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著者 町田 甲一 (著)
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評価内訳
2005/05/22 09:36
投稿元:
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和辻先生の文章を想い浮かべながら、その反面、古い仏像をそのように(文学的、哲学的に)観照するものなのか、という疑問を早くも抱きはじめていた。 美術史家の町田氏が、亀井勝一郎や和辻哲郎たちの奈良古寺の著名な本を「文学的思想的自画像」として評価しながらも、その文学趣味とは一線を画し、純粋な古寺・仏鑑賞の手引きとして著した本。 最初に読んだ時は、知らない言葉ばかりで何がなんだかわかりませんでした。今読んでも全部がわかるわけでもありません。 でも、これを読んで知った色々な「名前」が、奈良に行く楽しみを豊かにしてくれたことは確かです。 「名前を知る」ことは、沢山のレイヤーにピントを合わせる手助けをしれくれます。当たり前かもしれませんが、漠然とした「感じ」が整理されていくのに結構感動したものです。
2005/11/19 16:05
情緒的、装飾的文学表現を否定し、学術的分野からの芸術性を説きながらも、単なる学術書ではなく、読み物としても充分楽しめる。
2010/04/10 01:01
奈良の古寺を巡る書籍といえば、和辻哲郎さんの「古寺巡礼」。云わば古典のこの作品に駄目だしもしてしまう、骨太な本です。 美術史の専門家である著者が、美術史の「正しい」仏像の見方で、東大寺・法隆寺・薬師寺・唐招提寺などを巡ります。単なる観光ガイド的な本ではなく、学術的な情報が満載で(といって読みにくい訳ではなく)、仏像めぐりのお供にも最適だと思います。
2021/03/18 23:13
日本古代美術史、とりわけ仏像の研究を専門とする著者が、大和の古寺を訪れ、その建築や仏像について美術史的な解説をおこなっている本です。 奈良の古寺の案内書には、和辻哲郎の『古寺巡礼』や亀井勝一郎の『大和古寺風物詩誌』などが多くの読者に親しまれており、もうすこし時代を下って白洲正子の『私の古寺巡礼』、さらに五木寛之の『百寺巡礼』がありますが、本書はそうした文学的な修辞を駆使した古寺・仏像案内書とは一線を画して、美術史的な解説をおこなっています。「まえがき」で著者は、和辻や亀井の著作をあげて、「古美術を鑑賞するに当って、そのような強い文学的、思想的先入観をもって見るべきだ、というように受け取られると、……いささかの不安、心配、危惧を、―美術史家の私としては―おさえ難いのである」と述べています。本論でも、しばしば和辻、亀井らの文章に対する批判がおこなわれており、さらに実証性を欠く梅原猛の独自説も厳しくしりぞけるなど、学問的に厳格な態度がつらぬかれているのが目を引きます。 そのぶん、文章に文学的なうるおいが感じられないということもできるのでしょうが、和辻のような古典的な美観にもとづいてあまり高い評価があたえられなかった唐招提寺講堂の仏像について、「反古典的ないし非古典的の美術の本質」を認めているところなどには、美術史的な観点からその美しさを積極的に評価しており、読者がその美をあじわうための手引きになるように思います。
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