紙の本
ファイロ・ヴァンス登場
2002/03/09 08:29
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投稿者:modern - この投稿者のレビュー一覧を見る
巨匠ヴァン・ダインの記念すべき処女作である。とにかくこのシリーズの特徴は、物凄い量の薀蓄である。ファイロ・ヴァンスという探偵はとにかく古今東西の芸術に通じている設定になっていて、はったりをかましまくる。「中国人に比べて日本人の芸術は浅薄だ」とかも言う。まあ時代が時代だから仕方ないとも思うが、とにかくこの人の表現は人種差別、性差別に溢れていて、ものすごく厭味である。だが——、こんなことを書くと読む気をなくす人がいるかもしれないが——、あえて言おう、そこが魅力なのである。犯罪捜査中に自分の芸術知識をひけらかし、ときどきオペラの台詞などを引用して悦に入る探偵。そんな「嫌な奴」を見ているのが、だんだんと快感になっていくのだ。読んでもらえれば解ると思う。もはや「事件」なんてどうでも良いのだ。
紙の本
あまりに探偵小説的な
2002/04/23 02:44
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投稿者:呑如来 - この投稿者のレビュー一覧を見る
探偵的な、あまりに探偵的なファイロ・ヴァンス。それはまさに初めて読んでもその既視感に呆れかえるほどのステレオタイプなのである。
とはいえオリジナルがコピーに負けてもそれは彼のせいではない。「ワトスン役さえ務められないヴァン・ダインなどただの語り手にしておけば良かっただろうに」という批評もウンベルト・エーコの『開かれた作品』やロラン・バルトの『テクストの快楽』を読んでなければ生まれなかったかもしれないわけだから。
しかしなぜ、探偵はいつも秘密主義で、気取り屋で、救いようのないほどに自尊心が強いのだろう。小説世界ではヴァンスと検事のマーカムは親友だが、現実にはこういう友情は成り立たないであろう。
現実世界に名探偵が存在しないのも、彼らが権力者を手なずける術を心得ていないためではないかと思われる。
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心理的分析による犯人の導き方は、読んでいて非常に面白かったです。
僧正やグリーン家が有名ですが、心理分析による犯人解明への流れは、これが一番好きかもしれません。
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殺害されたアルヴィン・ベンスン。かつらをとり入れ歯を外したリラックスした格好での死。死の直前まで彼といたミュリアム・セント・クレア。恋人のリーコック大尉に容疑がかかる。被害者の金を使い込んだ友人リアンダー・ファイフ。ファイフが偽造した小切手と担保にした宝石。浮かんでは消える容疑者たち。地方検事マーカムとともに現場に訪れたファイロ・ヴァンスの推理。リーコック大尉に容疑をかけるマーカムを止めるヴァンス。銃を捨てる所を目撃され容疑が濃くなったリーコック大尉。自首してきた彼を取り調べるヴァンス。アルヴィンの兄アンソニーの証言。
1997年8月27日購入
1997年9月20日初読
2007年3月31日再読
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心理的探偵法で犯人を見つけるというファイロ・ヴァンスのお話。巨匠、ヴァン・ダインの処女作です。
この時代について詳しくないし、引用、雑学の表記がとても多いので、ちょっと読みにくくはあります。
また、「心理的探偵法」というものに疑問も持っていました。
理屈だけ並べても犯人は観念するのだろうか、と。
(ま、他の本でも観念する人は多いけど)
物語では、死体の状態とちょっと弱いけど物証、動機から犯人を指摘します。死体の状態あたりが心理的なのかな、と思ったりもしますが、やっぱり新鮮な感じはしないですね。緊張感もあまりない。
とはいっても、論理の組み立て方なんかは現代のミステリに通じているものなので、「古きを知る」という意味では読んでみる本かなと思います。引用が多いせいか文章のテンポはあまり良くないですけど。
…それにしても、電話交換士って通話内容を他言するものなの?
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ベンスン殺人事件読了。この探偵の人をなめくさったような態度!まちがいなく御手洗系列…ッ!むしろ御手洗の源流がファイロヴァンスなんだろうね…。話は平凡だけど探偵の奇天烈ぶりが強烈すぎる。あとヴァンの存在感がゼロすぎて、語り手犯人系じゃないよね?と思うくらいでした。誰か話しかけてよ!
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ウォール街の株式仲買人アルヴィン・ベンスンが殺された。
関係者はほとんど皆、怪しいところがいくつもあり、
誰が犯人でもおかしくないように思われる。
状況証拠から犯人を決定しようとする検察当局の主張を
片端から否定し、独自の心理分析によって
真犯人を暴き出すのは、名探偵ファイロ・ヴァンス。
本格黄金時代を代表する作家ヴァン・ダインの処女作にして、
名探偵ファイロ・ヴァンス初登場の作品。
原題「The Benson Murder Case」。
クイーンの作品をいくつか読んだところで
他の古典にも手を出してみようと思い選んだヴァン・ダイン。
ファイロ・ヴァンスが登場する12の作品のうち、
代表作とされるのは三作目の「グリーン家殺人事件」や
四作目の「僧正殺人事件」らしいが、
この「ベンスン~」もそれなりに雰囲気があって面白かった。
登場する謎は、冒頭で提示される殺人事件のもののみで、
数人の容疑者の中の誰が犯人なのか、というフーダニットがテーマ。
怪しいと思われる人物が浮上しては、
次々と疑惑が晴れていく、という変化に富んだ展開は面白かった。
だが、真犯人が指摘されるくだりはややあっさりしすぎの感あり。
ちょっと拍子抜けしてしまい、物足りなさを感じた。
それまでずっと、真相を明らかにしようとせず、
はぐらかす態度をとり続けたヴァンスのせいで、
真相への期待が高まっていただけに、余計に残念。
ヴァンスの提唱する、心理的なもののみを重視する探偵法。
個人的に、詭弁を弄するタイプのキャラは好きなので
アリバイや物的証拠や動機といったものに惑わされるな、
というヴァンスの屁理屈には思わずにやりとさせられたが、
どうも解決部分の説得力が弱いと思ってしまった。
そんなことだけで犯人が特定できるか?と思えてしまうのだ。
ただ、このファイロ・ヴァンスというキャラクターはかなり好み。
やたらと引用を多用したり、古典になぞらえた表現を用いたり、
マーカムに対してたまに吐く皮肉たっぷりのセリフなども、実に良い。
この探偵が登場するというだけで、次作以降を読むことに対する
モチベーションが維持できそうな気がするくらいだ。
歴史的には意味のある作品かもしれないが、
ひとつの推理小説としては特に突出しているわけでもない出来。
だが、ヴァンスには楽しませてもらったので、星は4つ。
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最初に付け加えるのは、この星四つは、「金字塔」としての意義を加味して、一つ星を足している。
ファイロ・ヴァンスという探偵は、実に魅力的だ。こういう、傲岸不遜だが、頭脳明晰な探偵は、いい。
それに比べて、本書の謎の魅力の無さと言ったら。それをヴァンスにずるずると引きずらせるのは、逆にヴァンスの魅力を減じることになったのではないか。
人間の心理と言うものを重んじ、物的証拠など足らんもの、と一蹴するヴァンスの理論に基づき、殺人事件が紐解かれる。
ボリュームはあったが、謎以外の面では楽しめた(既に述べたことだが、特に、ヴァンスの人柄・行動)。
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ヴァン・ダイン一冊目。
洞察力の優れた探偵役ヴァンス、記録役のヴァン・ダイン、検事のマーカスが主な登場人物。
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「ミステリーの人間学」で紹介されていたので。
確かに、弾道から犯人の背の高さを推測したり、骨格から血縁関係を推定したりと、現在の科学捜査に通じる観点の面白さはある。
だが、衒学趣味にあふれる文体はそれについていけるだけの知識がないと、ただただ鼻について読みづらいだけ。
それに、主人公のもってまわった捜査手法?にもいらいらさせられるし。
主人公に対する悪感情は、冒頭で日本の絵画をけなされたからかもしれない。
一応、読みとおした自分をほめてあげたいぐらいだ。
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子供のころ『グリーン家殺人事件』と『僧正殺人事件』を読んで、自分が想像だにしなかった展開と結末にどきどきさせられた。この背表紙をみたら、そんなこと思い出した。
感想は、うーん…。
先に挙げた代表作と言える2つが凄すぎるのか、子どもの頃の思いが美化されているのかわからないけど、とにかくこの2つに比べたら、なんだか間が抜けていた。
解説読んだら少し納得。
ヴァンスの探偵法はあらゆる物的証拠を無視して犯罪の心理要因を分析することなのだけど(現在のプロファイリングに近いのかな?)、読んでいてかなり無理があるように感じた。だからなのか、やっつけ仕事で無理くり丸めましたよ感が拭えない。
解説の中島先生は、ヴァンスの人物描写がうんざりするほど多過ぎると書いておられたけど、わたしはヴァンスが大好きなので嬉しかった。