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紙の本
資料の中から浮かび上がる紫式部
2019/10/13 23:27
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
何度読んでも杉本苑子の描く人物像には感嘆させられる。
自らも女流作家として数々の作品を生み出した彼女ならではの選択といえるのが、今回の主人公紫式部だ。
少ない資料から彼女の生い立ち、親戚関係、実家の雰囲気までもくっきり浮かび上がらせた手腕はいつもながら大したもの。さらに冒頭にある盗賊との出会いを据えたことで、当時の世相だけでなく、彼女の知らなかった平安朝の暗部ともいうべき藤原摂関家の陰謀の数々を知らしめる筋運びも、この時代に馴染みのない読者もスムーズに物語に入っていける工夫をこらしている。
数々のエピソードは、貴族の日記や当時の歴史物語『大鏡』が出典となっており、史実の裏付けもしっかりしていながら、ひょっとして作者の創造かとも思われる面白さだ。
上巻は作家として立つまでの式部の人格形成に関わる時代を丁寧に描いており、ここをしっかり書き込むことで、作家となった後の彼女の物の考え方がいちいち納得できる。
作者の式部もやはり大した作家だと見直す思いしきりである。