紙の本
小川洋子氏の原風景
2008/12/21 14:50
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:菜摘 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小川洋子の原風景は「アンネの日記」にあると言う。そう自覚し明言できる小川氏が本当に羨ましい。人生で起こる素晴らしいことのうちの1つが「これが自分の本」だと言える本との出会いだとつくづく感じているからだ。
小川氏は十代の頃アンネの日記を繰り返し読みアンネを誰よりも身近に感じてきたと言う。アンネの綴った言葉で表現されている「文章で、言葉で自分の想いを伝えたい」という彼女の強い意志が小川氏を小説家にしたのだと氏は言っている。自身の原風景である本書の背景を探るため小川氏はコーディネーターと一緒にアンネを訪ねる旅に出る、本書はそのドキュメンタリー記録である。
アンネの足跡をたどることでアンネが単に歴史上の人物ではなく現実に生きた1人の少女であったこと。フランクフルトに生まれアムステルダムに育ち、そしてアウシュビッツで生涯を終えた事実。これを小川氏自身が実感し感じたままを伝えようとする真摯な想いが伝わってくる一冊。
アンネを直接知るミープやヨーピーとの出会い、面会、そこで得られた2人の人柄が小川氏の目を通じて私達読者にも深い感動を与えてくれる。知識として知っていたはずのアウシュビッツも小川氏の目を通じて読むとありありと情景が浮かぶようで恐ろしさを近くに感じた。
歴史とは単に史料に記録されたものでは決してなく、私達と同じく日々を生きていた人々が紡いできた日々の積み重ねなのだ、ということを深く感じさせてくれる一冊。中高生のYA世代にも、もちろん大人の方にもぜひ薦めたい一冊。
紙の本
また、ゆっくり『アンネの日記』を読み返さなくっちゃ
2019/07/05 20:28
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
6月12日は、「日記の日」。
アンネ=フランクの誕生日であり、「アンネの日記」を書き始めた日でもあります。
アンネ=フランクのことを心に留める人がふえてくれると、うれしい。
『アンネ・フランクの記憶』を読んで、思い出しました。
苦しい隠れ家生活でも、
アンネは窓からわずかに見えるマロニエの木や青空や空飛ぶ鳥たちから
生きる力を得たといいます。
アンネは日記に書きます。
「これが存在しているうちは、
そしてわたしが生きてこれを見られるうちは
この日光、この晴れた空、これらがあるうちは、
けっして不幸にはならないわ」
また、ゆっくり『アンネの日記』を読み返さなくっちゃ。
電子書籍
アンネ・フランクの記憶
2015/09/30 22:25
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やんばるクイナ - この投稿者のレビュー一覧を見る
小川洋子さんの文体を通して、実際に起こった忌まわしい記憶を追体験しましょう。
投稿元:
レビューを見る
思春期にアンネの日記に触れて小説家を目指した作者が、
アンネ・フランクゆかりの地をたどった旅行記。
そこかしこにアンネの日記の引用がされるのだが
アンネに語りかけるような作者のコメントがいちいち素晴らしく、
涙を誘う。
この本を読んだことによってアンネの日記の表現力の
豊かさ、彼女の感受性の強さを改めて思い知った気がする。
もう10年以上は読んでいないけれど、またアンネの日記を
読みたくなった。
投稿元:
レビューを見る
恥ずかしながらわたしは芥川賞作家である小川洋子さんの存在を実は知りませんでした。
だけど、この本を読み求めていた映画の原作の本とは違うけれど、静かに心打たれました。
彼女の文章はとてもわたし好みです。
この「アンネ・フランクの記憶」最初は小説なのかなと思ったのですが、エッセイのようなものでした。
小川洋子さん自身が長年親しんで読んできた「アンネの日記」その主人公であるアンネの足跡をたどりたいというか肌で感じに行きたいというか会いにいくというような気持ちではじまった本です。紀行記というには小川さんの想いが強すぎて、エッセイと言うにはレポートのようなものが多いなとも思う。
アンネを知る、そして大きく関ったアンネの友人たちに会いにいき、小川さん独自の知りたいという欲求をぶつけた研究目的とはまったく違ったインタビューを小川さんなりに小川さんの言葉で見て感じたままを綴ったそんな本です。
この本を読んで「わたしは静かに心打たれました」と言うのには、ひとつの大きな間違った歴史だと思うドイツのナチス時代と呼ばれる暗黒の時代にアンネはしっかり生きていたということを改めて気づかされたのと、それを小川さんという書き手に伝える(実際に)アンネ達を支えた友人たちの存在が、読み手であるわたしも書き手の小川さんのようにと言いますか・・・たぶん「アンネフランクという少女に」いろいろな想いを持つことが出来たことが大きいと思います。
この本は面白いというにはどこか少し重くて黒い。
それは、実際にあった事実であるということが大きいかもしれない。
単純な言葉で表わすなら「深い」というそんな言葉が合っている様な気がします。
小川さんをはじめとする登場人物の言葉描写が少ないからかもしれないけれど、でもその淡々と事実を伝えるその綴られた言葉のその奥に秘められ込められている想いに、読み手であるわたしは気づかなければならないのだとそう思う。
感想の最後として、単純にボーっと読むには難しい本であることも付け足しておきたい。
たぶん多くの人は、今生きている現実とのギャップが大きいから。
でも読んでほしいと思う。
投稿元:
レビューを見る
初めてこれを読んだのは中学生のときで、小川洋子は知らなくてアンネ・フランクを知っていた
今度は大学生になって、小川洋子をたくさん読んでいてアンネのことも知っていた
投稿元:
レビューを見る
小川さんの目を通してアンネが本当に精一杯自分の「生きた証」を残した感覚も伝わったし,悲惨な歴史に観念的に理解しただけの自分の弱い精神が,歴史の重みを受け止めるのを拒んでいることに対し,少し前向きに取り組もうと思ったし,アンネに関わった人たちの信念に触れた小川さんたちの興奮や感動にも共感できた。
投稿元:
レビューを見る
これは、少女の頃に、アンネ・フランクの日記を読み、影響を受け続けてきた小川洋子の、アンネを巡る旅のエッセイだ。
彼女の書くことの原動力は、アンネからもらったものなのだそうだ。
アンネ・フランクという女の子の文才にほれ込み、心の友としてきた作家の、感傷的な旅日記。
同じように、中学生のとき「アンネ・フランクの日記」に出会い、それに触発されて日記を書き始めたことのある私には、なかなか、面白いものだった。
残念ながら、私の日記は、半年も続かなかったけれど・・・。でも、日記帳を親友として名前をつけ、手紙を書くように綴っていくアンネの日記に憧れたのは、はっきりと覚えている。たしか、私も日記帳に名前をつけたはずだったけれど・・・なんだったかなあ。
「戦争モノ」と思って読み始めたので、その点では、ちょっと期待はずれだったけれど、自分が多感な少女だった頃のことを思いだし、胸が熱くなった。
ふと考えると、アンネフランクもまた、特別な人なのではでなく、小川洋子や私と同じ、多感な少女だったのだなあ。悲惨さを直接描いた文章を読むのとは、また違った角度で、戦争の悲しみを感じずにはいられません。
アンネ・フランクは、永遠に少女であり続け、小川洋子も私も、もう、その頃のことを思い出し、胸を熱くする年になっているのですから。
投稿元:
レビューを見る
筆者が、アンネフランクが残したさまざまなものを実際に見に行く、日記形式の本。
アンネフランクに興味があってつい買ってしまった本だけど、直接アンネフランクのことがわかるわけではなく…アンネについて知識がある人が読んだほうが良かったのかも。
投稿元:
レビューを見る
途中で読むのを止めようかなと思ったのですが、この本を読んで、一度アンネの足跡を訪ねてみたいなと思いました。
投稿元:
レビューを見る
アンネ・フランクという女の子が少し前、この空の続きの中で生きていた。小川洋子さんはひそかな心の友人でありつづけたアンネの、彼女の息づかいをしっているひとたちを訪ねていく。
アンネは片方の髪がいつもうまくいかなくて気にしてた。
隠れ家の階段をマルゴーと足音をしのばせて登る。
幼い女の子がこっそり生きなければならなかったことを、ミープさんはよく憶えている。
一家の世話をしつづけたミープさんがアンネ家にドイツ軍が踏み込まれたあと、守るようにアンネの日記を抱えてからふと化粧ケープもなにげなく一緒に助けた。ミープさんは手で触れてそばに置いている。アンネの手にしていた化粧ケープを小川さんが手で触れて感じている。
時を飛び越えてきたのではなく、いまの続きのいく秒か昔に、かわいくて元気でおしゃれ好きな、アンネという女の子が生きていたことを感じている。
投稿元:
レビューを見る
どんな関連があるんだろうと思って読み始めたけど、小説家になるきっかけだったのかぁ。アンネの日記は何回か読んでいるけど、いつかアムステルダムを訪れてみたいなと思った。また新たな情報を持ってアンネの住んだ町を見れるような気がする一冊。
投稿元:
レビューを見る
私は恥ずかしながら、アンネの日記を全て読んだ事がありません。今まで読んでこなかった自分を本当にはったおしてやりたい。
薄氷の上を歩くかのように、慎重に選び抜かれ、抑制された言葉で、語られるアンネ。こちらも思わず息を潜めて読み耽った。
あえて語弊を恐れずに言うのなら、これは、ナチスとは、戦争とはなんだったのかを考えこませる、説教くさい本ではなかった。
ただただ、アンネに会いたくなる本だったと思う。
投稿元:
レビューを見る
(「BOOK」データベースより)
十代のはじめ『アンネの日記』によって言葉が自分を表現することに心ゆさぶられ、作家への道を志した小川洋子が、長年の感慨をこめてアンネの足跡をたどる旅に出た。命がけで物資を運びフランク家の隠れ家生活を気丈に支えたミープさんや無二の親友ジャクリーヌさんら老齢の今も美しく、真の魅力を放つ女性たちと語り、生家→隠れ家→アウシュヴィッツへとたずねていく―。アンネの心の内側にふれ、極限におかれた人間の、葛藤、尊厳、信頼、愛の形を浮き彫りにした感動のノンフィクション。
投稿元:
レビューを見る
10 代のころ「アンネの日記」がきっかけで作家を志した小川洋子さんが、アンネゆかりの地を訪ねる旅日誌。最近「アンネの日記」を再読したばかりで興味を持っていたのと、小川さんのアンネへの思い入れの強さからくる筆の勢いにひっぱられて、表紙を開いてから最後まで一気に読み上げた。小川さんが移動中の電車の中や訪問先で子どもを見かけるたびに 「この子が隠れ家に住んだり収容所に送られたりすることがありませんように」 と祈りのことばを書き付けているのは、感傷的すぎてひとりの作家の表現としては抑制が効いていないと思うが、彼女がアンネを心の友にして思春期を過ごし、いま (旅行当時) アンネの母の年齢に達したひとりの女性であると考えると、十分にリアルなことばとして受け止められる。
小川さんは旅の中で「アンネの日記」に登場するジャクリーヌ・ファン・マールセンさん、ミープ・ヒースさんとも会っている。おふたりとも近年になってアンネの思い出を本にした。どちらも「アンネの日記」の深町さんが翻訳しているので、読んでみたいと思う。