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紙の本
だれでも知っていること
2005/05/22 16:50
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジルソンの本は一度は読んでおきたかった。序文に「天才とはこういう人をいうのであろうか、かれの講義を聞くとそれだけ自分の頭が作り変えられるような気がした」と讃えられているのはベルクソンである。ジルソンは「ベルグソンによって聖トマス・アクィナスの哲学的方法に導かれた者は、いまだかつてだれもいない」と書いている。ということは、ジルソンこそベルクソンによってトマス・アクィナスの哲学的方法に導かれた最初の人だということなのだろうか。訳文を読むだけではよく判らないが、そう解する方が面白い。トマス・アクィナスの研究を通じてジルソンは「デカルトの形而上学の諸帰結は聖トマス・アクィナスの形而上学との関係においてのみ意味をなすこと」に気づいた。いきなり佳境に入っていく。
四つの講義(「神とギリシア哲学」「神とキリスト教哲学」「神と近代哲学」「神と現代哲学」)を収めた二百頁に満たない小冊子だけれど濃い。たかだか四頁ほどのスピノザをめぐる叙述が際立っていた。「スピノザの宗教は、哲学だけによって人間の救済に到るにはどうすればよいかという問に対する、形而上学的に百パーセント純粋な解答である。」「スピノザの形而上学的実験は、少なくとも次のような断案の決定的証明となったことは確かである。すなわちそれは、およそいかなる宗教的な神であれ、その真の名が「在る者」でない神は単なる神話にすぎないということである。」いっそ全頁を抜き書きしておきたい。
最終章に出てくる科学者(不可知論者)との対決も迫力がある。「われわれは、この宇宙が確かに神秘的であるとわざわざ科学に教えてもらう必要はない。そんなことは人類の最初からだれでも知っていることである。(略)この宇宙が一部の科学者たちにとって神秘的と思われる真の理由は、「存在」の、つまり形而上学的な問を科学的な問と取り違えて、かれらが形而上学的な問に答えることを科学に望むということである。かれらが科学によって何の答も得られないのは、あたりまえである。そこでかれらはとまどい、宇宙は神秘的であると言うのである。」