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商品説明
宅地化が進む都市近郊農村地帯で起きた、野鳥退治の新兵器をめぐる大騒動。天災か人災か? 人間のエゴイズムと環境破壊が、ブラックユーモアたっぷりに描かれる。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
あれ、この本て『スケアクロウ』って名前で出ていなかったっけ?ま、タイトルが変わろうが、利権まみれの日本の地方政治って現状は、少しも変わらないけどね
2004/07/01 22:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《農村に新興住宅が混在し始めた有権者人口7千ほどの小さなK町。スズメの異常繁殖に手を焼いた町が農家保護のために選んだのは、間歇的に音を発する駆除装置だった》
異常繁殖したスズメ対策に、町が採用した駆除装置の効き目もあって、農家の人たちは一息つく。しかし水田の近くに自宅を建て或いは借家をしている新住民は、早朝から大砲並みの音で脅かされ、睡眠不足で勉強も手に付かない。文句を言おうにも、相手の農家は自分たちの大家。レッスンが出来なくなったピアノ教師は、堪らず町役場に乗り込んだ。
しかし、機械の採用を決めた農政課のピリド課長は、新聞の慶弔記事を読むことこそ自分の仕事と考える人間。主任のカンマ君は住民課のコロンとの情事のことしか頭に無い。陳情は聞いたものの、苦情を言うのはあなた一人とばかりに、真面目に取り合おうともしない。被害は遂に、子供達の心を蝕み始める。そんな騒ぎをよそに、利権アサリに余念がない町と役所を牛耳る町長や農業副委員長、そして農機具メーカーは、馬鹿げた機械の追加設置に踏み切る。
一時代前の小説といえばそれまでだが、そう言い切れないところが日本の現状にはある。警察や外務省の不祥事、年金がらみの身内への発注もだけれど、談合汚職も全く減る様子はない。金融機関の不正融資も、あいも変わらず全て情実がらみ。原発一つとっても、相変わらず「電気は必要、原子力は安全」を繰り返すだけ。しかも、核廃棄物処理は電力会社の費用ではなく、税金で処理し、原発の電気は安価とほざく。この本の苦々しいばかりの告発が、そのまま有効なのが現実だし、それは地方に行けば行くほど揺るぎが無い。
それにしても、後味が悪い本だ。むろん、それはここに戯画的に描かれる日本の現状のせいもあるが、第一は、一人として魅力的な人間が出てこないことだろう。あとがきで郷原宏はこの作家を褒め上げるが、1955年生まれを考えれば文章力は並。漱石ばりの人物表現とはいうものの、それは登場人物を、役職やあだ名で呼んで通しているということだけである。
むしろ、姫野と並んで持ち上げられている杉浦明平やきだみのるの作品が、現在では一顧だにされないという厳しい現実を直視すべきだろう。文章や主題は悪くは無いけれど、如何に描くかという点については、センスの問題だけでなく一考の余地がある。やっぱり、告発は粋でなくちゃあ、つまりませんやね。