紙の本
ユングの心理学を通して、おとなにおける<子ども>の活性化、新しい意識の誕生を促す
2005/07/05 08:03
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まざあぐうす - この投稿者のレビュー一覧を見る
心とは、自分の一部でありながらままならないものです。心のことが知りたくて、20代でフロイトに出会い、30代に入ってからユングの心理学に出会いました。「河合隼雄著作集」全14冊(岩波書店)や「講座心理療法」全8巻(岩波書店)を読みながら、独学でユングの心理学を学び、自分の心について考えてきました。
ユング自身の生涯の記録を通して、ユングの見た代表的な夢やフロイトとの出会いと決別、精神科医としての危機の時を振り返り、ユングの分析する人間のタイプや無意識の世界、<元型>や忘れられた心の断片<影>、内なる異性像<アニマ・アニムス>、母なるものの根源にある<グレート・マザー>、<老賢人>を解き明かす同著はユング心理学関係の書籍の中でお気に入りの一冊。
最後の章にユングの考えに根ざす、著者の同時代への洞察と提言が心に残ります。現在を子どもや老人の危機の時代ととらえ、「老人や子どもに問題が生じているのは、彼らがいわゆる一人前のおとなのあり方の、影にされてしまっているからである。・・・そこで、彼らは病理的な症状という形で、その復権を訴えているのだ。」と深い洞察を示し、「想像の世界に開かれている子ども時代や、瞑想的な老人のあり方が、もっと重要視されてもいいのではないだろうか。」と提言しています。
最後にノーベル文学賞を受賞したG・ガルシア・マルケスの『百年の孤独』の「おとなにおける<子ども>の活性化と内的な想像と外的な現実が一体となった」新しい作品の世界を例に、ユングが訴えたかった「新しい意識」の誕生を促しています。
自分の内面への旅を経て、新たな意識へと向かう。想像の世界に開かれている子ども時代や、瞑想的な老人のあり方を見つめなおすことを通して、おとなにおける<子ども>の活性化と内的な想像と外的な現実が一体となる世界へと向かう。ユングの心理学を紹介する同著の根底に、心が繊細な人、心を病む人への励ましを感じます。心理的な危機を積極的退行ととらえ、ユングの心理学を解き明かすことをとおして、新たな意識へと誘う一冊です。
紙の本
始まりはどこまでも個人的な色に染まり
2023/04/28 21:08
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投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
ユングの心理学を紐解いているが、フロイトとの違いも炙り出され二人の別離の原因の一端も知ることができる。印象に残るのが彼らの生み出した学説の根幹。育った環境やコンプレックス。性格的な資質。それらの要素が作り上げた理論、治療のアプローチなどに影響を与え結果袂を分かつことになる。後を追う者たちに多大な功績を残し、芸術家たちにインスピレーションを与え、一般人にも揺るぎない足跡を残す二人。その功績は天才的、革新的であったのだろうが、突き詰めていけば始まりはどこまでも個人的な色に染まり、その色が消えることはない。
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ユング心理学を触れるきっかけ、入門書となったものです。ユングの生い立ちを中心に、彼の考えについて簡潔にまとめたものだと思います。難しい専門用語等は特に無く、読みやすいです。
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初心者の私にも読みやすいです。
ただ、学術本てよりも自伝よりだと感じました。
『ゲド戦記』(主に『影との戦い』)の解説本的に読んでいます。
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ユングの生涯と当時の時代背景を追いながら、彼の理論を概観していきます。「無意識」と「元型」の理論の他に「タイプ論」も取り上げられています。
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後半の章はユングのタイプ論を簡略に説明しておりわかりやすい。
ユングのタイプ類別は、外向・内向の二つの態度と思考・感情・直感・感覚の4つの心理機能に分けられる。(詳細は本文参照)
ユングは東洋思想にも興味を持っていたようで、自作の曼陀羅を描いたり禅の研究もしていたようだ。西洋思想だけでは不足、
東洋思想とミックスして初めて真理に近づけられる。医学でもそう。
宇宙は広大だが、人間の心理も同様に奥深いものだ。
「夢」にも心理が現れることはいまや常識になっている。
江原啓之をはじめ、スピリチュアル分野でも「夢」は重要なファクターとなっている。
ユングを研究するということは、非現実な分野にも足を踏み入れるということで、
生半可な気持ちで入り込むと、足を取られかねないと感じた。
高校時代に始めて読んだ専門書はフロイト「精神分析入門」途中で一年投げ出したりしたが、生まれてはじめて知的好奇心が
爆発した。心理学は私の知的ルーツでもある。好きなんだが、いまいち足を踏み入れてしまうのはなぜだろうか。
心理学が好きだからかえって忘れて遠ざけてしまうのか、実際に勉強してみると案外つまらなくて自己否定になりそうでこわいのか・・・
本書を読了して、心理学に改めて興味を持った。
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想個人の像の世界の重要性と、その在り方への道しるべの提示を試みた本です。
フロイトとユングの別離らへんや、グレード・マザーあたりの解説は興味深かったです。
全体的には長たらしい印象もあり、つまみ食いするには良い本だと思います。
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フロイトとユングの関係・・・知っていたようで、実はよく知らなかった。
アニマ・アニムス、グレートマザー、老賢人などのイメージが生まれた背景など、ユングを手っ取り早く知りたい場合に役立つ。
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[ 内容 ]
「魂の医師」としてユングは、自己内部を深く凝視し、心の深奥、広大な無意識の領域へ踏みこんでいった。
そこは、人間の喜怒哀楽の感情を生みだす源泉であり、心のあやういバランスを保つ力も存在している。忘れられたの断片〈影〉、内なる異性像〈アニマ・アニムス〉、母なるものの根源にある〈グレート・マザー〉、そして〈老賢人〉などのイメージは壮大な神話やファンタジーを創りだしつつ、日常のささやかな幸福や人間関係のドラマにも密接に関わっている。
ユングの心理学は、生の根底、自己の未知なる内面への旅である。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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人の二重性
第二の人格をもとめた
人の根源を内面的にもとめたのがユングだろう
絶対的な根源、それに向かい人は人格を形成する
それはそれぞれある、でもその根源を知らぬ間に抑える
これが人から人間への変化だろう
異性、父、母、影
これが根源。これで人格を支配する
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ユングの生涯を辿りながら、その思想の変遷を紹介した本である。
ユングがどのような人間なのか興味があったので、本書を読んで頗る満足した。ユングがフロイトの元を去る理由も具体的にどういう考え方の相違があったのかが分かって良かった。
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ユングの人生に即して、心理学について解説している。
最初に2つの人格を対比させることによって、解説しようとしている。
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無意識やコンプレックスなどの概念を考え、夢判断ではフロイトと袂を分けてしまったものの、現在にもこの思想は大きな影響を与えている人物だ。どちらかといえば私はツユング派かな。
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読書録「ユングの心理学」1
著者 秋山さと子
出版 講談社
P35より引用
“しかし、ユングはかならずしも、そういう意味ばかりには考え
なかった。むしろ、それは彼にとって内なる魂のあらわれであり、
感情的エネルギーの源泉であった。”
目次から抜粋引用
“二つの夢
フロイトとの出会い
危機の時代
内向と外向
無意識と元型”
心理学者である著者による、ユングの心理学理論について紹介
する一冊。
ユングの見た夢についてから現代の子どもや老人についてまで、
著者の持論を添えて記されています。
上記の引用は、ユングが発見したコンプレックスについて書か
れた項での一文。~コンプレックスと言われると、今は人から欠
点を指摘されているような印象を受けてしまいがちなようですが、
元の意味はかなり違うようです。自分たちの利益になるように、
元の意味を歪めて使い出した人達は、どう思っているのでしょう
か。
今の老人について書かれた項を見ていると、著者は身も心も弱
り切った老人しか見ていないかのように見受けられます。
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本書はユングの理論を彼の生涯を辿りながら解説すると同時に、ユングの心理学と現代との関わりについて著者の見解を述べている。古い本ではあるが、著者の見解は現在にも通じる部分があるように感じた。またユングについても簡潔にまとまっておりある程度参考になった。ただ好みがわかれる本だと感じた。哲学、心理学に興味がある人におすすめしたい。