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子午線の祀り・沖縄 他一篇 (岩波文庫 木下順二戯曲選)
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収録作品一覧
子午線の祀り | 5-166 | |
---|---|---|
竜が見える時 | 167-194 | |
沖縄 | 195-312 |
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紙の本
目で読むだけではおしい作品。声にする言葉の美しさ、力強さ、素晴らしさ。
2006/11/30 17:35
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「子午線の祀り」は平家物語を題材に、壇ノ浦の戦いの知盛を視点の中心にして時の流れの中の人間・運命といった題材を描いた朗読劇である。作者は「夕鶴」(本書では「龍の見える時」)など民話を題材としたもの、「沖縄」など戦争を扱ったものなど、多くの後世に残る作品を書かれたが、その中で「子午線の祀り」は言葉、声の力・美しさを伝えてくれる、私の最も好きな作品の一つである。
演技で動かすというよりは台詞・朗読で動いていくのが朗読劇であるが、この作品では「平家物語」の文章を使い、時には役者が独りで、時には数人で語る。例えば壇ノ浦で与一が「よっ引き固めてひょうと放つ」と独り語るところがあれば、数人の源氏の兵士が「差し詰め引き詰めさんざんに射ければ」と語るところもある。どこかギリシャ悲劇のコロスの語りにも通じる、声、言葉の力・美しさが強く伝わってくる格調の高い作品である。
一日の中、時間が流れ、潮の流れが変わり、源氏の、平家の運命が変わっていく。それを題名の「子午線の祀り」という言葉で現わした作者の、人生や人の運命に対する深い洞察。
初演は1979年。この文庫版は、1999年の新国立劇場の上演にあわせて出版された。あとがきは作者の製作後記といった形で、製作や上演の経緯が初演から書かれている。著者は戯曲以外にもエッセーなどの著作を多く残しておられるが、このあとがきも味わいが深い。1999年の上演について、「これが上演の第二期の始まりになるかならないか、は終わって見なければ分らない」と最後に書かれているが、ぜひまた舞台にあげてほしいものである。この作品の言葉の力・美しさはやはり「目で読む」だけではおしい。
併録されている「龍が見える時」は民話である。朗読用の形で書かれた作品なので、読むとしてもどんな風に声に出したらよいか、を考えながら読みたい。
木下順二さんは10月30日にお亡くなりになられた。追悼の意をこめ、1999年のステージ、観客席でこころなしか緊張したお顔をしていらした姿を思い出しながらこの作品を読み返す。時の流れ、人の運命を考えずにはいられない。