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著者 川瀬 敏郎 (著)
花会記 四季の心とかたち
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評価内訳
2011/01/04 18:56
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花人・川瀬敏郎に「花会記」なる著書のあることを知った。1990年の出版である。 かねて茶に茶会記、花に立花図がありながら、庭に開花図なきを嘆いている私に「花会記」の存在は強い衝撃だった。 早速入手したいと思ったが、定価6500円では気軽に買えない。調べて静岡市立図書館にあることを知り、伊東市図書館を通じて貸出しを申し込んだ。それが3月25日。そして入手したのが5月6日。今時’役所仕事’だってもっと早いぞ。 まずは川瀬敏郎のプロフィール ~~~~~~川瀬 敏郎 ホームページより~~~~~~ 花人。1948年京都に生まれる。幼少の頃より池坊の花を学ぶ。日本大学芸術学部を卒業後、パリ大学へ留学。演劇、映画を学ぶかたわらヨーロッパ各地を巡る。帰国後、日本の原初のいけばなである「立花(たてはな)」と、千利休により大成された「なげいれ」の形式にもとづき、花をいけることを通して、日本の「肖像」を描くという独自の創作活動を展開。 著書に「花会記」「川瀬敏郎 私の花」「Inspired Flower Arrangements」「今様花伝書」「四季の花手帖Ⅰ・Ⅱ」などがある。 ~~~~~~~~~~~~ このプロフィールには書かれていないが、彼は京都六角堂(池坊発祥の地)の門前の花屋に生まれ、池坊の申し子のような履歴を持つ。そして花人として流派を離れての活動を続けている。 川瀬は花を、春夏秋冬四季折々に移ろいゆく自然の精華としての「花」を謳い上げる「花会」を催してこそ、ほんとうに花の心にふれることができるという。 一座を建立する「花会」はその催される「場」の建築や室礼、庭園、花器や掛け物、参集する人々やその衣装、はては天候にいたるまでを取り込んでそのすべてが総合されるところに「花」の美が体現されるという。 上の写真がその光景である。ここは京都妙心寺で開かれた「紅葉の会」の花会である。和服姿の名流夫人6人が座を囲んでいる。寺のあちこちを川瀬の活けた花が飾る。 川瀬はこういう花会を選ばれた「場」何ヶ所かで何年か行っていた。ある時白洲正子が招かれ絶賛して書いたことから川瀬の名が大きく知られた。 しかし現在は行っていないという。「お金をとらなかったからやめられた。」と川瀬はいう。それはそうであろう。しかるべき場所で、これだけの花を活け、これだけの人を集めて花会を催してどれだけの費用がかかるものか。それを金をとらずに続けられるわけがないであろう。川瀬の美学に過ぎる。 「花会記」はその花会の記録である。 写真があって、川瀬の「覚え書」が付く。 写真は素晴らしい。カメラは大森忠。出版は淡交社。A4よりやや大きいサイズの本である。 そして「覚え書」は解説である。川瀬の文章は辺見庸、藤原新也ばりの美文である。思いのたけを語る。 日時、客名、天候、メニューなどのデータはない。 私はこの「覚え書」に川瀬の「花会記」についての不満を持った。 批評家も編集者もいない場での詠嘆を綴る美文はいずれ退廃する。 もっとデータを残すべきでないか。 茶会記の研ぎ澄まされた簡素な、しかし項目をすべてはずさない記述は、厳しい茶の修行の1つである。そしてその事実だけの記録が遥か後代の我々の心に届く。 流派を持たず、金をとらずに花会を開く川瀬の美学は事実の追求においていま一つ洗練のための鍛錬の機会を欠くのではないか。 川瀬は池坊の嫡流として立花からなげ入れまでをこなし、その間に位置する「砂の物」にも心を寄せる。 この写真は立花としての「牡丹」である。現代華壇一方の雄である假屋崎省吾も毎年目黒雅叙園の大舞台で花会をもつが、立花において川瀬に及ばない。 これは沼津大中寺寺における「野朝顔」で、まさになげ入れの極であろう。 当然鈴木基一の「朝顔屏風図」(NYメトロポリタン美術館蔵)を意識したと思う。先日の「琳派展」カタログからスキャンした写真を載せる。
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