紙の本
近代組織論の原点
2000/10/19 16:20
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:dakara - この投稿者のレビュー一覧を見る
組織論では非常に有名なテキストです。持っていらっしゃる人もかなりいるでしょうが、最後まで読んだ人や中身を理解した人は少ないのではないでしょうか。それくらい本書は難しい本です。しかも訳語がかなり難しいので、読むのに本当に骨が折れます。しかし、読めば読むほど、現代でもバーナード理論が意味を持つことがわかります。たとえば、組織論の一番重要な問題は伝達(コミュニケーション)であるなどというあたりの指摘は、電子メールやイントラネットでの組織内のコミュニケーションの問題が盛んに論じられるようになった今日でも、十分通用するでしょう。タイトルは「経営者の役割」ですが、扱っている問題は組織論を包含しています。このような理論の薫り高き本を、学者ではなく、会社社長であったバーナードが書いたということも驚きです。本書は忙しい日常に読む本ではないと思います。しかし、まとまった休みが取れるときに、時間をかけてじっくり味わえば、それなりのものを得ることができると思います。
紙の本
バ−ナ−ドの信仰告白
2001/02/15 00:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
バ−ナ−ドは組織を社会的創造物として、生きている状態にあるものとして見る。彼はこのことを、ゲシュタルト心理学に依拠して、「人間が関与するかぎり、全体はむしろその部分の総計とは別のものである」という仮構、言い換えれば組織がそれ自体「実在 entity」であるという仮構をもって表現する。
ここでいう仮構とは、人間生活の場において限定された範囲で有用性の規準に照らして適用される「概念」であって、自明の理すなわち普遍性をもった真理として扱われる科学上の仮構である公理とは異なる。それは「非論理的であるが高度に知的な精神過程」によって感得されるべきものなのであって、形式論理的操作の対象となる空疎な虚構ではない。このような意味で、仮構すなわち〈概念〉は「リアル」なものである。
実在としての組織は生きている状態にあるかぎり部分の総和を超えており、そこに力を供出する人々に「言葉で説明できないような劇的、審美的な感情」(p.xxxiv)を経験させる。バ−ナ−ドはそれを「組織感 the sense of organization」、 「共同体意識 communal sense」あるいは「全体感 the sense of the whole」と表現する。
諸部分がその独自性を失わず全体との弁証法的対立を経て一つの実在のうちに融合しているとき、そこにはかつてレヴィ=ブリュルが未開人の原始心性を説明するために提唱した「融即律 principe de participation」に似た原理が作用しているであろう。このような融合の最高段階において協働をめぐる自由意思と決定論の相克はパラドキシカルな関係をとり結び、人々は神との合一を意味するキリスト教カトリックの儀式である聖体拝領が象徴する「精神的結合 communion」の状態へと移行するであろう。
バ−ナ−ドの信仰告白ともいうべきこのような記述は、組織を生きている状態において実在と見るリアルな仮構から論理的に導出される結論なのであって、決して神秘を語っているものではない。バ−ナ−ドが諸要因の錯綜体である協働現象を考察するために採用した方法は、混沌の中に形式的抽象的な「体系 system」という「概念」を構築し可能なかぎり明晰に記述することを通じて体系のうちに捕捉されない残差の存在を示し、かかる残差と体系との相補的な関係から実在としての組織という仮構を創発させようとするものであった。
それは認識の方法であるとともに「組織づくりの技法 the arts of organizing」でもある。バ−ナ−ドの方法はあくまでも論理的意識的思考に裏付けられたものであって、神秘的要素の非論理的な受容に基づくものではない。またそれは、多様性を単一の要素に還元し均質なタブロ−の上に量的差異として表示しようとする論理への非合理的な退行とは無縁であって、むしろ多様性を質的差異において「括握」し多様性を産出するための実践的技法なのである。仮構がリアルなものとなるのは認識者・実践者の能動性ゆえである。
投稿元:
レビューを見る
今回で何度目の再読か。読むたびに新たな発見も多い。付録『日常の心理』において学者肌の経営者であるバーナードならではの、経営における直観の意義への言及には気づきが多かった。まだまだ勉強が足りない。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
経営組織の基礎理論を確立した名著。
ゴードン、デール、ホールデンなどの実証的研究に対し、サイモンとともに理論的研究を展開。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
経営学においてとても評価されているらしい一冊。
その評価に値するほどの価値を見出すことは出来なかったものの、読んでよかったとは思えた。
組織論について述べる中で、心理的要因についても細かく触れ、その組織のメンバーが持つであろう特性や、組織の目的についてまで多方面に触れていて面白かった。
投稿元:
レビューを見る
回りくどい言いまわしで読解が困難。ただドラッカーを読んでいることもあり、殆ど同義の箇所がちらほら。本書が色々な経営思想家に与えた影響の大きさがわかる。時代とともに経営者、管理者の仕事は変わっているようで本質は同じのようだ。
投稿元:
レビューを見る
(経営)組織論の原論と聞いて、社会人修士学生していたころに読むべき本だったのですが、当時は読み切ららないどころか、積読(つんどく)状態でしたが、去年9月の転職で少し時間が出来たということもあって、じっくり読みました。じっくりすぎて5か月かかりましたよ。
著者であるチェスター・I・バーナードは研究者ではなかったと言います。なんでもハーバードを中退後、AT&Tで働き、最終的にはニュージャージー・ベル電話会社の社長職に就いているとのこと。それゆえ、ご本人も本書に書かれている通り、一般的にイメージされる社会科学的な手法ーーデータからの仮説とその証明ーーと言う方法ではなく、ご自身の大規模組織運営の経験を元に、各種著名な研究成果を照らしながら、その構造を理詰めで展開するアプローチが取られています。つまり、現代風に言うなら、AT&T のシングルケースによるケーススタディです。ここでいうケーススタディは MBA の言うケーススタディではなく、ご本人の経営経験による事例分析であり、そう聞くと小さい話のように聞こえるかも知れませんが、実際読んでみるととても膨大な事例と文献からその論理構造をねん出していることが分かります。大企業の社長ってすごいんだなぁ、と、理屈でわかる本、とも言えるかも知れませんね。
以下に福井県立大学 田中求之先生の解説があったりしていて、本稿も少し参照しています。記述方法が何しろ小難しくその解釈自体も研究になり得るようです。
http://mtlab.ecn.fpu.ac.jp/reading_chester_barnard.html
しかし、なんだかの会社でサラリーマンをしたことのある人にはなんとなく分かる話が多いように思います。バーナードが行ったことは、それら、会社員によって「なんとなく」理解されてきたことを論理的に説明することにあります。
バーナードによれば、まず、世の中にとって重要なことは協働である、とします。そして経営組織こそ、協働の場である、と主張します(本書の中では必ずしも経営に限定せず、宗教や軍隊組織についても記述がないわけでもないですが、やはり本懐は経営組織に関する記述でしょう)。しかし、実際に組織を運営してみると、なかなかこの協働というのが難しい。ほっておくと皆勝手な方向に向かい、バラバラになってしまう。バーナードによれば、組織に対する個人の動機付けはその人の道徳観に基づくとします。マネージメントがその行く先を決めるだけでは、個人と組織との間に道徳的な齟齬(そご)が生まれてしまう。即ち、組織と個人の道徳観を絶妙に折り合いをつける作業こそがマネージメントの役割だとします。そして、それには、権威によって裏付けられた公的組織の他に非公式組織の存在が重要であり、その源泉こそが個人のリーダーシップである、とします。そのリーダーシップを如何に作りだすのか。そしてそのリーダシップを経営の目的にどう沿わせていくのか。そこにこそ組織運営の課題があり、先に述べたとおり、そこにあるのは各人の道徳観の調整である、と。
恐らく多くのリーダーシップ論なりセミナーなりが語るリーダーシップはこのバーナードの言説から派生しているのでしょう。バーナードは更に、その創出は道徳観の調整であり、ヒエラルキ���が上がれば上がるほど矛盾した道徳観と葛藤せねばならない、と指摘しています。組織と個人のモチベーションがよくよく言われる昨今ですが、バーナードは経営者の視点でその点を指摘・解説しており、またそれだけではなく、その運営上の課題も定義しているだけ、現代巷にあふれるのリーダーシップ・セミナーより進んでいるようにさえ見えます。そして、付け加えるなら、この本はなんと1938年の本なのです!
この本の時代はまだ社会科学の分野でも、協働のロジックはもちろんのこと、ケーススタディや社会関係資本のアイディアはまだ出ていなかった時代であったと思います(ちゃんと知りませんごめんなさい)。その時代に基本的なアイディアを論理的に説明しようとした本書は、様々な組織・コミュニティを研究したい人にとって現在の研究成果がどのようなアイディアをベースにしてきたのかを知るのに良いと思います。実際、様々な形でバーナードの協働は追試され、補強されているのだと思います(これまたちゃんと調べてはいませんが)。
しかし…、何しろ読みにくいよ!気難しい人だったんだろうなぁ。
投稿元:
レビューを見る
人間が作り出す組織というものは、効率を優先したシステムにより作られているが、その組織を構成するのが人間である以上、それはとても人間的なものになる。
人間の心理を知らなければ、組織は作れないし、組織は、人間の心を反映して作られている。
何より優れた組織は、何より人間的だということになる。
この本は経営者の役割というタイトルであるが、中身は組織論であり、それは人間の心の動きそのものである。
経営者は、それを知ることが、その役割を果たすのに何より大事であるということなのであろう。
そんな、人間的な組織のありようを、なるべく全て網羅して、なおかつ、その、人の心の動きを、最大限システマティックに解説、体系化しようという提案をしているのが、本書ではないかと思う。
投稿元:
レビューを見る
翻訳がイマイチなせいもあり、全く頭に入ってこず、3分の1読んだところで、読み進むモチベーションを完全に失った。数十年に渡って読まれているので、重要な本なのだろうが私には、その価値が見出せなかった。
投稿元:
レビューを見る
経営組織論、近代管理論の祖といわれるバーナード。彼の遺した著作は少ないが、その中でも代表的な著書。読み継がれるべき著作ではあるが、抽象的な表現が多く、かなり難解。それゆえ、時代に応じて色々な解釈ができるのかも。田杉競監訳版に続いて翻訳された「新訳本」。
投稿元:
レビューを見る
現代の経営学の基礎となる非常に重要な作品。
経営者の役割とは、組織を「成立」させ、「存続」させることだといえる。
「個人とは、機械的な存在」であり、「組織とは、科学的に管理できる」という、これまでの経営論に対するアンチテーゼの提唱である。
組織が存続するためには、有効性または能率のいずれかが必要であり、組織の寿命が長くなればなるほど双方がいっそう必要となる。組織の生命力は、協働システムに諸力を貢献しようとする個人の意欲のいかんにかかっており、この意欲には、目的が遂行できるという信念が必要である。実際に目的が達成されそうにもないと思われれば、この信念は消えてしまう。したがって有効性がなくなると、貢献意欲は消滅する。意欲の継続性はまた目的を遂行する過程において各貢献者が得る満足に依存するのである。
★バーナードの立場
バーナードは「有効的(effective)」で目的の達成度、「能率(efficient)」で(行為者の)満足度を評価する。行為や活動をこの二つの軸で評価することは、個人の行動に限らず、協働、協働システム、公式組織と、すべてのレベルでバーナードが一貫して行っていることである。特に「能率」をつねに考慮することが、または単に目的達成に合理化されることだけが「良い」組織なのではないとするバーナードの立場があらわれている。
→「組織成果の最大化」、および「個々人の充足」
この両立ないしは双方の関係性について
示唆を与えてくれる
投稿元:
レビューを見る
組織論として読んで面白かった1冊。一番読み込んだ気がする。(~2004大学時代の教科書@202012棚卸)
投稿元:
レビューを見る
ドラッカーを読んでから、読む事をお勧めします。
難解かつ昭和の訳し方かつ書き方の為、文章量が
多い。一枚二段型。
精読ではなく、流し読みの為。
腰をおいて読むとなると学生時代、もしくはある程度、時間をもたないと難しいと思います。
投稿元:
レビューを見る
非常に読みにくいのが正直な感想。
とある大学教授がかみ砕いて説明しているHPがあるため、そこを参照して何とか概要をつかめたような気がする。
内容としては現代にも通ずる組織観が書かれており、含蓄に富む。