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紙の本
種田山頭火昭和12年の日記
2001/03/18 23:33
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投稿者:格 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和12年の元旦から12月31日までの日記。それにしてもこまめにつけたものである。抜けている日はほとんどない。もっとも、数行から一行という日もあるが…。このころには、もう、山頭火は行乞の旅にでる体力はなくなってきた、ということで、一年中、一箇所にとどまって、酒と俳句と読書だけの人生を送る。わずかに一度だけ、九州へ短い旅をするにすぎない。
そして、まさに一年中、酒との闘い。深い反省とともに、もう、飲むまいといつも決めるのだが、何日かすれば、寂しさに耐えられず、結局飲み、そして、底知れず飲んで正体を失う。この繰り返しが一年中続いていくのである。食べる物はほとんど米だけ、という食生活を送りながら酒だけは欠かせない。『へべれけ人生からほろ酔い人生へ』なんてことまで言ってみるのだが、すぐにまた、元へ戻ってしまう。
孤独な人生かと思いきや、(本人は孤独と思い込んでいるのだが)、実際にはそうでもなく、しょっちゅう、友人たちが訪ねてくるし、なんだかんだと食べる物をご馳走してくれる。もっとも飢えに近い状態の時も多い様だ。そして、かなりの頻度で近くの湯田温泉にでかけ、朝酒朝湯をして帰ってくる。金が手に入るとすぐに借金を全部返したりとか生活設計などというものはまったくない。
一度だけ『人間を再認識すべく市井の中へ飛び込む覚悟を固める』と言って働き始めるのだが、2日目には『嫌な家庭だ』となり、5日目には、『主人のワカラナサ加減にウンザリする。夕方たうとうカンシャクバクハツ、サヨナラをする』となる。さすがにこのあと、2週間程度、日記の記述もないのだが、そのあとまた元の暮しに戻っていく。
『ほんたうの句を作れ、山頭火の句を作れ。人間の真実をぶちまけて人間を詠へ、山頭火を詠へ』という心の叫びが随所に書き込まれ、泣かせる。しかしながら、この文にもでてくるように、このころすでに確立されつつあったのか、山頭火というブランドを意識していたのではないかと思わせる部分もある。実際には、どうだったのだろうか。それだけの意識をさせるものがあったのなら、こんな貧乏をすることもなかったのかもしれないのだが。