「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
歴史の裏の女たち
2024/01/14 11:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
そういえばカリグラ帝の馬を主人公にした話があったなと再読しました。
十二篇の短編集のひとつ、「カリグラ帝の馬」というタイトルもそのままにインチタートゥス閣下が主人公です。
一列に並ぶ見事なアラブ馬の中で、一頭だけひどく不格好な馬がいた。
がっしりした大型の馬ではあるが首と四本の足が不自然なほど細く、たてがみも貧相なこの馬がインチタートゥスです。
見た目は悪いが利口な馬として売り込まれたインチタートゥスはなぜかカリグラ帝の乗馬用の馬に指定され、専用の大理石造りの厩舎と象牙と黄金でできたまぐさ桶を与えられ、元老院議員の地位まで与えられた。
だがこの利口な馬はカリグラ帝をよく見ていたようで、自分の力がどこまで及ぶかをカリグラ帝が試した結果だという。
そして最終的には四年ばかりの統治で暗殺され、馬もその後を追うことになったのだった。
表題作の「サロメの乳母の話」は、狂気のような愛と憎しみに滅んだサロメの真実を乳母が語るという設定だった。
預言者の首を要求したのは冷静にイスラエル王国のことを考えての行動だったという結論で結んでいるが、ワイルドの描くサロメの方が好みです。
古代ローマからは他に「ネロ皇帝の双子の兄」も登場します。
気の弱い詩と歌が好きなネロと、見た目はそっくりだが気の荒い双子の兄は時折入れ替わっていた。
母を殺し、元妻を殺させ、さらにキリスト教徒を弾圧したのも自分だと双子の兄は語る。
ネロの二面性を双子ということにしたかったのかもしれないが、多重人格の設定の方が面白かったかも。
「貞女の言い分」に登場するオデュッセウスの妻ペネロペ、ベアトリーチェを永遠の女性として崇拝する夫を持ってしまった「ダンテの妻の嘆き」、息子がどんなにすばらしい聖人となってもだからこそ心を痛めて心配せずにはいられない母親の姿を描いた「聖フランチェスコの母」や「キリストの弟」とタイプは違っても英雄や偉人と呼ばれる人物の近くにいた女性たちに焦点を当てている。
歴史的な英雄でも家族や近くにいる人にとってはただの人間なのかもしれないと思いました。
ダンテの愚痴を言う妻が隣の家の奥様くらい身近にかんじられたのが、歴史ものって雰囲気とちょっと違って面白かった。
終わりの「饗宴・地獄篇」ではクレオパトラやビザンチン帝国皇后テオドラ、マリー・アントワネットにトロイのヘレン、悪妻で名高いソクラテス夫人クサンチッペに人民服姿の江青女史が集まっての座談会という設定だった。
読んで面白くはあるけれど印象に残る話ではなかった。