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紙の本
「翻訳は日本語の問題であ」り,「翻訳に不可能はない」
2010/09/26 12:16
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
やなせなおきは1943年(根室市)生まれ。早大文卒業(70年,27歳!)。同大学院博士課程中退。成城大学勤務(77年(34歳)-91年(48歳))。翻訳不能と言われたジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』(河出書房新社全2巻,1991-93,河出文庫全3巻,2004)を独自の造語を用いて翻訳(日本翻訳文化賞受賞,94年,51歳)。本賞に関しては,著者は連名(共訳者)で受賞歴がある(ダグラス・ホフスタッター『ゲーデル、エッシャー、バッハ』,85年)。
序章
第一章 翻訳[旧字体]は如何様になすべきものか
第二章 小砂眼入調
第三章 翻訳の姿勢
第四章 『ユリシーズ』翻訳
第五章 無理の愉悦
余が翻訳の標準
“アクの強い,口の悪い著者の本は面白い”の法則通り,柳瀬の本は面白い。本書も面白かった。そういえば,誤訳を指摘していた別宮貞徳の本も面白かった。こういった無双の英語力を持っている人が誤訳を指摘し,範例を示してくれると,翻訳業界も引き締まっていいと思うし,地方国立大学の教授なんかも,こういった著者を読んでいるかもしれない学部生相手にならエラそーな口も叩きにくかろうと思う。
ところで,著者は「翻訳は日本語の問題である」と断言し,「翻訳に不可能はない」を実践している。実際,翻訳不能と言われた著作を翻訳しているのだから,“私はあなたには敵いません”としか私には言いようがない。私が驚くのは,著者の日本語についての,というか抉るような知識量である。例えば,本書はじめの方に「一国」という言葉を用いて著者が翻訳を論じている。私にはこれを“一つの国”という意味以外で使った経験はない。経済学部出身者の九割九分はそうだと思う(思い上がりか?)。しかし,これには“一つの国”から連想を許さないような意味があり,著者はこれを用いて論を進めているのだ。翻訳業が輸出不可能の国内産業なのだから,日本語に通暁しているのは当たり前だのクラッカーなのかもしれないが,恐れ入るほかない。
翻訳とは,できていて当たり前の評価しかもらえない。苦心惨澹の挙句,たった数語からなる一か所の翻訳を,快哉を叫びながら書きつけても,誰も褒めてくれるものはない。逆に間違っていたら,鬼の首でもとったかのように好き放題いわれてしまう。もともと仕事って,どんな業界でもそんなもんなんだよねぇ・・・。御同輩,ご一緒に努力しましょう。(965字)
紙の本
戦闘的
2001/07/06 13:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:花梨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「フィネガンス・ウェイク」や「ユリシーズ」などの翻訳や、軽妙なエッセイで知られる著者が、堅い題名の本を出しました。内容も実に本格的で、さまざまな本訳書への具体的な批判、著者への反論への再反論なども含みつつ、翻訳はいかにすべきかを高らかに宣言しています。