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紙の本
本書は紛れもないヘレニズム末期の思考のかたちを示しその内実あるいは香りのようなものを保存している
2001/02/17 16:25
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
途中、退屈さのあまり何度も放り投げたくなるのをなんとか堪えながら、一行一頁(一字一句ではない)を律儀にたどっていくうち、どう表現すればいいのか、鋭い知的刺激をもたらしたり心を高揚させるところは一切なく、叙述も洗練されてはいないのだけれど、たとえていえば「プリミティブ」で「初々しい」議論が反復的に展開される淡々として温かい、しかし強靭な語り口にしだいに慣れ、後半は一気に読み切ってしまうところまで引き込まれてしまった。
様々な事柄が述べられていた。それらが雑然と整理されないまま、私の脳髄にひたひたと浸み込んでいく。──三位一体論やキリスト論(受肉論)、終末論や救済論(一なる始原への帰環の思想)はもちろんのこと、理性的被造物の自由意志による多様性の創出や至高の段階からの倦怠ゆえの没落、善の欠如としての悪や無からの創造を思わせる記述、聖書の霊的解釈をめぐる議論もあった。
異端的・グノーシス的な思考と反グノーシス的思考、異教的・ネオプラトニズム的な思考と反「哲学」的思考がウロボロスのようにからまりあい、語りえず認識しえないものへの敬虔あるいは否定神学的な峻厳と、万象のうちに神の働き(教育)を語り神の愛を認識する神秘主義的な態度とが渾然一体となったその叙述は、紛れもない「ヘレニズム末期」の思考のかたちを示しその内実あるいは「香り」のようなものを保存しているのだと私に確信させる。