破局を深めていったということか。リーマンショック、コロナ禍を経た我々にとっては、古代のグローバル世界で起きた破局が非常に身近に感じられるかもしれない。
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要するに真相は不明
2021/06/01 11:26
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投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
題名だけで判断するとBC1177になにか大きな災厄が起こって...という話かと思ってしまう。しかし本書を読むと「要するに真相は不明」ということ。年代を上下しながら しかも記述される地域も転々と変わるので理解するのにやや努力が必要になる。別の本で沈没船の発掘の話を読んでいたのでその点は興味深かった。
現代にも通じる警告、文明は発展し続けるとは限らない、この本の話のように退歩することもある。
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当時の外交文書がこんな大量に解読されているとは驚いた。文明の崩壊は複合的な原因で起こるので、滅亡している当人たちもそのことに気づかない、ということらしい。
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最近少し流行りの文明崩壊に関する本の一つなのかもしれないが、本書が扱うのは、エーゲ海・東地中海からエジプト、メソポタミアまでの地域の後期青銅器文明の終焉。本書によれば、紀元前13世紀から15世紀にかけて、これらの地域は相互に結び付いて豊かな文明を育んでいたが、紀元前1177年を含む前後数十年の間に、その中の多くの文明が崩壊したという。そして、その崩壊の原因は未だに特定されておらず、諸説あるが、著者は複合要因説、つまり、気候変動、地震等の自然災害、民族移動などの複数の要因で「パーフェクトストーム」のような現象が生じたとしている。
何しろ、古い時代の話なので、中々時系列でも追うのが難しいが、エジプトのファラオの変遷を一つの軸として読んでいくと分かりやすいかもしれない。
それと、あまり馴染みのない地域が次々と出てくるので、場所や名前を追うのが大変で、最初は読んでて眠くなった。ただ、ある程度読んで理解が進んでくると見通しがよくなる。そうなってから、まえがき、プロローグ、第1章の最初の方などを読み返すと、分からなかったことが分かってくる。
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【運命のひと時に】古代史上の一時代を画する出来事となった「海の民」の襲来。世界史の授業でも取り上げられる一方で,その内実が明らかにされていないこの民族の謎に迫りつつ,往時に成立していた国際的なネットワークについて考察した作品です。著者は,ジョージ・ワシントン大学でキャピトル考古学研究所の所長を歴任するエリック・H・クライン。訳者は,翻訳家として活躍する安原和見。原題は,『B.C. 1177: The Year Civilization Collapsed』。
前半部分は聞き/読みなれない固有名詞が並ぶため,門外漢にはかなり読みづらいのですが,後半部分の歴史ミステリー的要素はその大変さを軽々と超える面白さ。また,エジプトやヒッタイト,エーゲ海文明が,それぞれ独立したものではなく,かなり緊密につながりあっていたという指摘にも驚きを覚えました。
〜真の問題は,「だれが犯人か」でも「なにが原因か」でもなく--というのは,関係する要素や民族はいくらでもあるようだから--「なぜ起こったのか」「どのように起こったのか」のほうである。〜
読書の愉悦,ここにあり☆5つ
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12375366289.html
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大まかなエジプト史、メソポタミアの国名、ヒッタイトなど知ってはいても、BC1400-1200頃の地中海情勢、古代国際関係の観点などは知らず、それなりに面白かった。
しかし、古代文明世界の崩壊の原因を探ると言う惹句ほど、記述は明瞭ではなく、地震、気候変動、「海の民」(外敵)、内乱、それらの複合、色々あるけどよくわからないよねが結論。密結合のシステムは一部が揺らぐと崩壊しやすいというのは、魅力的な議論だが、何があったのかの部分は、明確ではなく、著者自身も積極的に一つの原因を主張してはいない。これは、誠実な態度とも言えるけど、スリリングとは言えないところ。出版社の売り文句と本の内容に乖離があると言うべきか。
これほど古く高度な文明、外交、経済活動が、あったことには驚く。
3000年前も今も変わってないじゃん。
絵が無い。遺跡や、出土品の写真を入れてくれたら、イメージしやすく、もっと楽しめた。
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とても期待しながらざっと流し読みした限りの感想。もっとじっくり読めば感想はかわるかもしれない。
過去にあったグローバル社会の崩壊の原因をさぐるという狙いは今日的ですばらしいと思った。後期青銅器文明時代の詳細な検証もさすがは考古学の権威だけあって微に入り細に入りでさすが。
だが、まとめの崩壊の原因が特定できなかったという結論は残念というしかない。
やはり今度こそ単体文明ごとの崩壊研究の書ジャレド・ダイヤモンド「文明崩壊」を読もうと思う。
満足度★★+0.5
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最後の解説がよくまとまっていて判りよかった。
本編は、詳しいんだろうけど私には難しく、人の名前なのか国の名前なのか、学者の名前なのか、だんだんわからなくなる始末。
もしかしたら第5章だけでも私は満足できたかも。
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前15世紀から13世紀にかけてエーゲ海・東地中海で文明が繁栄し、国際交易ルートがあったが、前1177かその後に多くの都市が破壊され、後期青銅器時代は終わりを告げた。
ジョンソンの複雑性理論で説明できるのではないか。システムの構成要素の相互依存が高まるとシステム全体を安定に保つのが難しくなる(超干渉性)。一部に変化があれば、全体を不安定化させ、システムは崩壊する恐れが出てくる。
ジョンソン:『複雑で単純な世界』
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BC1177 エリック・クライン 筑摩書房
所有欲が芽生えて以来の
グローバリズムに注目し
紀元前と現状の社会の類似性を見抜いた
見識を評価したい
強奪に始まる侵略戦争と共に
交易と政略結婚による縄張りで対立を生み出し
漁夫の利による利権を狙うグローバリストの台頭
それにしても知識に頼ることで
調和による相乗効果を見逃している愚かさに
我々は学ぶべきなのだ
ビックリしたのは
弓に関する科学力による進歩だ
紀元前2000年ごろに
異種の素材を張り合わせることで
強力な弓を開発していると言う
合わせて馬による戦車も登場していたとも言う
尽きぬ強欲とそれがもたらす不安恐怖による力は
死に物狂いだと言うことだ
内容は兎も角
日本語の乱れを感じずにはいられない
毎度のことだが
肝心なテニヲハによる機微に疎いし
ガの乱用や主語の重複が悲しい
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紀元前1200年ごろメソポタミア〜地中海沿岸に繁栄した
文明が突如として消滅、これまでデウス・エクス・マキナの
ごとく、そのすべてが「海の民」による侵略のためと考え
られてきたきらいがあったのだが、決してそれだけが原因
ではなく、様々な要因(地震・旱魃・飢餓・内乱、そして
侵略など)が複合的に作用したため、巨大な一つのシステム
となっていた広大な文明がドミノ倒しのように崩壊したと
説明しようとするのがこの著作である。その是非については
判断する立場にないのだが、それ以前にこの時代にこれだけ
広範囲に及ぶ貿易圏・文化圏が成立していた様を生き生きと
描いているところが一番の読みどころではないかと思った。
その崩壊直前の様相は現代のグローバル社会に通じる所が
あり、その意味での警鐘ともなっている。
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考古学的な知見から、三千年以上も昔のここまで詳細な事実がわかるようになったのかと驚く。焼成された粘土板に刻まれた文字の、年月に耐える力というのはただごとではない。
ただしかし、肝心のタイトルの年に起きた数々の国や都市の滅亡の背景にあった事実についてはそこまではっきりとした経緯が確かめられたわけではなく‥
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紀元前13世紀末〜前12世紀初頭にかけて、近東・東地中海地域に栄華を誇っていた古代文明の数々が次々に“終焉”を迎えた。それは一体、なぜなのか。謎の民族「海の民」が引き起こしたものなのか。アメリカ考古学者クラインが軽快な語り口でその謎に迫っていく。
私は近東のある古代文明を研究したが、その国のことを学ぶのに手一杯で、なかなか当時の国際関係にまでは気が回らなかった。本書はそれを非常に鮮やかに描いている。「海の民」については、この地域に興味のない方には聞き覚えのないものかもしれない。私は、彼らは単一民族ではなく難民のようなもので、何度か波のように押し寄せてきたと学んだように記憶している。やはり今でも彼らは謎の民のままである。ワクワクする。
本書は大きく2つのパートに分けることができる。まず、前半は当時の豊かな国際関係の紹介である。国王同士の手紙など、とても興味深い。このパートはいわば証拠固めに当たる。
そして、シャーロック・ホームズの言葉も引用される後半は謎解きである。クラインは文明の崩壊の原因を単一要因に帰結させず、複合要因に求める。前半で紹介した高度に結びついた国際関係が、ドミノ崩しのように大きなハレーションにつながったというものだ。とはいえ、様々な未解決の課題は残り、謎解きは不首尾に終わったとも言える。
本書は一般書らしい。しかし、内容はなかなか高度である。慣れない方にはカタカタの、それも欧州圏とは違う地名や人名に苦労するかも。でも読み終えたとき、現代社会に通じる大きな学びがあるだろう。