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紙の本
ハードSFと冒険SFの適度なブレンド
2001/07/13 02:52
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投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
突如ガスの尾を噴き出して彗星化し、地球への衝突コースに乗った小惑星イカルス。これを爆破するため派遣された宇宙飛行士ナイジェルは、小惑星イカルスが実は太古に打ち捨てられた宇宙船であることを発見する。やがてイカルスが発した信号を追って、異星の探査船が太陽系を訪れる。その影響から、太古から月面に打ち捨てられていた別の異星の宇宙船が作動を開始、さらに地球の北米森林地帯では、地中深くで謎の核融合爆発が起きる……。
と粗筋を書いてみると、まるでスペースオペラか冒険SFかという感じだが、話はそのようには進まない。主人公ナイジェルの心の動きを中心に据え、あくまでもハードSFのフレームをはみ出すことなく抑えた筆致でストーリーは地味に進行する。
やがて明らかになるこの銀河系の真の姿や、それと地球とのかかわり、そして登場するガジェット類(なんとエネルギーバリアだ)は完全にスペースオペラ世界のそれだが、思索的な要素を充実させることで、非常に深みのある重厚な世界観を構築することに成功している。
無味乾燥になりがちなハードSFと、荒唐無稽になりがちな冒険SFの、ほどよいブレンドである。「こういうのを読みたかったんだ〜」と狂喜乱舞する人もいるのではないだろうか。
さて、この作品は、生物文明と機械文明の相克を描いたシリーズの第1作目である。このシリーズ自体は、いわゆるサイバーパンクなどの時代を経てシリーズの枠組み自体がナンセンスになったりしてパッとしない結果になってしまっている。しかしシリーズの個々の作品にはすばらしいものもある。
探査船ランサー号の死の世界を経巡る探査行と、機械文明による地球への最初の侵攻を描く、鬱々とした雰囲気に包まれ、宇宙の闇の深さが印象的なシリーズ2作目『星々の海をこえて』。はるか未来の銀河中枢域の惑星、ハイテク化された人類が忘れがたい印象を残す3作目『大いなる天上の河』は、それぞれ異なる魅力に満ち溢れた傑作である。いずれも絶版のようだが、なにかの機会に出会うことがあったらのがさず確保しておくことをおすすめする。