もうひとつの青春 同性愛者たち
著者 井田真木子 (著)
高校教諭、床屋、会社員……さまざまな経歴と個性の、20代7人の若者の、ただ一つの共通点は、同性愛者。「変態」でも「性風俗業者」でもない、東京近辺でありふれた生活をおくる同...
もうひとつの青春 同性愛者たち
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商品説明
高校教諭、床屋、会社員……さまざまな経歴と個性の、20代7人の若者の、ただ一つの共通点は、同性愛者。「変態」でも「性風俗業者」でもない、東京近辺でありふれた生活をおくる同性愛者たちを通して描かれるいまの日本は、驚くほど“異性愛的規範”に満ちている。アメリカ・サンフランシスコでの取材と比較して描かれる、わたしたちが住む社会の「異質さを受容しない均質さ」は著しい。しかし苦難のなかから、ほの明るい光も差してきて──魂をえぐる、同時代ノンフィクション!
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もんだいの当事者ではない、節度と真摯さ
2001/03/16 09:13
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投稿者:鍼原神無〔はりはら・かんな〕 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1990年2月、同性愛者の自助グループ「働くゲイとレズビアンの会(アカー)」は、学習会などを目的とした合宿を、東京都教育委員会の管理する、府中青年の家で持ちました。施設を利用する各グループ間の会合にて、アカーもグループの趣旨を紹介したところ、翌日から他グループからの嫌がらせが頻発したと言います。
アカーは青年の家に話会いの場を設けるよう求めましたが、施設側はこれを拒否。改善策の提示を求める要求書の受け取りも拒否され、二ヶ月後の合宿の為予め予約してあった予定も破棄されました。
都は、「他団体との間に不要な摩擦を生じると運営に差し支える。同性愛者の存在は青少年の健全育成に悪影響を与える」などを理由に挙げたとの事です。
1991年アカーは東京都を相手どった裁判を提訴、5月に初公判が開かれました。 このニュースをTVで観て、著者、井田真木子はアカーを知ったと言います。 井田の“取材”はTVのワイド・ショーなどで、よくみるそれとはカナリ違います。例えば、アカー・メンバーに同道してアメリカに行ったときのエピソード。
「私が異性愛者であるという事実は、つねに小声で私から顔をそむけて語られた。/『すまない。彼女は実はストレートなんだ』/そう言われるたびに私は縮みあがった。自分が、何か、ひどくいかがわしいものに成り下がったような気持ちだった」(第二章「憂鬱のサンフランシスコ」より)。たいていの異性愛者だったら、ここで怒るか、投げ出すかするのではないか、と思います。
井田の本にはどれも、もんだいの当事者ではないって位置から他者をわかってゆこうとする姿勢があります。節度と真摯さをもって、大所高所からのものでない、生身な感じのノンフィクションを紡いでゆくのだと思います。
アカー・メンバーのHIVキャリアーは、井田にこう言っています「あの記事は悪い記事ではありませんでした」。「あの記事」とゆうのは、先に触れた第二章の元になった雑誌記事のこと。「あなたに記事を書かれることは、いいんじゃないかと思います。あなたに話をしてもいいと思います」(第六章「クリスマスからクリスマスへ」より)
井田がそんなふうにアカーに伴走した、5年数ヵ月の収穫がこの本です。
1996年、東京高等裁判所は、被告・東京都の過失を積極的に認め、アカーは勝訴しました。