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紙の本
西遊記の構成に関する分析に、驚天動地、茫然自失
2003/02/22 14:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
西遊記は子供の頃からの愛読書であり、これまで何度も読んできた。この本の著者は、西遊記好きが嵩じて、専門に研究する学者になった様である。学者と言う者は、とんでもない事を考えるもので、ここに示される西遊記の構成に関する分析には、驚天動地、茫然自失、といったところである。
百回にわたって配置されたエピソードが、7の倍数、2乗数、天地数に則って按分されている事、玄奘、孫悟空、猪八戒、沙悟浄、龍馬、との五行との対応、易経に基づいたそれらの間の関係性と変換、等々とんでもない深読みがなされている。しかもその解析が論理的で、納得させられてしまう。
開いたままの口を閉じて、もう一度西遊記を読み直してみる事にしよう。
紙の本
作品にまつわる細部に注目
2023/05/28 13:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
アダプテーションによって断片的なエピソードを知ってはいても長大な原典を読んでいる人はあまりいないのが『西遊記』であろう。本書は入門編というより、数字は何を意味するのかといった作品にまつわる細部に注目するもので、手っ取り早く概要を知りたいという人向けではないので注意。
紙の本
日本経済新聞2000/5/28朝刊
2000/10/21 00:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:田中 優子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて都市や教会建築は書物だった。構造とパーツから物語が読みとれたからだ。本書ではそれとは逆に、『西遊記』という書物が巨大な宇宙建築物であると知った。書物は線的なものだと思っていたが、ここで語られている『西遊記』はまるで構造物である。この内部では自分の位置を常に知ることができ、そこから空間的に移動することができる。さらには今いる位置から全体を眺め渡すことさえできそうだ。これはじつに爽快な気分で、これこそ高度なゲーム感覚と言える。
たとえば『西遊記』は、五五回を境目に二つ折りにできるほどシンメトリーになっていて、対称的な位置に良く似た物語が設置されているという。シンメトリーなエピソード群はなるほどその位置に配置され不思議な鏡像感覚を覚える。思えば物語とは、「どこかで知っている」という既知なるものと未知なるものとのせめぎ合いのはざまに立ち上がるものだ。私たちは線的に書物を読みながら、頭の隅ですでに読んだものを探しているが、『西遊記』ではもう探すべくもなく、自分のいる場所から対称をなす向こう側の山頂を眺めてみることもできそうだ。
ちなみにこの五五という数は「天地数」にあたるという。『西遊記』では回の数や困難の数、登場人物の寿命、距離、日数、経典数、重さなどが、一二、三六、八一、さらにはプラトン数一二九六〇〇などによって表され、あらゆる数が意味を担って登場してくる。このことは日本の古典文学でも見られることで、かつて物語は言葉の意味だけでなく、易や陰陽五行などから読み手の身体感覚となった「数」の秩序が大きな役割を果たしたのである。秩序は数だけではない。孫悟空その他の登場人物の着ているものの色からも物語の行方は予測できる。虎や龍やさまざまな動物怪物も単にこけおどしに出てくるわけではなく、宇宙秩序のパーツとして配置されている。このような物語世界の壮大な組みたて工事現場に立ち会った読者は、必ずや自分の建築物を作りたくなるはずだ。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000