紙の本
現在の重要なトピックが登場しないが、パレスチナ問題の解決を願う研究者による学問的に誠実な解説書
2004/03/28 22:16
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投稿者:ほいほい0080 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本を代表する中東問題の研究者・立山良司防衛大学校教授による、出版当時としては、イスラエル、パレスチナ両方の主張をバランス良く載せた優れた解説書であった。しかし如何せん1989年の出版であり、記述がかなり古くなってしまっている。本書だけでは、現在のイスラエル・パレスチナ問題の状況を知るのは困難である。1989年の出版であるから、1991年の湾岸戦争とその影響、オスロ合意とその破綻、第二次インティファーダの発生とシャロン政権成立による泥沼の状況等、現在の重要なトピックが登場しない。
バランス良く対立する両者の主張を載せたという本書の特色から、現在では、不適切になってしまう記述もある。例えば、パレスチナ難民の発生原因については、当時は必ずしも確定していなかったため、イスラエル軍によって追放されたというパレスチナ側の主張とパレスチナ人が自発的に立ち去ったというイスラエル側の主張とが並記されている。しかし、現在では、この問題は学問的にはほぼ決着がつきつつある。大多数のパレスチナ難民が直接的・間接的なイスラエル軍の攻撃により追放されたというのが主流である(例えば,Ritchie Ovendale, The Origins of the Arab-Israeli Wars (Origins of Modern Wars), Addison-Wesley; ISBN: 0582368952; 3rd Edition (1999/09/30))。これはイスラエル側の軍事資料や諜報活動の資料からもほぼ立証されたといえる段階にある(Benny Morris, The Birth of the Palestinian Refugee Problem Revisited (Cambridge Middle East Studies), Cambridge Univ. Press; ISBN: 0521009677 ; 2nd Edition (2004/01/31)) 。
以上のような問題にもかかわらず、パレスチナ問題の解決を願う研究者が、当時の知見により学問的に誠実に記述した解説書として、お勧めしたい。
紙の本
出版時点では正しかった両論併記
2022/01/31 23:16
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
出版当時までのパレスチナ問題の経緯を
イスラエル側とパレスチナ側の両論併記を
旨に記述した概説書です。
当時から40年以上たった現在も問題解決の
いとぐちさえ見いだせない状態であることに
やるせなさを覚えます。
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[ 内容 ]
イスラエル占領地ヨルダン川西岸とガザ地区で始まった大衆峰起(インティファーダ)は、PLOに画期的な方針変更を打ち出させる状況をつくり、イスラエルには一部ながら、PLOとの対話を求める公然たる声を生み出した。
さらに、ユダヤ対アラブの構図から、当事者間の問題解決へと変わりつつある。
イスラエルとパレスチナ双方で現地調査にあたった著者は、両民族の長い受難の歴史の終わりを願い、和平への接点の可能性をさぐる。
[ 目次 ]
第1章 パレスチナ問題の発生
第2章 続く戦火とパレスチナ民族主義の高まり
第3章 遠い和平への道
第4章 緊張のイスラエル占領地
第5章 イスラエルのパレスチナ人
第6章 エルサレムの光と影
第7章 岐路に立つイスラエル
第8章 PLOの政治学
エピローグ―和平への展望
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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1989年の発行なので現在のイスラエル・パレスチナを知ることは出来ないが、両民族の対立の構図がバランスよく描かれている。流浪の民だったユダヤ人が、パレスチナ人という新たな流浪の民を生み出したのは歴史の皮肉か。
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このテーマは色々と本が出てますが、最近出版されたやつになればなるほど長い歴史を包括的に扱う必要があるためか、中東戦争の具体的な背景や、裏で手を引いた欧米諸国の思惑なんかがおおざっぱになるので、これぐらいの古さの本の方が面白かったりします。
この本が出版された時点で当事者であった人々の多くは既に死んでいるか現役を引退してるかしてますが、イスラエルとパレスチナが抱えてきた問題を整理するには好い本だと思います。
しかし、この地域の歴史を読むにつれ、やっぱり悪いのはイギリスじゃねぇかあのヤロウ、と思うのは自分だけでしょうかね。欧米諸国、自分が蒔いた種でどれだけの人が苦しみ、死んでいったのかを、もうちょい学ぶべきではないかと思うのですが。
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1989年に初版と古い本であるが、パレスチナ側、イスラエル側いずれかに偏ることなく、淡々と歴史的な背景が列挙されており、その問題点が分かりやすい。
この地区の問題の根深さを理解するとともに、解決することの難しさを痛感する。
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196〜197ページに1989年段階における関係各国の主張の対照表あり。イスラエル国籍のパレスチナ人のエピソードが印象に残った。
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(「BOOK」データベースより)amazon
イスラエル占領地ヨルダン川西岸とガザ地区で始まった大衆峰起(インティファーダ)は、PLOに画期的な方針変更を打ち出させる状況をつくり、イスラエルには一部ながら、PLOとの対話を求める公然たる声を生み出した。さらに、ユダヤ対アラブの構図から、当事者間の問題解決へと変わりつつある。イスラエルとパレスチナ双方で現地調査にあたった著者は、両民族の長い受難の歴史の終わりを願い、和平への接点の可能性をさぐる。
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ステレオタイプではいかん、と誰かに言われたか、言われなかったか?とにかく、知ったかぶりはいかん。ご存知「イスラエルとガザ自治区との爆撃戦」がいまひとつわからなくて。
注意して!「イスラエル、ガザへの攻撃」とは書いてないよ。本一つ読んで何わかろう、だが、読まないよりはいい。結果には原因がある。
わたしはこれを読んだおかげで、今朝の新聞の世界情勢欄が一部わかるようになったものね。知識を得て自分で考える、これ当たり前ね。
一部というところがわたしの弱いところだけれども、さいわい日本にはたくさんの素人にわかりやすい指南書(?)がある。しかも新書などは手に入りやすい。もちろんなんだろう?というのもあるから、なんだろう?ってのは捨てる。
「なんだろう?」という本の中には専門過ぎてわたしにはわからないものもあるから、書くひとはこころして書いて欲しい。いや、編集者や出版社さん、売れる新書にしたかったら、方向性ではなく事実をわかりやすくがいい。
これはほんとうは映像のマスコミにいいたいんだ。センセーション的ではなく事実をわかりやすく報道して欲しい。という注文が無理かもしれない。受けてのレベルがあるし(笑)
この新書版でパレスチナとイスラエル関係の基礎の基礎がわかった。これは1989年に書かれたものだから、その後の事実はインターネットなどで調べることにする。
常に勉強だ(苦笑)。
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古い年代に書かれた本で現在とは状況も異なるであろうが、イスラエル側、パレスチナ側どちらかの視点ではなく、平等に事実を淡々と書かれているのが良い。
世界を正しく理解認識するにはテレビの偏向報道を見るより、この本のような事実を淡々と書かれた本を読むのが良い。
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本書は1989年に初版が出ており、30年以上が経過しているが、パレスチナ問題は基本的には解決していない点では今も変わらない。寧ろ今年はイスラエルがパレスチナからのミサイル攻撃に対する反撃を徹底的に実施し、大規模な地上軍まで展開するなど、大きな動きが起こっている点で、改めて問題の根の深さをまざまざと見せつけられている。毎回パレスチナ問題に関する書籍を読むたびに、何とも言えない脱力感に襲われる。頭痛はいつも以上に酷くなり、最悪吐き気をもよおす。それを読んだ自分、知った自分が何も出来ないことへのもどかしさ、宗教や歴史に結びつけては互いに正当性を主張する人々の姿、仲介という綺麗事に仕立て上げて、結局は自分たちの利益優先で画策する第三者。
ニュースで悲惨な映像だけを流し見るだけで何も感じなくなってきた自分が、きっと恐らく私1人が考えたところで何も変わらないから、何も変えられないし、この先何十年も何も変わらないだろうという諦めの気持ちを抱いてしまっていることに気付く。だがそれも受け入れ難いから、頭痛は当面続くのだろう。
本書にはイスラエルとパレスチナの今に至る問題の経緯、それぞれの主張と第三国の関わり合いかた、2つの国と地域に存在する政党の立ち位置など解りやすく記載されている。こうした書籍は沢山あるが、改めて何度も読み返す中の一冊として、比較的平易な言葉で描かれているので理解が進む。特にどちらの主張に一方的に肩入れする様な感情論的な内容も無いので、読んだ後に自分自身で考えてくれ、という問い掛けになっている様に感じる。そうなのだ。この問題については読者自身が考えなければならない。最近はYouTubeやテレビから入ってくる映像など表面的な出来事を「悲惨な可哀想なシーン」としてだけ捉えて、一方向からの情報のみで感情に流されて片付けてしまうことが多過ぎる。どちらが一方的に悪で、どちらかを救わなければならない。国際情勢はそんなに簡単なものではなく、根深い歴史の畝りと宗教観と人間が持つ欲望と、全てを掛け合わせた結果として捉えなければ、この状況を解決や良い方向に結びつける事はできない。
こうしている間にも恐らく支援物資も届かず飢えている子供たちがいるし、公園のベンチに置き忘れられた荷物にさえ怯える大人達がいる。安心平穏な暮らしができている自分とは違う日常。中々自分ごととして捉えるのは難しいのは仕方ないが、自分にも何かできるのではないか、そう考えてみる気持ちが少しでもあるなら、先ずはこうした書籍から学び始めると良い。知らなければただやり過ごしてしまう生活の中に、知識と問題解決に自分から参加するという意識を芽生えさせてくれるかもしれない。