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収録作品一覧
食通 | 山口瞳 著 | 9-14 |
---|---|---|
天どん物語 | 種村季弘 著 | 15-26 |
鮭 | 開高健 著 | 27-35 |
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紙の本
食在文中
2007/11/15 13:32
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:黒塚 - この投稿者のレビュー一覧を見る
食は人間の本能であり、娯楽でもある。まずは生命を維持するだけの食物を確保することが第一課題だが、それが満たされると次は「味」の追求が始まり、これには果てがない。果てがないから、名随筆が生まれる恰好のファームになる。
本書には、日本の文筆家たちが腕をふるった中でも、星三つが並ぶような食のエッセイばかり、三十編がならんでいる。どれも一読垂涎の名文ばかりだが、とりわけ素晴らしいのが吉田健一の『饗宴』である。有名な随筆であるし、「味」というジャンルに括らずとも、戦後の日本で発表されたエッセイの中で一、二を争う名作だと私は考えているが、こうして食に関するエッセイばかりを集めた中で並べてみると、その素晴らしさがさらに際立つのだ。
病床にいて、とにかく、ひたすら驀進する食べ物妄想。頭の中にある、銀座から新橋界隈の旨い物地図を辿って、ひたすら食べたい料理を追い求め歩み続ける。動けないからこそ、よけいに引き立つ脳裏の味。
また田辺聖子のエッセイもよい。近所のおばちゃんの食べ物談義を聞く気安さで、関西の食の本質を知ることができる。
種村季弘の天どん談義は、食のエッセイが必ずしも美味佳肴を描く物でないことを教えてくれる。
他のエッセイもそうだが、旨いと感じるものをひたすら描いているのに名文が多い。食を通して別のことを表現しようとしているものは、どうにも興ざめである。食とは五感の全てにプリミティブな感動を与えるもの。だからこそ、ストレートに勝負している文章ほど、光って見えるのだろう。
とにかく、食いしん坊にとって、これほど楽しめるエッセイ集はない。ただし、一つだけ注意点がある。
ゆめ、空腹時には手に取らぬよう。