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紙の本
カフカを楽しむ
2002/10/20 01:05
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
カフカとサーカス、カフカとウィトゲンシュタイン、その他諸々の解釈や暗号解読や意味づけや関連づけをめぐる試みは、それこそ果てしないゲーム(カフカ・ゲーム?)として無際限に続いていく。それはそれでとっても楽しいし、刺激にみちた面白いものなのだけれど、でもネ、と池内紀さんはあとがきで書いている。《解釈は解釈、意味づけは意味づけ──「でもネ、やはり作品にもどって、自分の目でたのしむのが第一ですよ」。》
池内紀さんは本書で、ほんとうに楽しみながら、その細部や断片を愛おしみながら、カフカの作品のひとつひとつを案内している。だまし絵としての、あるいは未完性をはらんだカフカの作品のかなたにあるもの、そして、「どこかしら碑銘の口調にそっくり」な簡潔かつ明晰なことばで報告された、カフカの内的世界の実質を指し示している。
《しかし、内的世界は、明晰に語り得るもののことではないだろう。むしろ語り得るものの限界をはっきり規定することではなかろうか。
──とするとそのとき、おのずから、限界のかなたにあり得るものが見えてくる。いわば「掟」の内部が姿をあらわしてくる。
カフカにとっては、書くことが存在そのものにひとしかったにもかかわらず──あるいは、だからこそかもしれないが──彼はつねに書くことに対して気むずかしかった。「語り得ぬもの」の背後ににじりよるとき、その表現は当然、限界に向けての「発音練習」になるしかない。発音はそれに応じた特有の形をもたらすだろう。(中略)
そもそも彼は「再現」つまり「述べ」ようとすらしなかった。カフカが採用したのは、おのずから現われるべき方法である。仮に文学ジャンルでひっくくれば、「喩え話(パラベル)」というのにあたる。謎めいて機能する強烈な間接的伝達の方法を好んだ。(中略)
ことばによる謎をかさねていけば、最後には沈黙と同義語のパラドックスしかのこらない。作品は「未完」に終らざるを得ないのだ。むろん、その未完性は、とびきりの完全さの属性といっていい。》