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商品説明
絶版文庫をこよなく愛する著者たちが、膨大な量の蔵書から選び抜いた佳作を紹介し、黎明期の文庫の変遷や翻訳をめぐるエピソードを綴る。専門店やインターネットの利用法、古書価の目安等も収録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
近藤 健児
- 略歴
- 〈近藤〉1962年愛知県生まれ。中京大学経済学部教員。国際経済学専攻。
〈田村〉1948年栃木県生まれ。香川大学教育学部教員。英文学専攻。
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紙の本
名も知らぬ遠き時代の珍らしい文庫本展覧会
2000/12/06 21:15
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投稿者:小池滋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この書評をお読みの方の中には、もちろん古書探し・集めの好きな方が多くおられるに違いない。初版本集めに熱心な方もおられるだろう。現在絶版の本だけを目の色を変えて探す方もおられるだろう。そして、その中に絶版文庫本を見つけることに情熱を注いでおられる方もいるだろう。
普通の本好きからすれば、文庫本なんてごくありふれたもので、かりに文庫で品切れになっていても、親本を図書館で探せばよかろう、くらいに考えてしまうのだが、どっこい、そうはいかない。文庫本でしか出されたことのない作品がたくさんある。しかも、困ったことに──ある人にとっては、楽しいことに──そうした本ほど、出版されると、あまり売れないために、すぐに絶版になってしまう場合が多い。
本書の三人の著者は、専門は経済学、文学、数学とまるで違うが、絶版文庫本集めへの情熱については共通している。それぞれが以前から本や目録を出したり、ホームページで成果を発表していたが、本書は三人の揃い踏み──ではなかった、三重奏のコンサートという贅沢なお披露目なのである。
第1楽章は「読むよろこび」と題して、英米仏独露ほか各国の文学作品の珍らしい文庫本の紹介である。わたくしは英米学者のはしくれで、フレデリック・マリアット作の海洋長篇小説『ピーター・シムプル』の邦訳が戦前に岩波文庫で出ていたと聞いてはいたが、現物を見たことは一度もない。ほかにも、まさかこれが文庫にと、目を見はったものもいくつかある。
第2楽章「調べるよろこび」はもっとおもしろくてためになる。「赤本文庫の歴史」「レクラムかカッセルか」「戦時中の文庫の雑学」「文庫の奥付が語る終戦前後」など、各項目の表題を見ただけで、ドキドキが止まらなくなる人も多かろう。
単に好奇心を満足させるだけのものではない。例えば「レクラムかカッセルか」(田村道美執筆)などは、学問研究の域にまで達していると言っても誇張ではない。
日本の文庫というと、多くの人は「岩波文庫」の巻末の1927年7月発刊の辞「読書子に寄す」を見て、ドイツのレクラム文庫がお手本だと思ってしまうかもしれない。
岩波文庫についてはその通りなのだろうが、すべての文庫がそうなのだろうか。イギリスの「カッセル国民文庫」(1886年発刊)も多く日本に入り、文庫に与えた影響はレクラムのそれに劣らぬものがあったことが、ここで実証的に論じられている。
三教書院が1910年に発刊した「袖珍(しゅうちん)文庫」はレクラムとともにカッセルの文庫を手本としていた。この他にも、いまでは名前すら忘れられている文庫の数々が、この楽章の中で妙なる響きを発している。マニアでなくても興味をそそられて、マニアになるかもしれないから、ご用心、ご用心。 (bk1ブックナビゲーター:小池滋/英文学者 2000.12.06)