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収録作品一覧
残映 | 7-142 | |
---|---|---|
影男 | 143-170 | |
供先割り | 171-218 |
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紙の本
リストラ断行の続く現代は第二の明治維新である
2003/11/01 17:35
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投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
リストラなんて、したくない。ましてや、される側なぞ、まっぴらだ。
「生まれ落ちた時から、武士は武士」
これが、浅野内匠頭の師・山鹿素行の教えである。
この文は、「なんでそうなの?」とか「武士になるのは嫌」
という疑問や拒絶をはね返す強さを持っていた。
生まれた時から武士達は、その言葉を物差のように背中に差し込まれて
生きてきた。
ところが突然、武士自体、存在しないのだと物差を抜き取られてしまう。
明治維新で心棒を抜かれてへなへなとなった彼等は、まるでクラゲだ。
クラゲならば、海へ戻ればよい。けれど彼等は人間だ。
食べてゆくため、働かなければならない。だが、今までの経験は邪魔にこそなれ、全く役に立たない。
一からのスタートという事になる。お上の都合で社会のシステムも
価値観も変わってしまった。そして決して元には戻らない。
自分より年の若い者、
身分の低かった者達の言う事を聞かなければならない毎日は、
彼等のプライドをいたく傷つける。
消え行く前時代の残映を眺める元武士達は、リストラが頻繁に
行われる現代に、やっとの事で生きている中高年に重なる。
築地の旅籠に宿泊した女1人、男2人が死体で発見された。
あっさりと過去の栄光を捨てて出発を始めた者、新人類として活躍する若者、
新システムへの反乱を企てる者、その反乱を利用して旧世代の一掃を
図る者。現代になぞらえて登場人物を見る事ができる表題作をはじめ、
直木賞受賞作「東京新大橋雨中図」の主人公小林清親が再登場する
「影男」他「供先割り」 を収録。
「影男」で「政府」を「てき」と読ませる杉本氏は、もちろん
割を食った庶民側の心強い味方である。