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紙の本
転生したら文豪だった件
2022/11/29 21:59
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
作家のジイドがフランス政府からの委託で、コンゴ植民地を視察に行ってきた。コンゴ川を上流に遡っていくのだが、各地の集落を訪問するのが目的なので時々船にも乗るが、ほぼ陸路中心。政府お抱えの旅程なので、政府出先機関や法人、各集落には話が通してあって、現地人ガイドが付き、資金も人夫の数も潤沢で、ジイド自身は輿に乗っての移動するのであって、冒険旅行的なところはまったくない。そんな道中で現地企業の現地人搾取や、政府機関の怠慢、不正といったものを、責務どおりに、一切の忖度なしで、告発していく。そこは面目躍如なところで、現地民が勤勉に働くほどに貧しくなっていくという搾取の構造まで明らかにしてしまう。
それが現代においては資料的なおもしろさはあっても、新鮮さという点では、現地の自然や風俗についても、最近のTVドキュメンタリーで見慣れているし、コンラッド「闇の奥」という先行作品もジイドはリスペクトしている。
ずっと一緒に同行しているらしい男の名前がちょいちょい出てくるのだが、どういう人物だか分からない。解説まで読むと、ようやくそれがジイドの愛人(美少年)だということらしいと分かった。言ってみればジイドの生の姿が、彼の存在を通して伝わってくる。そういえば各部落での歓迎の踊りや、宴会などにおいて、毎度その土地の美少女、美少年をジイドははべらせて悦に入ってるところもあり、え、なになに、そういうことだったの、ふうむ、とよく分からないながらも感心したりするというか、どう感心していいか分からないというか。
つまり当時のヨーロッパ人として破格な人物であったわけだが、むしろ21世紀の現代において考えられる公正さや人権、人間性の解放といった感覚を持っていたということでもある。われわれにとってその価値観に違和感が無いとしたら、すごいというのか、わざわざ読む甲斐が少ないというのか、そこはやっぱりその時代における価値を認めておくべきかとも思うのでした。