紙の本
「ほかならぬ自分が戦わなければならなくなると、戦い取る価値のあるものなんて、びっくりするくらいわずかしかないもんです」
2010/07/21 15:47
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:成瀬 洋一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宇宙の彼方の植民惑星を舞台に、「無尽蔵の資源とそれを活用する技術が与えられ、しかも過去の思想や因習に囚われない世界に放り出されたとき、人間はどのような世界を構築するのだろうか」という思考実験をおこなった作品で、ホーガンがたびたびテーマとした、保守的で硬直しきった組織と自由闊達な人々との対立を背景に、かろうじて理解可能な程度に異質な思考をする文明と接触した顛末を描いた長編。
旧世界ではダメ人間とレッテルを貼られたような人々が新世界に適応して活き活きと動き出す姿と、旧世界のエリートが空回りする姿を笑い飛ばしながら、文明(価値観)の対立、教育の重要性、社会秩序と統治機構などについて考えていくハードSFアクション。
『星を継ぐもの』や『未来の二つの顔』といった代表作には劣るものの、好きなホーガン作品の1つです。
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断絶への航海
2017/04/29 12:04
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投稿者:yasu - この投稿者のレビュー一覧を見る
さずがジェイムズ・P・ホーガン。地球での人類滅亡を心配した人類が宇宙へ人類の種を送り出し、人類が生存可能な星・ケイロンを見つけ、繁殖を始めたところに人類が支配するために向かう。人類とケイロン人はどのように接するのか?
「ケイロン」って、宇宙士官学校の上位種族の名前なのは偶然?
紙の本
解説で内容の面白さを知る
2005/10/05 18:16
14人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:濱本 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
完読に3ケ月掛かった。評論を読む事が多い私だが、たまには、小説も読みたくなり、小説ならば、SFだなという事で書店で目に入った文庫本を購入した。かなり、分厚い本で、読み応えに期待したのだが、内容は、ほとんど分からなかった。途中からは、字面を追っていただけのような気がする。やっぱりSFは、アーサー・C・クラークが最高である。彼の作品で退屈をした覚えが無い。本書の内容は、解説を読んで初めて理解出来た。地球人がある惑星に移住し、その惑星で繁殖、人口を増やす。その後、大規模な宇宙船で大量の地球人を送り込むが、その時は、その惑星の住人の生活、思考等は、地球人のそれとは、全く違うものに進化していたという話しだったそうである。その概要を知ると、面白そうだと思い、読み直そうかとも思ったが、止めにした。その惑星では、貨幣は意味を為さないものになっているという。私の理想の社会である、お金の無い社会がこの小説には描かれていたのである。理解出来なかったのが残念に思った。本書を読み終えて、小説はもういい、また論評の読書に戻ろうと思った次第である。次に読む小説もやっぱりSFになると思うが、もう少し分かり易いものを選ぼうと思う。
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第三次世界大戦前夜にDNAとロボットを乗せてアルファケンタウリ系に殖民した人類と、第三次世界大戦を潜り抜けたばかりのアメリカ人派遣団の奇妙な戦い。
通貨の存在しない社会、契約の存在しない社会は成立しうるか。
2004年に新装版が刊行されている。が、私が持っているのは旧装丁版。
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SFという舞台ではあるけど、「異文化の接触」がメイン。
科学的なところが少なく、政治的な部分が強い。
登場するキャラクター・個性が弱い上に、登場人物も多いので、感情移入できないままに話が進んでしまう、という印象。
(特殊な人達を描かずに、普通の人を描いているから致し方ない)
ということで、グイグイ引き込まれるような内容ではなかった。★2つ。
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Twitterでゲーム理論のことを書いていたらオススメされたので買いました。
登場人物が多いし(しかもカタカナ)話は長いしで、途中で一度挫折し、読書再開後はメモ取りながら読みました…
読みながら考えたことは、もちろんゲーム理論のことと、マズローの欲求段階説のこと。生まれながらにして死や飢えに対する恐怖が少ないケイロン人、という前提を頭に。
解説で囚人のジレンマについて書いてあるので、ゲーム理論に興味があればそこまで読みたいですね。
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資源が無制限に近い形であり、かつ旧来からのやり方から逃れることができるとこのような社会ができるのかもしれない。
いつか我々もテクノロジーが発達し同様音状況になったら
物質への執着をなくし、互いの信頼が貨幣になることはあるだろうか。
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エネルギーと資源は無尽蔵であり、無料で提供され、単純な肉体労働は、ロボットがおこなうため、ケイロン人のステータスは、己の才能を磨くことに競争心を燃やす。
ただし、単なる平和主義ではなく、報復手段を隠し持ち、まず相手に協調をもちかけ、どうしようもない人なら、自衛の為に先制攻撃をしかけて撲滅する。ゲーム理論にもみられる、最も有利な戦略を使う。
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エネルギー、物質が無制限に手に入る環境でのどかに生きるケイロン人と地球人移民団の異文化遭遇のお話。
いろいろと突っ込みどころはあるけれど、僕はケイロンに住みたいなあ。
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冗長である
確かに面白い作品であるんだが、驚く結末は存在しない。読んだとおりである。地球の滅亡を予期してはるかな星に遺伝子だけを送り、そこで人類の復興を企図する。それは成功し、地球から最後の人類が遺伝子から育ったネオ人類に会いに行くということなんだが、どうもこの作品は反戦色が濃すぎてSFにはなじまない。
辛口ではあるが、長いだけだったといっても過言ではない。むしろ、「囚人のジレンマ」を扱った解説のほうが楽しかった。こっちは読み応えがある。
ということで少し残念だったので、しばらくホーガンから離れることにする。
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われわれは新しい思想を開発しなければならない。
これはハーラン・エリスンの言葉です。J・P・ホーガンの作品を読むのは初めてですが、本書はスペキュレイティヴ・フィクションの名にふさわしく、また娯楽作品としても十分な仕上がりになっていると思います。
地球人類の種から生まれたものの、そこが惑星ケイロンであり、機械によって育て上げられたゆえに、宇宙人であるケイロン人と、40年後に地球から<メイフラワー二世>で、ケイロンを新世界として当然の権利とばかりに植民しようと乗り込んできた人類との出会いが生む葛藤、軋轢、衝突、和解といった様々な状況で、登場人物と共に僕自身、内宇宙に誘われ、ある種の気づきに直面せざるを得ませんでした。優れたSF、あるいは幸運な読書体験というものはいつだって他者との邂逅、つまり自己の変様を用意してくれるものです。
「われわれはすべて地球という異邦の惑星に住む異星人である」再びハーラン・エリスンより
本書から印象的だったセリフをいくつか紹介します。
「でもだれでも何か、見どころはあるものです。人間の心は無限の資源だって言ったけど、でもそれは無駄遣いしないとしての話だ。これ、面白いパラドックスだと思いませんか?」
「ケイロンでは、富はその人の能力なんです!気づきませんでしたか?彼らはよく働くし、やるときには全力を尽くす。そして常に向上に努めている。いいことであれば、何をしようとそれは問題じゃない。そしてみんながその価値を認める。あなたの言われた他人に認められること――それが彼らの通貨なんです……能力を認められることです」肩をすくめ、両手を広げて、「これでかなり意味が通るんです。今あなたも、それこそみんなが求めるものだと言われましたよね。そう、ケイロン人は、象徴的なものを媒介とせず、直接それを支払っているんです。世の中をわざわざややこしくする必要はないでしょう?」
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遺伝子の情報を用いて、分子から沢山の人間を合成し、隔離された場所で、一から人間社会を作ったら、どんな社会になるのか? そんな空想をベースに綴られている小説です。SFのSがサイエンスのSというより、社会学のSという感じです。でも、これはこれで、楽しく読めました。
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世界大戦直前に、新たな居住惑星を発見するため、人類の種を搭載した宇宙船が地球を出発した。やがて到達した惑星をケイロンと名付け、ロボットにより育てられたケイロン人たちはそこで新たな社会秩序と高度な科学技術を確立する。後から地球を発った移民たちは、二十年をかけ惑星ケイロンにたどり着くが・・・。全体として政治、軍事色が強く、また登場人物がやたらと多く混乱した。ホーガン先生は序盤を凌げば加速度的に面白くなるというイメージだったが、本作は個人的に冗長であった。もう少しエンタメ色がほしかったかな。好みが分かれる作品。
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2040年、第三次世界大戦直前に出発した移民船クヮン・インが植民に適した惑星を発見。
この朗報をうけ宇宙船メイフラワー二世が建造され、惑星ケイロンめざして旅立ちます。
ケイロンで彼らを待っていたのは、地球とは異質な社会でした。
異なる文化との軋轢が、やがて・・・。
囚人のジレンマを彷彿させる物語です。
「機械に仕事をとられる心配はないのかな?」
「その仕事が機械にできるのなら、人間はもっとほかのことをして暮らすほうがいいでしょうね」 ー 265ページ
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別の有名作品を読んだことがあるけれども
著者の作品はしっかりと読ませる作品なんですよね。
ケイロン人の生き方はある種理想に感じるでしょう。
だけれども、よく考えればきちんとした目的を
持たぬ者には厳しいもののように思えます。
そして地球人は人間の醜さの象徴とも
取れましょう。
ケイロン人をはたから下等とみなしたのですからね。
ここに出てくる落ちこぼれ君たちは
その枠からはみ出た人たち。
だけれども決して落ちこぼれではなくて
色眼鏡で見ない優しさもあるんですよね。
ただし人類の結末はなぁ…