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紙の本
若い人の科学離れを促しているのは、科学者たちのことばにあるのでは
2002/10/17 20:54
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
エッセイは、リズムで読むとかなり楽しい。例えば井上ひさし『にほん語観察ノート』、これは四頁でひとつの話が完結する。どこから読んでも、いつ読んでも苦にならず、再読をしても気にならない。ところがこういう科学エッセイは、案外ありそうでない。それは科学のもつ奥深さのせいかもしれないが、だから科学離れがおきる。そんな不満を満たしてくれたのがこの本。1982年に人文書院から出された本の文庫化。1980、81年のノートは新聞連載で、一編が900字。筆者は苦労しただろうけれど、長過ぎず短すぎず、丁度いい長さで読みやすい。
タイトルは硬いけれど、科学エッセイというよりも、家庭人としての自分を振り返っている部分が多い。学生時代の話、子育ての楽しみや、成長した子供との付き合い方などが中心になる。母から子へ、そして孫へと伝えられることの大切さ。20年前の文だけれど、古さは全く感じられない。後半、生命科学についての話の印象も古臭い感じはしない。と言うことは、この20年というのは、生命科学にとっては、DNA発見後の落穂拾いの時代と言えるかもしれない。
「科学技術に女性の視点」という新鮮さもあるけれど、科学者の言葉を論じる中で、「生物が物質を作るときに“生産”といわずに“産生”といったりするようなわざとわかりにくくしているとしか思えない」、「そういう言葉を使うときに感じるおかしな優越感」への警鐘は誰もが納得するだろう。分かりにくい学者の専門書に対し、子供用の科学本を読むことを薦める部分にも共感できる。
以前にもこの人の本を読んだことがあるが、そのときはクローン礼賛一辺倒で、筆者の姿勢に疑問を感じた。しかし20年前の著者には、科学者としての謙虚さが見えて好ましい。1936年生まれだから当時は最も充実していた時、そのせいかもしれない。読み終えて気付いたが、本のどこにもご主人のことが書かれていない。子供さんのことは書いても、旦那さんのことは書かない。これは生物学的に自然かもしれないけれど、社会生活の上からは不自然ではないだろうか。