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商品説明
【日本推理作家協会賞(第53回)】【大薮春彦賞(第2回)】【日本冒険小説協会大賞(第18回)】自らの掟に従い、15歳で父親を手にかけた少年。祖国に絶望し反逆の牙をむく北朝鮮工作員…。男たちの底深い情念が最新のシステム護衛艦を暴走させ、一億二千万の民を擁する国家がなす術もなく立ちつくす。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
福井 晴敏
- 略歴
- 〈福井晴敏〉1968年東京都生まれ。私立千葉商科大学中退。現在、警備会社に勤務。「トゥエルブY.O.」で第44回江戸川乱歩賞を受賞。
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紙の本
出会えてよかった本
2001/12/16 16:06
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うつほ - この投稿者のレビュー一覧を見る
如月行(こう)は海に向かって手を振った。
弾薬庫の誘爆が直径500メートルに及ぶ基地を瓦礫の山にした「辺野古ディストラクション」のために、実現の可能性の少なかった戦域ミサイル防衛構想(TMD)が再燃し、海上自衛隊は全護衛艦のイージス化を計画。その一番艦としてミニ・イージス・システムを搭載した<いそかぜ>の艦長には宮津が選ばれた。
演習を進めながら瀬戸内海から太平洋へと進む<いそかぜ>に僚艦<うらかぜ>。<うらかぜ>との模擬戦に備えて別行動をとった<いそかぜ>だったが、飛行機墜落事故の救出に向かいだした頃から、船員の中に奇妙な行動が目に付くようになり……。
泣けました! 感動した! 途中からのあの急迫。普通の本ならクライマックスに入っているであろうくらいの長さの時点で、急転、急転。そして敵と味方が不明なまま事態は進行していき、緊迫の中でギリギリの戦いを強いられる男達。奪われた<ネスト>めぐるやり取りが、いつしかアレを盾にしたにらみ合いになり、国を統制する首相や大臣達は国家の立場(自分達の立場)と国民の命と国際的均衡を秤にかけつつ翻弄される。その周りで戦士達は屍を撒き散らしているというにもかかわらず。
とにかく仙石恒史(ひさし)先任伍長がかっこいい! そして戦う男達もかっこいい。<うらかぜ>艦長阿久津とか、宗像一等空尉とか、ダイスの隊員宮下とか真壁とか、渥美とか、そして冷や汗かきながらも頑張った内閣情報調査室長瀬戸和馬52歳とか。それから行の一途なまでの物悲しさ。
戦争反対、とにかく武器は持たないという考えを持っているが、だからと言ってこの話に反感を持つことなどなかった。頭ごなしに反対を唱えた生ぬるい反戦論より、よほど真に迫る。
しかしこの小説の真髄はそれではなく、極限を提示した後に見せる、人間という存在のむなしさ、清々しさなのだ。月に繭〜でもそうだったが、ラストの浄化しきった感情の凪ぎに辿り付いた時のこの胸に迫るものは。出来るものなら★6つくらい付けたい。
紙の本
静かな感動が胸を打つ。
2001/09/28 00:45
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みやぎあや - この投稿者のレビュー一覧を見る
何十年も自衛隊に勤めてきた叩き上げの自衛官。謎めいた過去を持つ若い工作員。息子を国に殺され復讐を誓った艦長。北朝鮮の”革命”を掲げ日本から恐ろしい兵器を盗み出した男。それぞれの人間の思惑が交錯し、二転三転する展開に引きこまれ、気がつけば持つのが重いような厚いハードカバーの本から目が離せなくなっている。
単純にことの決着がどうつけられるか、というだけの面白さではなく、この本は日本人の国防意識、何を正義と位置づけるか——多数を助けるために少数を犠牲にすることは認められるのか——など、様々な問題を投げつけてくる。
東京23区に住む都民の命よりも自分の立場を守ることを最優先に考える上層部のことなかれ主義と、守るもののために現場で戦い続ける如月や仙石。彼らのあぶなっかしい連携によって事態は何とか収束したわけだが、両者をギリギリの線で繋ぎとめたのは人間の中の良心であり、後に残ったのは普段はいがみ合い足を引っ張り合っていても有事の際には一つの国民として団結することができる、という希望だった。
紙の本
仕事も、家庭も忘れて読みふけりたい・・
2000/08/11 17:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松山真之助 - この投稿者のレビュー一覧を見る
■ <ワン・チョット>
「イージス。ギリシア神話に登場する、どんな攻撃も跳ね返す楯。しかし現状では、イージス艦をはじめとした自衛隊装備は、防御する国家を失ってしまっている。亡国の楯だ。」
■ <引き続き>
恐ろしい本だ!!。仕事も、家庭も忘れて読みふけりたい・・そんな衝動を押えるのに苦労するからだ。654頁もの大部な小説でありながら、時間を忘れてのめりこんでしまう。僕は、会社の帰り道、薄明かるい街灯の下でついページをめくりたくなる魔力になす術もない状態だった。「トゥエルブY.O.」で江戸川乱歩賞を受賞した気鋭の作家が投げる魔弾の作品だ。
それは、北朝鮮の政治不安、日米の防衛戦略の駆け引き、沖縄基地をめぐる不可解な事件、自衛隊とダイス(防衛庁情局)・・・・数奇な男の運命など、恐ろしくからみあった糸と糸で紡ぎ出されたサスペンス小説だ。できあがった枠組みの中で、本質を見る事をひたすら避け、与えられた環境を守る事しかしてこなかったこの国の暗部を鋭利な刃物でえぐりだしたような恐ろしさが漂う。
自分の力ではどうしようもない不条理な運命に翻弄された男、如月行(21歳)、実直で任務に忠実な海上自衛隊ミサイル護衛艦《いそかぜ》の専任伍長、仙石恒史(48歳)、そしてその艦長、宮津弘隆(49歳)、北朝鮮工作員のホ・ヨンファ(40歳前後)・・・などその関係が複雑に入れ替わる構成には読み手の気を一瞬たりとも緩めさせない。
彼らが対峙したものは何であったのだろう。かれらが極限状態の危機の中で手放さなかったものは何であったのだろう。
縦横にはられた伏線に触れるたび、おおと驚きの声を上げたくなる本書は、いったいどんな作家の手により紡ぎ出されたのだろうかと驚愕と畏敬の念を覚える。
サスペンス小説がもつスリリングな展開の面白さだけでなく、国際情勢の複雑なバランス、この国のもつ脆弱さなどリアルな世界の盲点を鋭くついている点が、万雷の賞賛に値する。さらに人物の心の内をえぐるように描写するそのタッチはこの世のものとは思えないほどの重厚な迫力がある。
これは、本年最高のサスペンス小説だ。一度読み始めると最後まで読み続けたいというあがないきれない誘惑に駆られる。読むなら、覚悟を決めて読まれたい。