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皮膚−自我
エディプス段階以前の原幻想に視線をこらし、音や温度、嗅い、味覚、苦痛といった諸感覚の外被の生成が、いかに個体にとって重大な意味をもつか。その構造、機能、病像と超出の心的過...
皮膚−自我
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商品説明
エディプス段階以前の原幻想に視線をこらし、音や温度、嗅い、味覚、苦痛といった諸感覚の外被の生成が、いかに個体にとって重大な意味をもつか。その構造、機能、病像と超出の心的過程を解明する精神分析学の画期的論考。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ディディエ・アンジュー
- 略歴
- 〈アンジュー〉1923年パリの近郊の町ムラン生まれ。精神分析学者。64年パリ大学ナンテール校心理学教授に就任、現在は同校の名誉教授。
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私は本書を読んで驚嘆した
2001/02/22 21:04
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず、本書で紹介されているマルシュアースの神話。
アテーナーはシカの骨から管が二本あるフルートを作り、神々の響宴で演奏する。神々が皆その音色にうっとりとするなかで、ヘーラーとアプロディーテーだけは手で顔を隠しこっそりと笑っている。不思議に思ったアテーナーがフルートを吹く自分の姿をプリュギアの森の川面に映してみると、頬をふくらませ顔を充血させたその様はひどくグロテスクだった。アテーナーは、拾った者に呪いあれ、と叫びフルートを投げ捨てる。
やがてマルシュアースがやってきてこのフルートにけつまづく。唇にあてようとすると、フルートはひとりでに鳴り出す。こうしてマルシュアースは、アッティスを悼むキュベレをフルートの音で慰めながら、その供としてプリュギア中をめぐり歩くようになる。その音に魅せられた農民たちは、アポローンの竪琴でさえこれほどの演奏はできまいといいはやす。
怒ったアポローンは、勝者が敗者に意のままの罰を与えることができる技くらべを提案し、傲慢なマルシュアースはこれに応じる。優劣のつけがたい技くらべは、アポローンが、自分のように楽器をさまさまに持ち演奏しながら歌ってみよ、と挑戦を投げかけたことで決着がつく。
マルシュアースはアポローンによって生きながら全身の皮をはがれ、その皮はマツの木に吊され、歴史時代にいたってもプリュギアの城塞都市セレーネーのふもと、マルシュアース川が流れ出す洞窟の中に保存されていた。この皮は、川の流れが奏でる音楽やプリュギア人の歌声を聞き分けることができた。(82-9頁)
──ディディエ・アンジューのコメント。
《マルシュアースの神話の中で、他のギリシア神に比して注目すべきと思われるのは、まず第一に音響の外被(音楽によってもたらされる)が、触覚的な外被(皮膚によってもたらされる)へと移り変わってゆく点、第二には、不吉な運命(はがれた皮に表現されている)が幸運をもたらす運命に回帰していく(保存されたこの皮は、マルシュアースの再生と国内における生活の維持や豊穰の復活を守る)点である。》
以下、アンジューは、「もし、思考が脳と同じほどに皮膚に関わるものであったら? そうして「皮膚−自我」と定義される「自我」が外被の構造を持つとすれば?」という自ら設定した問いに答えていく。数々の魅力的なアイデアと新鮮な概念に満ちた書。私は本書を読んで驚嘆した。