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紙の本
騙し方は弱いけど、面白いミッシング・リンクもの
2001/06/17 03:14
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投稿者:松谷嘉平 - この投稿者のレビュー一覧を見る
60年代にトラディショナルな・フーダニットの健在振りを示した作家による1967年の作品。
▼とある高校周辺のコミュニティでおこる連続殺人。犯人が、その都度現場に残していったと思われる棺の絵が描かれたカード。容疑者と疑われた新聞記者ジェレミーは、かつての恋人で教師のヘレンとともに事件の謎に迫る。
クリスティの『ABC殺人事件』などを初めとするミッシング・リンク・テーマの系譜につらなる作品。五部構成でそれぞれの冒頭には「殺人者の日記」が付される。
以前読んだ『兄の殺人者』もそうだけれど、形式的には「巻き込まれがたサスペンス」。人生における問題を抱えたジェレミーがヘレンとのロマンスを通して「変化」していくという教養小説的な部分は、基本的にハッピーエンドに終わるということでは、〈逆さまのパトリック・クエンティン〉とも言うべきでしょうか。
同時に「連続殺人」という事件の性質上、必然的にサスペンスが醸し出され、読み応えのあるストーリーを織り成す。
そして、その奥に犯人の意外性を仕掛けたパズラーが骨格としてあるところが、この作家の特質。この点はトリッキーというよりも、ミスディレクションを中心にしたモダン・ディテクティブ。
ただ、訳出当時の「このミス」で法月綸太郎が世評の高かった本作よりも『兄の殺人者』を推していた理由は両作を読んでみると良く判りますね。
本作での誤導のしかたというのは、ある意味で良くあるパターン。私も前者には騙されましたが、今回は犯人を早いうちに指摘できました。とは言っても、犯人を特定する物証をきちんと置いているので、その点は技術的に高い。