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紙の本
仮面舞踏会 伊集院大介の帰還 (講談社ノベルス)
著者 栗本 薫 (著)
パソコン通信が生んだ幻のアイドル〈姫〉の正体をめぐり通信仲間は、大騒ぎを繰り拡げていた。その〈姫〉が姿を現すという約束の日、待ち合わせの場所で一人の女子大生が惨殺される。...
仮面舞踏会 伊集院大介の帰還 (講談社ノベルス)
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商品説明
パソコン通信が生んだ幻のアイドル〈姫〉の正体をめぐり通信仲間は、大騒ぎを繰り拡げていた。その〈姫〉が姿を現すという約束の日、待ち合わせの場所で一人の女子大生が惨殺される。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
つい文句を書きならべてしまったが、十分読み応えのある伊集院大介シリーズの1冊
2009/02/15 15:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
単行本で発表されたのが1995年。このノベルス版が1997年。さらに文庫になったのが1998年となっているので、すでに10年以上前の作品ということになる。この当時は、ハードカバーで出して、ノベルスにして、さらに文庫にして、何度も体裁を変えて売っていたようだ。それだけ需要があったということなのか。
閑話休題。
10年以上も前の作品なので、現在のインターネット環境とはずいぶん異なる点もあるし、著者がフィクションであることを明示しようとして当時でも普通ではないような用語などが並んでいるので、多少読みにくくしているところはある。それに何よりチャットを縦書きで読むというのが不自然ではある。今ならさしづめケータイ小説として発表され、横書き本として出版されるところなのだろうけれど、これも10年以上前には誰も思いつかなかったし、そんな技術もなかったということか。
しかしここで描かれている仮想空間の人間関係は、今でも十分通用するものであり、栗本薫の先見の明があったとしか言いようがない。そして10数年たった今も、ここで描かれたコミュニケーションのありようは何も変わっていないし、問題は解決されないまま、どんどん現実世界の問題とリンクし、浸食されていっているように思われてならない。
そんな意味でこの本は、伊集院大介シリーズとしても重要な(『天狼星』シリーズ以後、久しぶりに日本に、東京に帰ってきた伊集院大介の事件簿である)1冊であると同時に、今の私たちの世の中の問題をあぶりだしている1冊であるとも言える。
惜しむらくは、事件の背景を語るところで(ネタバレになるので多くを書けないが)少し不適切な記述があるのだが、これは私の仕事とかかわることだから余計気になったのだということにしたい。
「摂食障害はアノレクシア・ブリミアつまり過食症と神経性食欲不振、アノレクシア・ネルボーザの双方をあわせて、摂食行動に顕著な以上の見られる心身症です」とあるが、「アノレクシア・ブリミア」などと言う病気はない。「過食症」(神経性大食症)は、ブリミア・ネルボーザである。
「神経性食欲不振が非常に重篤になると一般的にいう拒食症の症状を呈し」とあるが、「神経性食欲不振」がそもそも一般に「拒食症」と呼ばれているものである。
「パラノイアタイプのボーダーライン・パーソナリティ」というのもニュアンスはわからないではないが、境界性パーソナリティ障害の説明としては不十分と言うか不適切と思われる。
それに何より、事件の背景や原因の一部をこれら病気のせいとしているのはやりきれないものがある。病気だったらこんな事件を起こすのか、起こしても仕方ないのかとでも言っているようで、後味が悪い。現実に様々な事件が起きた時に精神科医にコメントを求め、精神の異常性が行動の異常を引き起こしたかのように結論付けたがるマスコミと同じような感覚に感じてしまう。
せっかく重要な問題を提示している作品だからこそ、そのような片づけ方はして欲しくないと思う。