- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
3 件中 1 件~ 3 件を表示 |
紙の本
薄ら寒い春の物語。けれど、季節は巡る。
2000/09/10 22:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:LIN - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作「早春」は現代小説である。淡々とした文章で静かに語られていくのは、妻を亡くし、娘とは心すれ違う初老のサラリーマンの姿だ。
自分が「手に入れた」と漠然と信じていたものが、いつの間にか少しずつ手からこぼれ落ち、すべてなくなってからようやくそれに気づく男を、哀れと思うか愚かと思うかは、読者の年齢や立場で違ってくるだろう。幸福というもののつかみどころのなさ、幸福であることの足場のもろさを男は体現している。
全篇に漂う男の哀愁は、夫であり父でありサラリーマンである者の哀愁であるが、それはしかし、生きて生活するものすべてに通じるものだともいえる。
老若男女を問わず、それぞれの立場で読んでみて欲しい。訴えかける激しさはないが、心に染み入る静かな「想い」がある。読むたびに深みの増す、不思議な味わいの作品である。
3 件中 1 件~ 3 件を表示 |