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紙の本
動物たちの生きようという思いがドラマを創っていく。
2010/12/05 20:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
先日、図書館総合展でポスター発表をした。
他のポスターを見ていたところ、友人の故郷の図書館のポスターを見つけた。
そのことを友人に伝えると、子どもの頃借りていた本の話になった。
その図書館でシートン動物記をたくさん借りていたという。
シートン動物記は、私も子どもの頃に読んでいた。
小学校2年生の時のクラスではやって、
学校の図書室で借りていたことを思い出した。
不思議なもので、2番目以降は忘れているのに、
最初に読んだ本のタイトルは、覚えているものだ。
私が最初に読んだシートン動物記は、この『裏まちのすてネコ』だった。
出版社名を記憶していたわけではないが、
タイトルの言葉が正確だったことと
自分が読んだのがシリーズの第7巻だと覚えていたこと、
そして、表紙に上にラインが入っていたことを覚えていたので、
図書館で本書に再会した時にすぐにこれだと分かった。
ちなみに、友人の最初に読んだのは、「北極きつねのカタグ」だという。
子供向けのシートン動物記は、いくつかあるが、
タイトルで、北極ぎつねカタグと出ているのは、これだけなので、
おそらくは、友人が読んだのは、
『少年少女シートン動物記6/灰色リスの冒険/北極ぎつねカタグ』
だと思う。
シリーズの最初に読んだのが猫の話とは、我ながらやっぱりという納得感がある。
表紙にいるのは、りっぱな縞猫。
確か、この本は書架にきちんと入っていたのではなくて、
誰かがテーブルに置いたままにしていたのだ。
表紙がこちらを向いていたから猫と目が合った。
たぶんきちんと書架に収まっていて、
文字だけを見ていたらこの本から借りなかったと思う。
1巻から順番に借りていこうとする性格だったので、
1がなければ2からにしたと思うからだ。
「これ誰か借りるつもりで出しておいたの?」と確認したが、
誰も名乗り出なかった。
人気があったから他の巻はなかった。
この本に縁があったというわけである。
残念ながら出会ったときのことはかなり覚えているのに、
肝心の読んだ感想が思い出せない。
ストーリーも覚えていなかった。
裏まちのすてネコの他に、
『銀の星』と『猟師と犬』が収録されていたことも覚えていなかった。
だから、今ここに書けるのは大人読みの感想になってしまう。
動物たちをしっかりと観察して、淡々と描き切る。
創作であっても、変にお涙ちょうだいでもないし、あり得ない展開でもない。
主人公の動物が死んでしまうラストもあるが、
その目に温かさと動物に対する尊敬の念が宿っているから、
しっかりとその死を受け止めて読むことができる。
シートン動物記に登場する動物たちは、
何らかの形で人間と縁を持つ動物たちである。
人間の思惑に巻き込まれ数奇な運命をたどることになる動物たちだが、
彼らなりの生きようという思いが、ドラマを創っていく。
その行動には、相手を無理に感動させようといった意図はないのに、
(おそらくシートン自身もそういう人だと思う。)
動物たちの行動は読み手の心を自然と動かして行く。
子どもの頃に出会った本に会いに行くと、
ある意味、タイムマシンに乗ったような気分になる。
その頃のことを全部は思い出せなくても、
やっぱりその本を選んだ自分に納得感がある。
大人の自分が子どもの頃の自分に会ったような気持ちになった。
そして、子ども時代を知らないはずなのに、
子ども時代の友人にも会いに行ったような気がした。
私が読んだシリーズも友人が読んだシリーズも絶版となってしまっていて、
図書館でないと読むことはできないが、
シートン動物記はいろいろな出版社から出ていて、入手できるものも多い。
今の子どもたちにも、これからも子どもたちにも、
読まれていってほしいシリーズである。