紙の本
「ひきこもり」という悲しい現象
2001/08/01 04:09
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
一時だいぶ問題視されたものの、最近では人々もすっかりその存在に慣れてしまった感のある「ひきこもり」という現象。しかし騒がれなくなったからといって、なくなったわけではないし、解決したわけでもない。依然として大問題である。
本書は、10年あまりに渡って「ひきこもり」と取り組み、多くの臨床経験を持つ精神科医による「社会的ひきこもり」に関する解説である。「ひきこもり」を単なる個人の病理ではなく、家族や社会も関係するシステム的な病理として捉え、その正しい実像と対処の仕方について解説している。
この本は大きく理論編と実践編にわかれている。理論編では、「ひきこもり」というのは具体的にどういう現象なのか、理論的にはどのように説明されるのかなどという点について紹介し、実践編では、「ひきこもり」に対して家族やまわりの人がどのようにむきあうべきかなどという点や、治療のプロセスなどについて解説している。
「ひきこもり」の現象について全体像を把握するためには大変良い本である。しかし、本書を読んで、問題の根の深さに鬱々としてしまう人は多いのではないだろうか。関係者の方々の努力には頭が下がる。
紙の本
深刻な社会問題
2005/01/29 23:14
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あいちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひきこもり…。ニュースや新聞などでよく耳にしたり目にしたりする言葉ですが、私のまわりにはひきこもりがいないので、これまでひきこもりがどのような人なのか全くと言っていいほど分かりませんでした。
しかしこの本を読んで、ひきこもりの実態や、ひきこもりはなかなか治るものじゃないということを少し知りました。また著者の方が考えた、ひきこもりの具体例がいくつかあり、とても分かりやすかったです。
私はひきこもりという言葉を数年ほど前に知りましたし、世間にひきこもりが知られるようになったのもそのくらいだと思いますが、この著者の方はひきこもりが世間に知られる前(発行年1998年)にこの本を出しています。著者の方はひきこもりが段々増えるというのを予想できていたんでしょうね。
ひきこもりの人、もしくはその家族がこの本を読んで、著者の方や精神科医の方々に相談に行き少しでも多くの人々が社会復帰できればいいなと陰ながら思っています。
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精神科医によるひきこもりの考察とその対処について。自分に対してあてはめることは心理学においてはタブーだが、どうしても自分に当てはめていろいろと考えてしまう。ということで、周りの友人に当てはめて考えてみたところ、一名、軽くひきこもっている友人にかなり当てはまる事実が書いてあった。読んだことを踏まえてアドバイスしてみよう。
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すぐ側に微妙に引きこもりな人間が居るので、いろいろと興味を持って読んでみました。その結果、ひきこもりじゃないとは思いましたがwただの出不精だ(−−;
まぁ、ひきこもりだとしても俺には何の手助けも出来ないわけだが。この本曰く、兄弟の手助けはむしろ邪魔とのことでした。
ひきこもりになっていく様子や、ひきこもりの病理(ただの鬱ではない)などがわかって面白かったです。ひきこもりに対する見方がちょっと変わりました。
この著者の斎藤環さんの他の著作に「戦闘美少女の精神分析」が並んでて、あー、この人かと。たしかゲームラボでオタクに一番詳しい精神科医って言ってた人だよなァ。ひきこもりとかは得意分野だろうなと納得。
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社会問題ともなっている、引きこもりについて書かれた本です。不登校問題についても少し触れられていますので、是非一度お読み下さい。
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「ひきこもり」の解決に電子メールなどが役に立つのだろうかと思い読んでみた。その答えを見いだすことはできなかったが、ひきこもりのメカニズム?や対処方法については理解できた。
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初めてこの本を読んだころは今ほどひきこもりがメジャーじゃなくて、不登校が増えているという統計は知っていても、その数字達がどんな生活をしているかなんて知る由もなかった。
これを読んで、初めて自分だけじゃなかったんだと思えた。
怖くてなかなか再読できないけれど、書いてくれたことに感謝している。
てことで贔屓目の★5
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著者はひきこもりの専門医である。引きこもりとはという定義から始まり、引きこもりは病気といえるか、など語られていく。まず、引きこもり=無気力ではない、ということ。これは一般に誤解されがちなことで、私も本書を読むまではそう思いこんでいた。最後の引きこもりからの脱出過程でインターネットが役だっている箇所が興味深かった。最近では30代以降の引きこもりが増加する傾向にあり、これは就職難から来る理由も考えられる。いずれにせよ、他人に寄生して いるわけだから、両親が年老いていくと引きこもりにも、何らかの将来設計を立てねばならなくなる。この点に現時点では対応が難しいようだ。
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ラカン、ベイトソン、中井久夫などに精通する。
「ひきこもり」という言葉を作り出し、人口に膾炙するようになったのもこの本がきっかけ。
・著作紹介
『社会的ひきこもり』(PHP新書)
一般的には、本著で認知されるに至った。このことから「ひきこもり」という言葉は一部で斎藤の造語だと思われているが、
本書のタイトルは英語の翻訳である。同書はひきこもりについてのエッセー。
『文脈病 ラカン/ベイトソン/マトゥラーナ』(青土社)
雑誌「imago」に寄稿した論考を集め評論家としてデビュー、大きな反響を呼ぶ。
漫画、アニメーション、デヴィッド・リンチなどを精神分析の立場から解釈する。以降、文章のスタイルはこれに準ずる。
『戦闘美少女の精神分析』(太田出版)
戦うアニメのヒロインはなぜ少女なのかについて分析。
『文脈病』でも触れた、マイノリティな米国の画家ヘンリー・ダーガーの絵画を引用し、ダーガーを広く国内に知らしめる結果となった。カバーデザインは美術家村上隆のヒロポン。
『「ひきこもり」救出マニュアル』(PHP研究所)
幅広い読者を対象とするが、ひきこもりについて実際の診療をふまえて記述しているため、
これらに関連してTV、講演等でひきこもり救出について語るようになる。
近年精神科医にかかる患者が増加していることに関しては否定的な見解を持っており、精神科にかかる敷居はある程度高いほうがよいと発言している。
また社会的な事件などに対し、心理学的、精神病理学的な解釈が広く求められる風潮に対しても否定的である、
大澤真幸、東浩紀(デリダ)、浅田彰などと交流を深める。
ISBN:4569617182 『若者のすべて――ひきこもり系VSじぶん探し系』(PHPエディターズグループ、2001.07)
ISBN:4569621147 『「ひきこもり」救出マニュアル』(PHP研究所、2002.06)
ISBN:4535561974 『博士の奇妙な思春期』(日本評論社、2003.02)
ISBN:4838714394 『OK?ひきこもりOK!』(マガジンハウス、2003.05)
ISBN:4141890898 『若者の心のSOS』(日本放送出版協会、2003.07)
ISBN:4569630545 『心理学化する社会――なぜ、トラウマと癒しが求められるのか』(PHPエディターズグループ、2003.09)
ISBN:4314009543 『ひきこもり文化論』(紀伊國屋書店、2003.12)
ISBN:4326652888 『解離のポップ・スキル』(勁草書房、2004.01)
ISBN:4791761189 『フレーム憑き――視ることと症候』(青土社、2004年6月)
ISBN:4163664505 『文学の徴候』(文芸春秋、2004年11月)
ISBN:4121501748 『「負けた」教の信者たち』(中公新書ラクレ、2005年4月)
・内容
思春期の心理的病理を原因に人を避け社会を避け、自室に閉じこもる状態を特定し、ひきこもりと定義している。
ひきこもりと診断する条件の一つとして、重要なのは、ひきこもりが一時的な病理となっている、という点である。
ひきこもりに端を発し、二次的に他の精神的疾患を発症している(ように見える)場合でも、斉藤は一括してひきこもりと診断しようとする。
それとは逆に、その他の症状(うつ状態等)を持ち、それが要因となって「ひきこもり」の様相を見せても、それは斉藤のいうひきこもりとは診断できない。なぜならひきこもりと診断するには、思春期特有の精神構造を患者のなかに見出すことが必要だからである。
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(2004.07.25読了)(2004.05.21購入)
副題「終わらない思春期」
社会的ひきこもりと呼ばれる状態にある青少年が数十万人いるといわれます。その内9割が18歳以上です。不登校、家庭内暴力、自殺企図、対人恐怖、脅迫行為と結びつくこともある。
この本での、「社会的ひきこもり」の定義
「20代後半までに問題化し、6ヶ月以上、自宅にひきこもって社会参加をしない状態が持続しており、他の精神障害がその第一の原因とは考えにくいもの」
「社会的ひきこもり」は、思春期心性に深く根ざした問題です。人格発達の途上における一種の「未熟さ」ゆえに起こってくる問題である。一般的に「思春期」という場合、大体12歳から18歳くらいまでを想定しています。人格的な枠組みが出来上がり、性的な成熟が起こる期間になります。「性的に成熟する」ということが、思春期から青年期にかけての、最も重要な過大になります。
ひきこもりと思春期心性が深く関係しているという根拠
※不登校、家庭内暴力、脅迫症状、対人恐怖症状などの、思春期心性と深く結びついた症状を「社会的ひきこもり」に伴うことが多い
※ひきこもりが長期化する背景には、視野の狭さ、かたくなさなどといった思春期独特の考え方や、自己愛的な構えがあることが多い。
※本人自らの置かれた状況を客観的に捉えるだけの余裕がなく、したがって治療を拒否することがほとんどである
※長期にわたる事例でも慢性化による症状の安定化が起こりにくく、常に新たな傷口が開いていくように、葛藤が葛藤を生む状態が続く
※本人の精神的な成長を促すような治療態度と、家族を含む環境の調整によって治療が進むことが多い
著者は、10年間で、200例ぐらいの事例を扱ったということで、事例に基づく説明と治療例を上げている。家族が協力し合いながら、精神科医の指導に従えば、立ち直れる。
著者 斎藤 環
1961年 岩手県生まれ
1990年 筑波大学医学専門群(環境生態学)卒業
医学博士
専門、思春期・青年期の精神病理、病跡学
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外にでることに強い恐怖があれば、こわい。家からでたくない、でれない、となるのは、それは守りであり、弱さという表現とは違う次元の話しだと思う。
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[ 内容 ]
三十歳近くなっても、仕事に就かず、外出もせず、時に何年も自分の部屋に閉じこもったまま過ごす青年たち。
今、このような「ひきこもり」状態の青少年が増えている。
「周りが甘やかさず、厳しく接するべき」といったお説教や正論では、深い葛藤を抱えた彼らの問題を、けっして解決することはできない。
本書では「ひきこもり」を単なる「個人の病理」でなく、家族・社会から成る「システムの病理」として捉える視点から、その正しい理解と対処の方法を解説する。
[ 目次 ]
第1部 いま何が起こっているのか―理論編(「社会的ひきこもり」とは 社会的ひきこもりの症状と経過 さまざまな精神疾患に伴う「ひきこもり」 社会的ひきこもりは病気か ほか)
第2部 「社会的ひきこもり」とどう向き合うか―実践編(正論・お説教・議論の克服 家族の基本的な心構え 治療の全体的な流れ 日常の生活の中で ほか)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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スクールカウンセラーをしている方に紹介していただいた本ですが、私には正直物足りない本であった。引きこもりの例が多く載せてあり、「個人⇒家族⇒社会」間のコミュニケーションをしなければいけないということはよくわかった。
現実の社会は、小、中、高校あわせて17万人以上いるとされる不登校(引きこもり)問題がある、それにプラスして大人のひきこもりも含めればもっと沢山いるはずだ。それを個人個人にどうやって問題を解決していく方向に持っていくかが一番の問題だと思うのだが、それを、私はこの本では納得できる部分を見出すことができなかった。
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今、現在でも充分にありえるような、事例や母子関係の事も丁寧に書かれています。
そして、傷つけあう親子の描写が伺えるだろうこのテーマ
そんな仲、守ろうとする気持ち、親という味方すら介入が時に不可になるという根の深さもよく描かれていると思います。
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時代の流れは、本書がかかれた時から少しずつ変わってきているのかもしれないが、「一番不安なのは本人」ということを再認識した。