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神州日月変 上 (講談社文庫)
神州日月変(上)
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紙の本
上巻だけでは評価がしにくいけれど
2010/04/29 23:16
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
2009年にまさか栗本薫がいなくなるなどということを考えもしなかったのだけれど、なぜかこの数年彼女の作品を読み返したり、読まずにおいてあったものを取りだしたりしていたのは、今から思えば虫の知らせというやつだったのかもしれない。
それで沢山読んでみたのだけれど、そしてどれも面白く読んだのだけれど、実は初期の作品がある種の凛々しさというか緊張感を持った文章で綴られていたことを再認識している。この『神州日月変』もその一つだと思う。
上巻だけでは評価しにくいとは思うが、時代物の雰囲気を漂わせながら、荒唐無稽さも忘れず、文章は清々しい。特に「其之壱 雷公同心登場のこと」「其之弐 美女神隠し横行のこと」のあたりは、往年の時代小説の雰囲気を残しながら、栗本らしい話の運びで一気に読ませてしまう。同心が主人公で、美女が神隠しにあってなんていうくだりは、捕物帳そのものと言ってもいい。そこに魔道のような話も加わって、虚実相見えた話になっていくと、山田風太郎も顔負けといった雰囲気だ。
栗本薫は徐々に(?)饒舌になっていき、それが時にうっとうしく思える(それもまた魅力なのだけれど)こともあるけれど、初期にはその饒舌さが理性で抑えられながら語られているという絶妙なバランスをとった文章として読める。そこがいいのだと思う。