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商品説明
初老の勤め人に深夜かかってくる無言電話。何も残すことのなかった人生を送った彼は、受話器を取る…。著者唯一の現代小説の表題作の他、時代小説の名品二篇と随想・エッセイを収める澄明な作品集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
深い霧 | 7-58 | |
---|---|---|
野菊守り | 59-104 | |
早春 | 105-152 |
著者紹介
藤沢 周平
- 略歴
- 〈藤沢周平〉1927年山形県生まれ。山形師範学校卒業。71年「溟い海」でオール読物新人賞、73年「暗殺の年輪」で直木賞を受賞。著書に「又蔵の火」「闇の梯子」「白き瓶」「市塵」など。97年没。
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紙の本
薄ら寒い春の物語。けれど、季節は巡る。
2000/09/10 22:54
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投稿者:LIN - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作「早春」は現代小説である。淡々とした文章で静かに語られていくのは、妻を亡くし、娘とは心すれ違う初老のサラリーマンの姿だ。
自分が「手に入れた」と漠然と信じていたものが、いつの間にか少しずつ手からこぼれ落ち、すべてなくなってからようやくそれに気づく男を、哀れと思うか愚かと思うかは、読者の年齢や立場で違ってくるだろう。幸福というもののつかみどころのなさ、幸福であることの足場のもろさを男は体現している。
全篇に漂う男の哀愁は、夫であり父でありサラリーマンである者の哀愁であるが、それはしかし、生きて生活するものすべてに通じるものだともいえる。
老若男女を問わず、それぞれの立場で読んでみて欲しい。訴えかける激しさはないが、心に染み入る静かな「想い」がある。読むたびに深みの増す、不思議な味わいの作品である。