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紙の本
転生物は好きではないのですが、本シリーズは特別
2006/04/14 20:51
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:栗太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
金蓮花は現在、コバルト文庫で無国籍風ファンタジーを多数書いていますが、原点はやっぱり、この「銀葉亭茶話」シリーズでしょう。仙境にある茶店・銀葉亭の主は、半人半仙の李月流。月流の茶店には仙界人界を問わず、多くの客人が訪れ、己の身の上を語っていくという形式のファンタジーです。舞台が朝鮮半島のため、風習など馴染みがなく、とっつきにくいと感じるかもしれませんが、美しい自然や、人々の情感が、しっとり描かれていて、魅了されます。
さて、ヒロインの珠娜は、本作で銀葉亭シリーズ三回目の登場です。「蝶々姫綺譚」では、哀しい恋で命を落とし風精として転生した明蘭、「錦繍打鈴」では明蘭が人界に還って百年後を生き命を落とした楓蘭、そして「銀珠綺譚」では三度の転生をした銀珠の巫女、珠娜。健気な少女なのに、どうも薄幸で、「銀珠綺譚」でも、友の一人もなく辛く淋しい日々を送っています。巫女として大きな力を持つゆえ、親に売られ、周囲に心を閉ざして、ひたすらに耐え忍ぶような人生です。
そんな珠娜を見守る存在があります。月流をはじめとし、珠娜が明蘭だった頃からの友である善華や、過去世で恋人であった楓の樹精、楓英。彼らは、珠娜を心にかけながらも、人界で新たな人生を歩む彼女に干渉してはならないと、遠くから歯がゆく見守るばかりでした。ところがある日、珠娜が、「虎に食われる」運命に見舞われていることがわかり、善華と楓英は珠娜を救うため、あえて不干渉のルールを破り、人界に赴きます。
二人だけで、というところがポイントです。楓英は樹精なので本性は穏やかで、戦いには向きません。善華は強大な仙力を持っているものの、人界に赴くにあたって小鳥に姿を変え、力を封印された状態です。敵は、虎の精と配下の鬼、変えられないとされる運命、そして何よりも、静かな諦めと共に運命を受け入れようとする珠娜自身です。
楓英と善華は、珠娜を救うことができるのか? 頑なだった珠娜の心が開かれる時は来るのか? 人は運命に立ち向かい、自らの人生を選び取ることができるのか?
本シリーズ、現在のところ入手できるのは最新刊「伽椰琴打鈴」のみ? その最新刊も、奥付を見ると2002年刊となっており、以来ぱったりとシリーズが出ていません。李月流の過去や、善華の新しい恋など、気になる伏線は山のように残っているのに……打ち切りですか?
金蓮花も、「銀葉亭茶話」は自分にとって愛着のある作品で、年に1冊は出したいと語っているのに、やはり現在出している無国籍風ファンタジーの方が売れるので、編集部的にそちらが優先ということなのでしょうか。そうであるなら、とても残念です。私はこのシリーズで、いつか朝鮮半島に行って、金剛山や白頭山に登ってみたいと思ったのですから。
金蓮花だからこそ描ける「銀葉亭」の世界が、帰って来る日を楽しみにしています。