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商品説明
第二次大戦後、多くの新興独立国の誕生とともに生まれた開発経済学。その生成から理論的発展、80年代のパラダイム転換を経て新しい成長モデルの模索まで、現実との緊張の中での開発経済学のダイナミズムを描く。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
絵所 秀紀
- 略歴
- 〈絵所秀紀〉1947年東京都生まれ。東京都立大学経済学部卒業。現在、法政大学経済学部教授。経済学博士。著書に「現代インド経済研究」「開発経済学」「開発と援助」など。
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紙の本
開発経済学に興味がある人にはお勧め
2001/07/12 23:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tanzanight - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず思ったのは、本書を読むにはある程度の経済学の知識があったほうが良い、ということである。それほど特殊な用語は出てこないといっても、経済学の基本的な専門用語がそこここにちりばめられていて、経済学とはトンと縁がなかった理系頭にはいささか読みづらい部分もある。
しかし、理系頭にまったく読めない本か、というとそんなこともない。この本に書かれているのは詳細な経済学理論の検討ではなく、開発を取りまく、経済学の大きな流れであり、ここの専門用語を読み飛ばしても、経済学部の学生でもない限りは問題がない。
この本、悪く評せばチェンバース信奉者の僕としては「Uppers たちの系譜」といったところであろうか。開発を研究テーマに、また途上国を実験の場として弄くりまわしてきた経済学者・エコノミストたちの独り善がりの歴史、と言う読み方もできる。
しかしその一方、なぜこのとき、このような政策が取られたのか、このような組織のこうした主張にはどのような理論的裏づけがあったのか、というのが見えてきて面白い、良くも悪くも事実としてそこに存在した歴史がたどられているのであるから。
著者は開発経済を閉じられた体系ではなく、現実との緊張関係の中で変動を繰り返すもの、今も変動しているもの、として捉え、特定の学説を主張してはいない。最後の方になると、当然であるが Sen が登場し、だんだんと「人間の顔をした開発経済学」が現れてくるのが見える。著者の表現にも「心をうつ」といったおおよそ経済学には縁が遠い?表現が現れてくる。そして「経済学以外の開発」との接点にも触れられている。
本書は良心に基づいて書かれた良書である。開発の世界で大きな力を持ってきた、そして今でも持っている経済の分野での流れを知っておいて損はない。本書はその全体像を示してくれる、お勧めできる本である。
紙の本
開発経済学の特色ある入門書
2001/07/05 11:22
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:稲葉振一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は雑誌『経済セミナー』の連載を改めてまとめたものであり、同じ著者の91年の教科書『開発経済学——形成と展開』(法政大学出版局)をフォローアップする書物である。開発経済学の教科書は日本語でもいくつかあるが、その中で氏の2冊の特徴は学説史を主題とするところにある。それはトピックスや分析手法を体系的に紹介していくのではなく、開発経済学という実践的な政策科学の歴史を、現実の開発政策の歴史との相互作用の中で「アイディアの発展史」として描き出していく。
前著は開発経済学における構造主義、積極的介入論の衰退と新古典派の興隆、市場指向の高まりを、「「インドモデル」から「韓国モデル」への転換」というわかりやすいフレーズで押さえ、IMF・世界銀行公認の理論としての新古典派開発経済学の覇権への、政治経済学的立場からの疑義、とりわけアマルティア・センの潜在能力アプローチへの共感の表明をもって締めくくられていた。それに対して本書では、前著以降の歴史的展開が踏まえられているだけではなく、ページ数も増えたせいか前著と重複する主題についてもよりつっこんだ議論がなされている。とりわけノーベル賞受賞者T・W・シュルツを主に取り上げつつ、「新古典派開発経済学」が単なる「新古典派経済学」ではないことを説得的に論じるあたりは大変に興味深い。
しかしやはり本書のキャッチフレーズがあるとすれば、まさに題名通り「開発の政治経済学の興隆」といったところであろう。前著ではまだ予感、期待にとどまるところが大きかった開発経済学の政治経済学化が、今や力強いうねりとなっていることを、本書は説得的に示してくれる。本書で指摘されているとおり、93年の有名な世界銀行『東アジアの奇跡 経済成長と政府の役割』(白鳥正喜監訳、東洋経済新報社)などはIMFや世銀の立場、あるいは新古典派開発経済学自体が、従来の構造調整政策を見直し、政治経済学的アプローチへと転換していっていることを示している。またセンの潜在能力アプローチは、UNDP(国連開発計画)のキーコンセプト「人間開発」のバックボーンを提供している。(90年以降毎年発行されているUNDP『人間開発報告書』(日本語版、古今書院)を参照のこと。) そして何より、本書刊行後程なく、他ならぬセン自身が98年度にノーベル賞を受賞したことは記憶に新しい。
ただ、まさに絵所氏が本書で指摘しているとおり、その着地点はなお明らかではない。広義の功利主義から抜けることはなく、その点でまさに「経済学」である新制度派と、新たな倫理学をも切り開きつつあるセンのアプローチは基本的なところですれ違っているし、また「経済学」の一分野としての開発経済学と、「開発研究」の一環としての開発経済学、という二通りのありようの間の緊張関係については、原氏も『アジア・ダイナミズム』(NTT出版)の後書きで語っているとおりだ。その辺の未来の不分明さをも含めて、開発経済学の現状を素人にわかりやすく教えてくれる好著である。ただ前著に比べて論点が盛りだくさんであり、数式も少しあるので経済学の素養が全くない人にはちょっとつらいかも知れない。経済学のど素人にはむしろ前著をすすめる。