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読割 50
ガウディの夏 (角川文庫)
五木寛之自選文庫〈小説シリーズ〉 ガウディの夏 THE SUMMER FOR GAUDI
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紙の本
プライバシーや情報というものについて
2010/04/29 23:36
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こうじ・1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
芸能界や広告業界の人間模様とその裏側を描くストーリー展開。
表題からアーティスティックなものを想像していたが、読み進めると奥深いストーリーだった。
本書のなかで情報の持つ力を力強く描いている。
その辺の部分は、服部真澄 著「エクサバイト」の世界観に近いものを感じる。
よりダーティに描いているかもしれない。
本書では悪役の岸矢吾郎が、ガウディと人間の妄想について力強く語るシーンが
印象的に心に響きます。
紙の本
それも終わりの無い悪夢
2015/06/27 17:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
広告業界のやり手らしい主人公が、仕事で関わりのあった女優たちにひたすらもてまくる話で、時代を感じるというか、同時代であっても馬鹿馬鹿しいとしか言えない話だろうと思う。で、ガウディがどこに出て来るかと言うと、
業界で別の名の知られた男が、芸能人や政財界の人間のスキャンダル情報を集めに集めてデータベース化し、それを元に人々を思うままに動かしているフィクサー的人物になっているという。その圧迫から逃れようとする女性達が、主人公のところに救いを求めてくるという構成なのだが、どの辺がガウディに関係するかと言うと、
オーウェル「1984」ばりの恐怖支配による王国を築こうとしているその男から、主人公はガウディをデーマにしたドキュメンタリー映画を撮らないかと持ちかけられる。つまり二人は、ガウディの建築に心を抉られた者同士という共通項を持っていたわけだが、みずからの王国を未完の尖塔サグラダ・ファミリアに例える男に共感は出来ない。かといって、かつての夢を捨てて社会の俗事に身を投じた上は、ガウディの記憶のために戦うなんていまさら出来やしない。両陣営から秋波を送られる現在の中途半端な状況が、実は一番居心地がよかったりする。
CMのロケでバルセロナへ行く1章もあって、ガウディのイメージがふんだんに描かれるのかと思ったが、結局そこでもタレントとのアバンチュールが待っている。
恐怖の王国自体は、コンピュータ技術ありきのものだが、それはオーウェルの世界のように国家の独占物ではなく、そこそこのコストで誰でも構築できるものだ。ゆえに王国は国家も含めて多重化し、世界の裏面で激闘が交わされることになるのではないか、そういう未来を予兆していると言えるだろう。冷戦も最終戦争も現実味を失った世界では、情報戦争こそが生活を脅かすことになる。
だが現実に訪れたのは、政府は情報流出を繰り返し、人々は自らのプライバシーを垂れ流して炎上する世界だった。TVはますます神格化し、ネット上では些細な紛争が際限なく繰り返されて、個人はコミュニティの中で疲弊して力を失っていく。この作品で語られるような大きな恐怖の生まれた世界でも、いい思いをする人間は変わらず存在するのだが、そこだけは普遍的な真実なのかもしれない。それにしてもやっぱり広告業界の男はモテてるんだろうか。いいなあ、広告業界。