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紙の本
井上ひさし全著作レヴュー49
2011/03/21 15:12
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉 芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中央公論社は1979年3月~6月にかけて4巻からなるエッセイ集を刊行した。その続編として刊行されたのが本書で、1970年から80年にかけて発表されたエッセイを収録している。
一番読み応えがあるのが、冒頭に置かれた自伝的エッセイ「聖母の道化師」(初出は『読売新聞』1973年2月11日~7月29日)。仙台の養護施設光ケ丘天使園への入園から始まり、上智大学へ進学、母の居る釜石市に帰省、大学を休学し国立釜石結核療養所に事務員として勤務――1949年から1956年にかけての著者の体験が語られている。自分の生い立ちについては、様々なエッセイや自伝的小説(『四十一番の少年』『花石物語』『モッキンポット師の後始末』等)で素材としているが、大なり小なり誇張潤色が為されているので、事実をかなり忠実に記したと思しきこの「青春期」は等身大の井上ひさしを描いたという意味で極めて興味深い。これと並んで「ひろがる世界、さまざまな言葉」も、自分の「自己形成」を「言葉」という観点から再構築したエッセイ。
著者の人生信条・宗教観・言語論は、これまで作品の中に幾度も開陳されてきたけれども、こうやって誇張を排した真摯な筆致で述べられると、井上ひさしの原点を改めて垣間見せられたような気がしてくる。