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紙の本
不思議なタイトルはマザー・グースから。『無実はさいなむ』『動く指』とともに女史お気に入りのエレガントな作品には、ポアロもミス・マープルも登場はしない。
2002/01/20 20:38
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投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサ・クリスティーのミステリーはとてもリラックスして読める。それが今だに多くの読者に読み継がれていることの大きな理由のひとつではないかと思う。「殺人にエレガンスがある」と指摘していたのは誰だったか。確かにその通りだと感ずる。これでもかこれでもかと読み手に大きな負荷をかけるような情報の洪水はなく、犯人は動機なき猟奇殺人に走る狂人ではない。深層意識から潜在意識までさかのぼらなくても、しかるべき動機を抱えて暮らしていたことが分かる。だから、事情さえ変われば、私のなかにも人を殺す理由は出てくるのだろうと犯人に対して共感さえ持てる場合がほとんど。
クラシックなミステリーだから、ジェンダー、階級、職業、性格などが類型化されており、その意味で強烈な個性というものは描いていないという指摘もできるかと思う。個人がまだ共同体を基盤にして成り立っていた社会にしっかり結びつかれていた時代の、その人間と社会を書きながら、そこに生じた事件を対象としていることに、ある種の安心感がある。
かといって決して退屈だというのではない。そこがすごい。理解を妨げるような突っかかりなしにすいすい読み進めているうちに「ええっ、そんな!」「その手があったか」と、どんでん返しに驚かされる。正に、エレガントな淑女の術中にハメられたという印象。美しいバラにはトゲがあるといった趣きである。
この本も、そういったアガサの本領が十二分に発揮された魅力あるミステリーである。自伝によれば、本人お気に入りの1冊ということで、全体に漂う優雅な雰囲気が、もしかしたら満足の後ろ盾ではないかと推察している。
何気ない出だしから惹きつけられてしまうのは、結婚を意識した恋人どうしの話から始まるからだろう。多くの男女にとって、最も普遍的な人生の関心事である。エジプトで出会った共に外交関係の仕事に従事する男女。しかし、男性が新しい任地に赴くのでしばらく結婚はお預けとなる。女性の方には、家庭のことをあまり語らないというミステリアスな部分がある。
それがすぐに赴任予定の2年が過ぎる。すると、大富豪であった彼女の祖父が殺され、物語の語り手たる主人公の男性が、ロンドン警視庁の副総監という重責にある父とともに、内偵として婚約者の屋敷に訪れるという具合に展開していく。その屋敷が「ねじれた家」である。どういう設計がなされたのか、とにかく外観がねじれているという表現しかできないような百姓家風の造りは3つの独立したスペースに分かれ、3世帯の血のつながった家族が同居していたのである。
犯行は、どうやら内部の人間によって行われたらしい。アガサお得意の限られた空間内部での殺人が、あれこれと検証されていく。その外観に似つかわしく、婚約者の女性の家族たちは、それぞれにねじれた性格、ねじれた暮らしをしている。ねじれが最もひどかった人物が犯人…という流れになっているようだが、真相に至る道もねじれている。事件はまた、起きてしまったことに加えて、新たなものも次々に起きていく。けりのつけ方も、いかにもレディー然としていると感心する。
紙の本
ねじれた家
2020/10/15 20:29
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
クリスティー本人がお気に入りの作品に挙げていたそうで期待して読みました。確かに犯人は当てられないけれども、ひどく後味が悪かったです・・・。