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若竹七海とくれば杉田ヒロミ、最強のタッグが描く、心に傷を負った探偵。読むしかない
2002/11/19 19:51
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今、なんとも品のよい印象を与える作風の30代の作家たちがいる。『ガラスの麒麟』の加納朋子や『バルーンタウンの手品師』の松尾由美、そして『ヴィラ・マグノリアの殺人』『遺品』を書いた若竹七海などがそうだ。年代こそちがうが、『空飛ぶ馬』の北村薫もその一人と言ってもいい。その思いは若竹の今度の作品を読んでも変わらない。
長谷川探偵事務所に勤める葉村晶を主人公にした作品集だが、様々な雑誌に載った八短編を、書き下ろしの短編で上手くまとめている。品だけではなく、その手腕の冴えも見事としかいいようがない。実の姉に殺されそうになった葉村晶。しかも姉が自殺してしまったことで、真相を知ることも出来ないままに心の疵を癒せない若い女性。彼女に様々な事件を経験させることで、姉のことを忘れさせようとする探偵事務所の長谷川。女実業家 松村詩織、御曹司の詩人 西村孝、OLの市藤恵子など個性溢れる人々。彼等が発する「おんな探偵!」との呼びかけが微笑ましい。
作品は冬から始まり、三つ目の冬でまとまる九編。この季節については、本を読み終わった後で改めて目次を見直した時に気付いた。作品自体には季節は感じなかったものの、ヴァイオリニストのクレメルが演奏するピアソラのEight SeasonsのCDを思わせる洒落た目次構成には感心してしまう。
事件は決して大げさなものではなく、それでいて人間の心の襞みたいなところを描くので、繊細という印象。フロイト否定派の人には、こういった心理ものに近い推理は「またか」の印象を与えるだろうが、若竹の品がわざとらしさを感じさせない。彼女と名コンビのイラストレーター杉田ヒロミのカバー画も、内容とピタリと合っていて、その絶妙のバランスに感心。このコンビは強い。
紙の本
ミステリーコーナーより
2001/02/05 17:36
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投稿者:福井健太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
好評を博した「プレゼント」に続く〈女探偵・葉村晶シリーズ〉第2弾。「白黒を付けないと気が済まない」性格の持ち主である葉村晶は、様々な事件に巻き込まれて——あるいは自ら首を突っ込み——背後に隠された真相を暴き出していく。そこには人間の悪意や策謀が渦巻いていた。巧みなストーリーテリングと「毒」が楽しめる9編を収めた、今年度最高のミステリ作品集の1つである。
紙の本
葉村晶復活
2001/01/05 17:26
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投稿者:松内ききょう - この投稿者のレビュー一覧を見る
葉村晶、職業探偵。
晶の周辺でおこる様々な事件は冷え冷えとして、晶が与える解決がまたせつない。人間の心のちょっとした隙間を突く、作者独特の冷たい切り口が光る。前作『プレゼント』から続く連作ミステリ。表題作他、「わたしの調査に手加減はない」「たぶん、暑かったから」「都合のいい地獄」など。タイトルからも、事件の温度が感じられる。切れ味すっきりと、読後複雑。ラストは好みが分かれそう。
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大好き。悪意がつまっている感じで、ちっとも読み心地はよくないんだけど、読んでいるとしんとした気分になれます。
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念願の詩集を出版し順風満帆だった婚約者の突然の自殺に苦しむ相場みのり。健診を受けていないのに送られてきたガンの通知に当惑する佐藤まどか。決して手加減をしない女探偵・葉村晶に持つこまれる様々な事件の真相は、少し切なく、少しこわい。構成の妙、トリッキーなエンディングが鮮やかな連作短篇集。
【感想】
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この作家さんの初読み作品。
桐野さんのミロといい、女性が主人公のハードボイルドタッチの作品が結構好きなことに気づく。
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女探偵・葉村晶シリーズの短編集。自殺の謎を解き明かさずにはいられない女探偵。
葉村晶との会話や独り言が面白い。なぜか碌な母親が出てこないのはどうしてなんでしょう。
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同じ人が中心となって、探偵したりちょっとした謎をといたりする短編集。
理解できない話もあったが、読み返す気にならないぐらい単調。
途中で挫折。
おもんない。
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再読で熟読。一風変わった比喩などの言葉遣いやシビアな結末が絶妙。「アヴェ・マリア」「依頼人は死んだ」「わたしの調査に手加減はない」なんかが好きだけれど、「たぶん、暑かったから」の最後の一言には絶句。だけどこういうこともありうるんだよね……。
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(収録作品)都合のいい地獄/わたしの調査に手加減はない/女探偵の夏休み/依頼人は死んだ/アヴェ・マリア/鉄格子の女/詩人の死/濃紺の悪魔/たぶん、暑かったから
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女探偵・葉村シリーズ。
再読。「アヴェ・マリア」だけなんとなく記憶にあったな。
いやーおもしろかった。
晶のさっぱりした辛辣な性格、好きなんですよね。
連作になっているが、ラストに震撼。
「あんたって最高よ。ひとを泣かしておいて、微動だにしないんだから」「同情がなぐさめになった経験がないからね」
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ひさびさ再読。
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どの作品も最後に鮮やかなどんでん返しがあり、
とても面白かったです。
こういうお話はすごく好きです。
シリーズがあるようなので、
そちらも読んでみたいです。
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女探偵の葉月晶が事件を解決する連作短編集。 始まりからして曇天の空のような重苦しさと謎めいた女の登場で引き込まれ、後にいくほど鳥肌が立つようなホラー気を感じる。特に最後の一編は怖かったですよ。
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レビュー済の作品『プレゼント』に登場した葉村晶を主人公にした9作の短編集です。
葉村晶・もうすぐ29歳の冬。職を転々としていた彼女も、とうとう定職につくことになった。といっても、「女探偵」という肩書きがついただけで、以前勤めていた長谷川探偵調査所と契約をしたフリーの状態な訳だが。
契約最初の仕事は、有名女性実業家をいやがらせから2週間守り抜くこと。
有名になれば多少のいやがらせはあるものだが、彼女の場合は尋常の数ではなかった。しかもその嫌がらせの犯人が、それぞれ全て別人で別行動をしているときたからには…。そして、その影には1人の人物が絡んでいるようで…。 「濃紺の悪魔」
ほか、「詩人の死」「たぶん、暑かったから」「鉄格子の女」「アヴェ・マリア」「依頼人は死んだ」「女探偵の夏休み」「わたしの調査に手加減はない」と各話ごとに晶は春夏秋冬…と四季を迎え、2回目の冬。
女探偵は、一連の事件の黒幕ともいえる相手と対決することになるのだ。 「都合のいい地獄」
ハードボイルド・ミステリ、9作の短編集。
「トラブル・メイカー」(『プレゼント』最終話)の後日より話が始まります。(読んでいた方がやはり解りやすいかと)
相変らずタフな葉村晶ですが、調査所を通しての依頼以外にも自分から調査に乗り出すことが多くなっています。それはつまり、晶本人が納得できていない事に関わるからなのですが…。答えの出ないことに結論をつけたい、でもついた結論を直視するのは怖い。その気持ちがよく解るだけに、イタイ気分が抜けません。毒の強い七海作品ですが、今回は少し柔らかいなーなんて思っていたのに…ヤラレタ。
全体的に柔らかく思えるのは、晶本人の感情が以前よりはっきり書かれているせいでしょうか。それと、2作目「詩人の死」から同居人となる友人・相場みのりや、他にも出てくる晶の友人や同僚の存在も大きいかと思います。あと長谷川所長ですね!(個人的贔屓v 飄々とした彼が好きですよ~) 晶の人物像にとても深みが出来ています。
本編のミステリ感としては、短編ながらしっかりトリックが仕掛けてある辺り、さすがです。特に「女探偵の夏休み」。ラストにきて、え?と思って読み返してしまいました。
ただ、最終話「都合のいい地獄」はちょっと付け足しっぽいというか…関連性が見えない部分が多いように思うのですが…。ホラー調なラストもイマイチ納得がいきません…。緊迫感はすごくイイだけに、残念至極。
私的気に入りは「鉄格子の女」。鉄格子の奥に座り込む、絶望と恐怖と青い光に彩られた女の絵。画家の家の間取りを想像し、絵を想像し、そしてまるでジグソーパズルのピースがはまるように真実が導き出されるラストが、すごく印象的なのです。
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葉村晶シリーズ2作目。9編の連作短編集。今回は小林警部補は全く登場せず。小林警部補は別のシリーズに行っちゃったのかな。最初と最後に登場する『濃紺の悪魔』は何者なんだろう。次回作にも出てくるのかな。こういう思わせぶりなやつは嫌いだ。『詩人の死』も『たぶん、暑かったから』も親が子にべったり干渉しまくり、というのがよく出てくる。そもそもみのりや葉村自身もそんな感じだもんな。現代では珍しくないってことか。こんな10年以上前の作品でもそうなのか。一つだけ、みのりの方が探偵役のものがあった。ありがちな展開だったけど、ぼんやりな私は気づかなかったし、面白かった。『鉄格子の女』が一番怖かった。狂気。束縛。恐ろしい。